83 結論


 韓国大統領官邸……


 阿保総理の会見と、半荘の配信を見た側近は焦った声を出す。


『こ、このままでは、我が国が日本に戦争を仕掛けた事となりますよ! 直ちにミサイルを自爆させましょう!!』


 そう。阿保総理の会見の終わり間際、ミサイルは発射された。

 島に数十発のミサイルが着弾するまで、そう時間は残っていない。

 今なら、まだ、自爆スイッチを押せば、海上で止められるのだ。


 側近の声を聞いた門大統領は、大統領の椅子をくるりと回し、向き直る。


『そうだな。今なら間に合う……』


『わかりました!』


『待て!!』


 側近は門大統領の話を最後まで聞かず、スマホに手を掛けるが、止められてしまった。


『い、一刻を争う事態ですよ!!』


『だからだ』


 門大統領は、ニヤリと笑った。


『阿保と忍チューバーの言葉は、発射後に私の耳に届いたんだ。すぐに停止しようとしたが、制御不能。焦った私はどうしたらいい?』


『いまはそんな事を言ってる場合ではないですよ! ミサイルを自爆させて、会見を開かなくては!!』


『それだ!』


 側近に諭される門大統領は、わざとらしく指を差して立ち上がる。


『会見だよ。ミサイルが制御不能になったと大々的に知らしめる』


『しかし!』


『そうすれば、独島は木っ端微塵。当初の予定通り、境界線は真っ二つだ』


 自信満々に語る門大統領に、側近はため息しか出ない。


『さあ、大統領としての責務を果たそうではないか』



 そうして急ピッチで進める会見は、すぐに韓国国内、世界中に映し出される。


『申し訳ありません!』


 門大頭領の第一声は謝罪。

 深々と頭まで下げて、テーブルに額を擦る。


『なんの謝罪かわからないと思われていますね』


 体を起こして冷静に語る門大統領。


『実は、ミサイルが制御不能におちいり、止めようが無いのです。ですので、即刻、「独島」からできるだけ離れてください。お願いします』


 誠心誠意に語る門大統領に、全世界の忍チューバーファンからは嘘つきとののしられる。

 今までの経緯から、真実を語っていないと思われているのだろう。


『重ねて申します。ミサイルは制御不能になりました。現在、専門家が対応しておりますが、独島にミサイルが着弾するまでに間に合わない可能性があります。決して、私は忍チューバーさんを殺したいわけではありません。並びに、日本と戦争をしたいとも考えておりません』


 さらに言い訳を続ける門大統領に、世界中の人々から嘘つきと罵られる。

 今まで忍チューバーを殺そうと、幾度も刃を向けたのだ。

 そんな言葉を信じる者はいない。


 それでも矢面に立ち、謝罪を続ける門大統領に、韓国の一部の者から援護射撃が入る。


 門大統領の支持者だ。


 弱々しく謝罪を続ける門大統領に同情し、一人ではないと励まし続けている。


『私は忍チューバーさんを殺す事も、戦争も望んでいません。ただちに独島を離れてください。お願いします』



 この放送は日本政府に届き、忍チューバーを助けに行くかどうかの話し合いになる。

 しかし答えは早くに出さないといけない。

 ミサイルが迫っているのだから……


 忍チューバーを助けに竹島に近付くと、日本の船が巻き込まれる可能性がある。

 そうなれば、百人以上の死傷者が出る。

 結局は、忍チューバーひとりを助ける事より、多くの自衛官を守るために艦隊を引かせるしかないと結論付ける。

 それに、忍チューバーなら、ミサイルぐらいで死なないと高をくくっている感が強いのも、結論を早めた要因になった。



 くして、忍チューバーに向かうミサイルは止まらず、日本政府が助けにも来ない現状が完成してしまったのであった。

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