31 忍チューバーVS特殊部隊隊長


 パーン!


 軍用ヘリの中で、特殊部隊の隊長は、対峙した半荘の胸に目掛けて引き金を引いた。

 その弾丸は、無情にも半荘の胸を貫通した。


「まだ話をしてる途中だろ?」


「なっ……」


 隊長の目には、確実に胸を貫いたように見えていた。

 それでなくてもこの至近距離。

 1メートル程しか離れていないので、外れるわけがないと思っていた。


 なのに半荘は、飄々ひょうひょうと口を開いたので、隊長は何かの間違いだと声を大きくする。


「マグレが通じると思うなよ!」


「だから話を聞けよ!」


 それから連射で銃弾が放たれるが、全て半荘の体を貫いて空へ消えて行った。

 半荘は玉切れを見届けると、凄い速度で自動小銃をを奪い取り、開いているドアから投げ捨てた。


「な、何故、生きている……」


 呆気に取られている隊長に、半荘はわかりやすく説明してあげる。


「さっき俺の事を忍チューバーと呼んだだろ? じゃあ、動画を見た事がないか?」


「一通りは見たと思うが……」


「それなら話が早い。ただの残像だ。ニンニン」


 半荘は、機内で反復横飛びをして、二人に分身して印を切って見せた。


「トリック映像じゃなかったのか……」


「あ~。トリックの物も作ったよ。アレはアレで、再生回数が稼げておいしいんだ」


 半荘は、偽トリック映像をアップしたら爆発的に再生回数が増えたので、金になると味を占め、何度か作っていた。

 隊長はそれすら見ていたとは、なかなかの忍チューバーファンなのだろう。


「まぁそれは置いておいて、いきなり殺しに来る事はないだろ?」


 半荘の問いに、ようやく我に返った隊長が反論する。


「お、お前が、我が国をおとしめるテロリストだから当然だ!!」


「まぁ不可抗力でも竹島は奪ったんだから、韓国を貶めているって事は、甘んじて受けるよ。でも、誰も殺していないのに、テロリストって酷くない?」


「誰も殺していない……? お前は独島に居た者を、警備隊だけでは足りず、観光客まで殺しただろう!!」


「はい??」


 隊長の怒りの声に、半荘は意味不明って顔をする。


「えっと……俺は、誰も殺していないんだけど……。いや、まさか、観光船が沈没したとか?」


「お前は何を言っている! 銃で虐殺しておいて!!」


「ちょ、話が見えないんだけど……俺は、銃なんて使えないし、撃った事もない」


「嘘を言うな! さっきも銃声がしていただろ! お前が殺したんだ!!」


「あ! そうだ。あんたの部下? 全員生きたまま、宙吊りになっているから、引き上げるのを手伝ってくれよ」


「……え?」


 半荘が話を変えると、今度は隊長がとぼけた声を出す。


「このままじゃヘリも危険だろ? 話はそのあとにしよう」


「また嘘を……俺がそんな嘘で惑わされると思うな!!」


 突然叫んだ隊長は、腰に差してあった拳銃に手を掛けるが、それより先に、半荘に擦られて二度見する。


「探し物はこれ?」


「くっ……いつの間に……」


 半荘が拳銃を見せ付けてから外へ投げ捨てると、隊長は、次は逆に差していたナイフを取ろうとするが、これも半荘に擦られて投げ捨てたられた。

 隊長は、全ての武器を奪い取られたわけではないが、手榴弾なんてこんな場所では使えないので、体術に切り替える。


 軍で習った体術。

 いわゆる、コンバット拳法だ。


 パンチ、キックと放つが、弾丸すら避けられる半荘に、かすりもしない。

 逆に手加減されたカウンターパンチを何発も喰らって、グロッキー状態。

 息も上がって、立っているのがやっとのようだ。


「ハァハァ……」


「あんた、ジャスティスより強かったよ」


 肩で息をする隊長に、半荘は拍手を送り、鋭い目に変わる。


「最後通告だ」


 隊長は、半荘の冷たい声に、死を覚悟する。

 それでも国に支える者として、何を言われても断る構えだ。


 その緊張感の中、半荘は声を出す。


「隊員を引き上げるの手伝ってくんない?」


「断る! 殺せ!! ……へ?」


「じゃあ仕方ない」


「いま、なんて? ぎゃ~~~!!」


 隊長の思っていた要望と違い、惚けた声を出したのも束の間、半荘の手刀によって、気絶させられる隊長であったとさ。

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