76 日本艦隊前進の巻き
「お! ヘリが帰って行った」
軍用ヘリが、韓国に向けてすごすごと逃げ帰る姿を、岩山の頂上から確認した半荘はスマホに目をやる。
「サンキュー、サンキュー、ありがとう」
ネットの称賛の声に、半荘は感謝の言葉を掛けながら振り返る。
「ゲッ!?」
振り返った瞬間、半荘は変な声を出した。
日本艦隊が前線を上げていたからだ。
何故、そうなったかと言うと、半荘が韓国船を沈めまくったせいで、現在、日本艦隊のほうが、船の数が上回ったからだ。
さらには、弾丸やヘリ、攻撃に際する兵器の疲弊も加味して、これなら勝てると判断した日本政府からの要望もあり、日本艦隊は竹島奪還に乗り出したのだ。
この作戦は、半荘が日本国民だから成功する作戦なのだが……
「東郷~~~!! それ以上船を進めると沈めるぞ~~~!!」
いきなり半荘の怒りの声が、Ⅴチューブに乗った。
「この島は忍の国だ~~~!!」
待ちに待った救援なのに、半荘は拒否してしまうので、世界中の人々が首を傾げてしまう。
もちろん、日本艦隊も言っている意味がわからないので、そのまま前進している。
「止まれって言ってるだろ!!」
半荘はそれだけ言って、ナイフを投げた。
ナイフは船の後部、甲板を貫いただけで、船の損害は少ない。
だが、船の内部には大きな音が鳴り響き、半荘が攻撃したと伝わる事となった。
「いまのは警告だ! それ以上、近付くな!!」
半荘の本気の反撃に、ひとまず日本艦隊の前進は止まったが、スマホの着信音がけたたましく鳴り響く。
半荘は撮影をしたまま通話をタップし、スマホを遠くに持って行く。
「貴様は何をやっているんだ!!」
船を壊された東郷は激おこ。
スマホが繋がった瞬間、怒鳴り声が響いた。
「それはこっちのセリフだ! 俺のケンカにしゃしゃり出るな!!」
半荘も負けじと怒鳴り返す。
「はあ? いまが竹島を取り返す絶好のチャンスだろ!!」
「ここはもう竹島じゃない! 忍びの国だ!!」
「お前は何を言っているんだ。日本政府が認めるわけがないだろう」
半荘の怒声を受けて、ややテンションの下がった東郷は、諭すように喋る。
「韓国に奪われた時は何もしなかったくせに、こんな時だけは強気に出るんだな」
「いや、いまは事情が違うだろ?」
「違うくない。俺が韓国から奪って、忍びの国としたんだ。領有権は俺にある。韓国がやったようにな」
「だからお前は何を言っているんだ!」
半荘の言い分に、わけのわからない東郷は、再び声が大きくなってしまった。
「ここは俺の国。欲しかったら、買い取ってくれ」
「はあ!?」
「日本政府にそう伝えろ」
「ちょ、ちょっと待て。まさかお前が竹島を取り戻したのは、金のためか?」
焦る東郷に、半荘は冷静に語り掛ける。
「まぁこれだけ苦労したんだから、金は欲しいな。でも、条件を呑んでくれるのなら、金はいらない。その条件以外では売らないからな」
「その条件とは……」
「俺の条件はこうだ……」
半荘は静かに語るが、その条件はⅤチューブに乗って、全世界に拡散されたのであった。
「そ、そんな事は、俺の領分では……」
「わかっている。日本政府に確認を取ってくれ。あまり遅いと、韓国に同じ条件で竹島を引き渡すからな。制限時間は30分ってとこにしておこうか」
「待て! 短すぎる!!」
「じゃあ急げよ」
半荘はそれだけ言うと、通話を切ってしまった。
東郷は、話の内容といきなり切られた事で数秒固まるが、そんな暇はない。
すぐに日本政府に連絡を取るのであった。
スマホを手に持ったまま半荘は、韓国艦隊が構える方向に振り返る。
「やっぱり来たか……」
半荘の見据える先には、猛スピードで竹島に突っ込む、一隻の
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