80 ひと息の巻き
忍チューバーVS
揚陸艦に乗っていた韓国兵の、3分の2もが戦闘不能となり、忍チューバー大勝利で幕を下ろした。
揚陸艦が猛スピードで韓国本土に向かう中、半荘は船尾から飛び降り、ダッシュで海を走る。
ほどなくして竹島の港に辿り着いた半荘は、息を切らして大の字に倒れた。
「ゼーゼー……しんど~~~!!」
苦しそうに息をする半荘に、視聴者は心配する声をあげていたが、心配する者は他にも居た。
スマホの着信音が鳴り、半荘はゴソゴソと胸元を漁って通話にする。
「大丈夫か!?」
電話の相手はもちろん東郷。
第一声は心配する言葉であったが、用事はそれだけではないだろう。
「俺が疲れて動けないかの確認か? もう一度言うが、攻めて来たら船を沈めるからな」
「なわけないだろう。それなら戦っている内に、とっくに占拠してる」
「じゃあ……」
「要求は通った」
東郷の声に、半荘はガバッと体を起こす。
「お~! 今回は嫌に早かったな」
「まぁ条件も、元々日本が韓国に要求していた事だしな。これで決着がつくだろう」
「そっか~」
「もう、上陸していいか?」
「う~ん……もう少し待ってくれるか? 嫌な予感がするんだ」
「嫌な予感……まぁお前の事だから当たるんだろうな。さっきも、わざと私達を近付かせないようにしたんだろ?」
「さあね~? さてと、もうひと働きしますか!」
惚けながら立ち上がる半荘は、気合いを入れ直す。
「……絶対に死ぬなよ」
「誰に言ってるんだ。拙者は忍チューバー服部半荘だ! ニンニン」
それだけ言うと、東郷から笑い声があがり、通話は半荘から切る。
そして、Vチューブのライブ映像も、しばらく休憩と言って切ってしまった。
そうして基地に戻ると、冷蔵庫を漁って水分補給。
ゴクゴク飲みながら地下へ降り、シェルターの前に立つ。
シェルターの扉は少し開いていたのでため息が出たが、基地自体に損傷は無かったので、ジヨンの行動を
半荘は、念のため決められたノックをしてから、シェルターの扉を開いた。
「お~い。寝てるのか~?」
反応を返さないジヨンに声を掛けると、奥からゴソゴソと音が聞こえ、ジヨンが慌てて寄って来た。
「おかえり……て、私が言うのも変ね」
「またか。疲れて戻って来たんだから、普通に出迎えてくれよ~」
前回も同じような事を言っていたので半荘は愚痴るが、ジヨンは笑いながら言い訳をする。
「あはは。だって、Vチューブで見させてもらってたから、無事だとは知ってたんだもん」
「けっこう大変だったんだぜ~」
「見てた見てた。この島に居なかったら、絶対応援してたわ」
それからジヨンの感想を聞きながら基地に戻ると、食堂にておやつにする。
ただし、半荘は動き回ってペコペコだったらしく、一食、丸々平らげていた。
食事が終わると、食休みをとってから半荘は荷物を袋に入れる。
それを見ていたジヨンは、何事かと質問する。
「何してるの?」
「何って……撤収の準備だ」
「撤収……ようやく独島から出て行く気になったのね」
「そんな言い方はやめてくれよな~」
ジヨンの嫌みを聞いた半荘は、寂しそうな声を出した。
「てか、ジヨンが残りたいと言っても、強引に連れて行くからな」
「ふ~ん……そんなに私と離れたくないんだ」
「ちがっ」
「照れちゃって~」
からかうジヨンに、半荘は真面目な顔で応える。
「たぶんこの島は、これから火の海になるぞ」
「え……韓国の攻撃は、あれで終わりじゃないの?」
「だといいんだがな。韓国の武器は、それだけでは無いだろう。それにトップは門大統領だぞ。これまで俺に何をして来たか知ってるだろ? 今度はミサイル撃ち込んで来るかもな。あははは」
笑う半荘に、ジヨンはジト目で見る。
「また笑ってるよ……。いえ、いまは、急いで島から離れなきゃ!」
「まぁそうなんだけど、ゴムボートの準備ができてない」
「じゃあ、早く東郷さんに迎えに来てもらってよ!」
「そうしたいところだけど、時間も無いな」
「まさか……」
ジヨンの不穏な考えは正解。
半荘の耳には、飛翔物が飛ぶジェット音が聞こえているのであった。
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