18 緊急閣議 其の二
「はぁ……二人とも、やめるんだ」
子供みたいに喧嘩する環境大臣と経産大臣に、安保総理は呆れて止めに入り、熱くなっていた二人も謝って喧嘩をやめる。
それから先ほど出た案、韓国との対話について話し合う。
「確かに、どのような船を出すにしても、韓国とは話をつけないといけないのだが、現状を思い出してほしい」
現在、日本と韓国は過去最悪の関係となっている。
韓国の徴用工問題から始まり、日本のホワイト国外し。
そうして燃え上がる韓国の日本バッシング。
この様な状態で、対話に持っていけるか……
仮に対話に持っていけたとして、何か無理難題、言い掛かりをつけられるのではないかと、その対応の話になってしまって閣議は長引く。
閣議が長引くと、皆は集中力を切らしてしまい、休憩を取りながら砕けた言葉になっていく。
「てか、忍チューバーって助けないといけないの? 勝手に竹島に行ったんだから、自業自得じゃね? あ、これ、オフレコね」
安保総理は失言をするが、会議場から笑いが起こる。
これが、大臣や官僚の本音なのだろう。
「でも、孫がファンなんだよね~」
この発言から孫のいる者達は、ガラケーの中に入っている写真を見せ合い、孫自慢が始まる。
そんな中、孫のいない大泉は話について行けず、違う話に変えようとする。
「忍チューバーは若者にも人気ですし、助けておけば、忍チューバーのファンの票が自衆党に集まるかもしれません」
「お! 確かに! 日本だけで一千万人だったか……自衆党の党員より遥かに多いぞ。それを取り込めれば……」
「はい! 次の選挙は磐石になるでしょう」
「やっぱり、大泉君は若いだけあって、考えが柔らかいね~」
「恐縮です~」
安保総理に尻尾を振り出した大泉に、面白くないといった顔で見ていた経産大臣は、違う意見を述べる。
「若者なんて、どうせ選挙に行かないでしょう」
「またあなたは……」
このまま喋らせると、また喧嘩になりそうに感じた安保総理は、二人の言葉を遮って、会議の再開を宣言する。
「忍チューバーの件は情報の確認を待ってから対処するとして、先に韓国国内に居る邦人をどうするかを考えよう」
日本と韓国の関係が最悪となってから、旅行をする者は減ったが、少なからず渡航している。
航空チケットが安くなったので飛び付いた者、どうしても外せない仕事で出張に向かった者、現地で働く者。
韓国国内では前法相のスキャンダルで、日本バッシングは多少は落ち着いていたのだが、忍チューバーの件で再燃したと情報は入って来ている。
ちょうどワイドショーの時間だったので、現地の情報を仕入れようとテレビを付けると、そこには日の丸の旗を燃やす映像が映し出されていた。
「またやってるよ……あの国は、飽きないのかね?」
日本が何かすると、毎度行われる光景。
冷ややかな目で笑い、テレビを眺める一同は、デモ隊の暴動を眺め、大統領が夜に重大発表する情報を得る。
その情報を早く手に入れるための指示を出し、安保総理は一度解散を告げる。
そうして夜になって閣議を再開し、部屋に入って来た総理付き秘書にテレビを付けさせて、皆はテレビに釘付けになる。
その映像には、韓国大統領、門大統領が映っており、用紙を見つめて語り出した。
『わが国は、忍チューバーこと服部半荘に、領土を
日本政府より早くに行動に出たのは、韓国政府であった。
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