ホスピタルパーティー

山岡咲美

第1話「ちぐはぐパーティー」

 この物語は生を全うする人間の物語だ。



砂漠の街、いりくんだ地形が混乱に拍車かける。


「今どこだ王子?」

ノイズと共に荒れた無線の声がクリップイヤホンから聞こえてくる。


「ごめんはく!広場の真ん中!スナイパーに撃たれまくってる!!」

無線の声には近距離の銃撃音と石の破片が飛び散る音がする。


「王子くんウチ、今助けに行くから!!」

少し間の抜けた女の子の声が無線に混じる、京風のイントネーションだ。


「王子!ゴスロリをそっちに行かせるな!」

「ゴスロリ!お前はオレと後衛だ!!」

「チビ子なにやってる!」

軽機関銃を持った三白眼の少年が叫ぶ。


「ロリちゃん、こっち来ちゃダメだよ」

アサルトライフルを膝の上に落とし少年は手の平を待てとばかり開く。


「何?王子君?ウチ来たよ!!」

6連装グレネードを手に持ったゴスロリファッションの上にヘルメットと防弾ベストのイカれた女の子が広場の真ん中、涸れた噴水に駆け込んだ。


「だからロリちゃん来ちゃダメって……」



「?!」「!!」



衝撃が2人の体を吹き飛ばす。


「くっそ!!」

三白眼はデカイ銃を抱えへ、いりくんだ路地へと身を隠す。


「どちた、さんぱくがん?でっかいおとしたでち!」

慌てた声で話す小さな女の子の声だ。


「バカップルが死んだ!迫撃砲だ!」

酷い言われようだ。


「お前何してた?!」

当然の疑問。


「ねてたでち!」

即答。


「…… バアカ!!」

語彙力の欠如。


「あたちらどうするでち?」

どこかに隠れ様子をうかがって居る様な籠った声だ。


「いつものだ!いつものをやる!!」


「えーだいじょぶでちか?」


「知るか!オレバカなんだよ!」


「しゃないでち、いくでち」


「いいかチビ子、スナイパーは時計塔の上だ暗い所から出るなら気をつけろ」


「だいじょぶ、らいと、めにあててるでち」


「……」「……」


「行くぞ!3、2、1、」「でち」

少年のカウントと共に小さな影が広場に乗り捨てられた車のトランクから飛び出す!


スナイパーの弾を幼稚園児程の少女(幼女)が二本のナイフで器用に弾き、徐々に時計塔との距離を詰める…。


「食らえっ!」

すぐさま軽機関銃の持った少年が瓦礫きの上にその銃を乗せ、その瓦礫に身を隠しながらスナイパーに向かい弾をばらまいた。


スナイパーは頭を引っ込める。


「いーまーでーーちーーーー!!」

幼女はここぞとばかり脱兎のご時計塔へと駆け寄った、扉の目の前だ。


「やった!その位置なら狙撃出来ない!」

少年がそう思った瞬間!


「ちがでてるち…」


幼女は後頭部を撃たれ崩れ落ちる、弾は頭を貫通していた。


「もう1人スナイパーが居た??」


「???!!」


「あれ?心臓が…止まって???」


「オレ撃たれたのか??」



You Dead



「あなたは死んだっじゃねーー!!!!」


三白眼と呼ばれた少年は病院内の廊下をそそくさと走る、途中男の子部屋の一室が開き王子と呼ばれた少年が止めに入るが車椅子では三白眼の少年の速力に追いつかない、途中リビングコーナを抜けナースステーションで減速してダイニングコーナを曲がりまた走る。


「ゴスロリーーーてめーー!!」


「やめてーあまロリの刑はイヤーーー!」


VRゴーグルの二つ三つ編みゴスロリ少女が三白眼の少年に怯えきって居た、よく見ると少年は綺麗な坊っちゃん刈りだ。


「さんぱくがんー!」

ちっちゃい二つ結びの幼女が三白眼に抱きつく。


ここは小児科病棟、入院患者のあいだでVRゲームが流行っていた。


やわらかな金髪の少年が車椅子から身を乗り出し部屋を覗き込む、ひきつった笑い顔だが何か楽しそうだ。


この病院はeスポーツチーム、ホスピタルパーティーのホームである。

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