妻の目

こうして僕は毎週末の家族サービスを大切にしている。



車内はいつも妻と子供の笑い声に包まれている。





そんな2人をバックミラーで確認した僕は背筋がゾッとした。

後部座席で笑っているはずの妻が物凄く怖い目をしてミラーを睨み付けているのだ。



怖くなった僕は慌てて目線を逸らし、赤信号でおそるおそる後ろを振り返った。



「どうしたの?」


と妻は笑顔で僕に問いかける。

 


「い、いや、なんでもないんだ」


きっとさっきのは見間違えだ。運転で目が疲れていただけだ。



と自分に言い聞かせて運転を再開した。



しかしミラーが気になる。



視線を感じる。




でも妻は子供と楽しそうに歌っている。




でも気になる。




僕はまたそっとミラーを確認した。






妻は先ほど同じようにミラーを睨み付けている。




「ひぃっ!!!!」





思わず声をあげてしまった僕に妻が



「一体どうしたの?大丈夫?」


と優しく声をかける。





「な、なんでもない」



としか僕は答えられなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る