陸 嘘
33 休息の巻き
ヘリから飛び降りた
「お、ちゃんと帰ったようだな。爆弾なんて嘘なのに……」
半荘は、軍用ヘリの下に爆弾なんて取り付けていない。
いや、軍用ヘリが帰って調べた時のために、煙玉だけは取り付けた。
もちろん時限発火も遠隔操作もできず、取り外し方を失敗すれば、煙が出るだけのいたずらだ。
たんにほのめかして、脅しの道具に使った事と、帰還後、爆発物除去の時間稼ぎをしたに過ぎない。
「ふぁ~……寝るか~」
軍用ヘリを見送った半荘は、大きなあくびをしながら基地の中へと入るのであった。
「に、忍チューバ―!?」
基地の中へ入ると、ジヨンに大きな声で出迎えられた。
「ただいま~。ふぁ~」
驚くジヨンとは対照に、半荘は
「あなたが一人で帰って来たって事は……」
「ああ。特殊部隊だったか? 帰ったぞ」
「うそ……」
ジヨンの落胆する顔を見た半荘は、ハッとしてジヨンに謝る。
「ごめんなさい! すっかりジヨンの事を忘れていた」
「何を謝っているのよ?」
「さっきのヘリに乗せてもらったら、韓国に帰れたじゃないか」
「え……墜落させたんじゃないの?」
「そんなわけないだろ」
ジヨンは、大きな爆発音と銃声が響き渡っていたので勘違いしているようだ。
その勘違いも大きく、全員殺していると思っていたので、半荘は証拠の動画を提出する。
半荘の忍び装束、額当てには小型のカメラが仕込んである。
カメラの性能は高性能なのだが、半荘の素早い動きに対応できず、映像はブレブレではあるが、スマホに映像を飛ばせる優れ物だ。
その映像には、ヘリの中での戦闘や、隊長のやり取りはバッチリ写っていたので、誰も殺していない証拠にはなったようだ。
「な? 怪我はさせたけど、向こうは殺そうとして来たんだから、正当防衛だ」
「確かにそうだけど……」
正当防衛には納得したようだが、そもそも韓国からしたら犯罪者なので、撃たれても仕方ないと思うジヨン。
それと同時に、話を聞かずに殺そうとした隊長の行動にも驚いているようだ。
「あ、そうだ。ジヨンは通信室の立ち入りを禁止する!」
「え?」
「だって、韓国軍と連絡とるだろ? 俺に迷惑が掛かるから禁止だ。それと拳銃も没収な。まぁ全部燃やしたから、もう無いんだけどな」
「……わかったわよ」
「それじゃあ、夜も遅くなったし、俺は寝るよ。ふぁ~」
あくびをしながら大部屋に向かう半荘を見送ったジヨンは、通信室に向かい、ドアノブに手を伸ばす。
「開いたし……せめて鍵ぐらい掛けなさいよ」
ジヨンは小さくツッコむが、中へは入らず、個室にて眠りに就くのであった。
翌朝……
半荘は目を覚ますと、食堂にて朝食を食べ始める。
やる事もないので、スマホに入っている動画を見ながら食事をとり、食べ終わった頃にジヨンがやって来た。
「おはよう」
「ああ。おはよう」
ジヨンに声を掛けられて、振り返って挨拶をした半荘は立ち上がる。
「昨日は遅かったのに、早いのね」
「いつも起きてる時間だったから、自然と目が覚めてしまったんだ。いま、朝食を準備するよ」
「ありがとう。でも、それぐらい自分でもできるわ」
「そっか。じゃあ、キッチンに案内するな」
半荘は食器を手に持つと、ジヨンを連れてキッチンに移動する。
そこで簡単な説明をして、最後に重要な説明をする。
「拳銃は無くなったから、その辺の包丁を持っておくといいよ」
「……あなたに拳銃すら意味をなさないのに、持っている必要はあるの?」
「えっと……なんとなく安心感みたいな?」
「はぁ……もういいわよ。でも、シャワーを
若干呆れた顔をしたジヨンは携帯食を手に取り、調理を開始する。
それを見た半荘は、しばらく通信室にこもると言って、キッチンをあとにするのであった。
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