75 拍手喝采の巻き


 複数の砲撃を受けて、水しぶきと土煙が立ち上がる中、基地とは離れた隣の島の頂上からその光景を見ていた半荘は、Ⅴチューブに声を乗せる。


「見た? ヤル気満々だぜ? 拙者も死にたくないから報復するな。韓国艦隊のひと~~~!!」


 大きな声で喋る半荘は、沈める船を指定してからナイフを投げる。

 当然、そんな声を気にもかけない韓国艦隊は、半荘に照準を合わせて艦砲を撃ちまくる。


 半荘の反撃で二隻沈むが、手数で勝る韓国艦隊に、一時避難を余儀なくされる。


 半荘は島の反対に移動し、岩山を盾にして爆撃をやり過ごす。

 その岩山は多くの砲撃を受けて、岩肌にクレーターを作り出される事となった。


「あ~。うるさい! 現在、大砲を打ち込まれていま~す。てか、めちゃくちゃするな~」


 Ⅴチューブでは現在ライブ配信中なので、場面の変わらない映像では申し訳ないと思い、半荘は実況を交えつつ、戦闘を繰り広げる。


「では、次の二隻、沈めま~す!!」


 警告と共に半荘は岩山の右側から出ると、艦砲の玉を避けながらナイフを投げては走り回る。

 その光景はⅤチューブに乗り、世界の視聴者は大迫力の砲撃シーンに沸き上がった。


 それからも警告と反撃を繰り返すと、艦砲の音は少なくなり、ついには止まる事となった。

 半荘は不思議に思って島の頂上から韓国艦隊の実況をする。


「えっと現在は……約半数は減ったかな? 前線も下がっているけど……あちゃ。ヘリが飛んで来た。ヘリは苦手なんだよね~」


 ガッカリした声の半荘に、視聴者から励ましの声があがるが、半荘は見ていないので実況を続け、苦手の理由を告げる。


「落としたら、絶対死人が出るだろ? 死人は出したくないんだよね~」


 半荘の苦手な理由に視聴者は納得して、軍用ヘリを引き返すようにと、韓国大統領府を一斉に攻撃する。

 それでも強行手段の韓国艦隊は、20機以上もの軍用ヘリを、半荘が立つ島へと向かわせる。


「来てしまったものは仕方がない……死んでもしらないからな!!」


 続々と基地に向かう軍用ヘリを前に、半荘は気合いを入れ直してナイフを投げる。

 その直後、ヘリからはミサイルが複数放たれ、着弾する事となった。


 当然半荘はすでにそこには居らず、島の端に立って、ナイフを投げていた。

 そこに軍用ヘリから機関銃掃射。

 「パラパラ」と空から音が鳴り、何百発も岩肌に着弾する中、半荘は岩山を回り込むように走る。

 軍用ヘリも半荘を追い、さらには回り込んで、半荘を待ち伏せする軍用ヘリも居る。

 しかし、半荘は一向に出て来ない。


 半荘が進路を変えたからだ


 回り込む途中で直角に曲がり、岩山を駆け上がったので、待ち伏せは成功するわけがない。

 仲間の軍用ヘリと連絡を取り、半荘の位置を確認したら急行するが、そこは大渋滞。

 数機の軍用ヘリが機関銃掃射をしていたので、順番待ちが発生していた。


 そんな機関銃掃射の雨霰あめあられの中を、半荘は動き続けているのだ。

 その姿に、軍用ヘリの操縦者も機関銃を放っている者も、こう思ったらしい。


『『『『『化け物……』』』』』


 半荘の行動に恐れをなした軍用ヘリに乗る者は、無茶苦茶な撃ち方をして弾丸を減らす。

 玉が無くなれば次の軍用ヘリが攻撃に加わり、また無くなれば次の軍用ヘリが攻撃に加わる。


 そんな中、韓国艦隊から帰還の命令が来た。


『え? 戻るのでありますか??』


『そうだ! 急げ!!』


『何があったのでありますか??』


『独島級揚陸艦ようりくかんがやられた! 他に着陸できる船も、避難した軍人が多数乗り込んだから着陸できない。いま戻らないと、ウルルン島まで燃料が持たないぞ!!』


 驚く事に、半荘は機関銃掃射を避けながら、ヘリが離着陸可能な船を視認し、ナイフを投げて沈めていたのだ。


 ただし、半荘からすれば簡単な作業。

 分身を残して弾丸が放たれていない場所に移動し、ナイフを投げる。

 残像が消えないように何度も往復し、ナイフを投げ続ける。


 こうして、軍用ヘリを一機も落とさずに撃退した半荘に向けて、全世界の人々から拍手喝采が起こるのであった。

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