06 波に揺られての巻き


 ザザ~…… ザザ~……


「はぁ……」


 まぁそんな感じで八千万のクルーザーは沈没。

 ボロ船にて波に揺られ、ため息を吐いているんだが、現在、漂流して二日が経っているんだ。


 助け?

 海上保安庁?


 いまのところ来ていないな。

 沈む間際にSOSを出せていたら来ていたんだろうが、何せ、火に包まれてそんな余裕は無かった。

 持ち出せた物も、緊急袋と仕事道具一式だけだ。


 ボロ船に何か乗っていないかと調べて見たが、5、6人が乗る手漕ぎの船だから、見渡しただけで終わったよ。

 まぁオールが乗っていただけマシだっただろう。


 東に向けて、漕げばいいんだからな。


 ただ、周りに目印が無いから、漕いでも漕いでも、進んでいる気がしない。

 なんなら、流されて行っている気もするから、初日で気力が失せた。

 それならば、島が見えるまで体力温存したほうが賢いのではないかと、チャンスを待っている。


 そうして夜になると、眠るのは危険なのだが、レーダーも無しに真っ暗な海を見ていても意味が無いので、諦めて眠った。


 すると翌朝、ボロ船に水と食料の入った袋が乗っていたんだ。


 俺は天の助けだと思ったね。


 誰かが助けに来てくれたのだと……


 だが、周りを見ても、船ひとつ無い海原。

 俺は夢でも見ているのかと、再度袋を漁って確認してみたら、どれも読めない文字が書かれていた。

 記憶を頼りに思い出すと、ハングル……


 予想になるのだが、韓国人が食料を投げ込んでくれたんだと思う。

 こんなボロ船で寝てるから、俺の事を北朝鮮の漁民、もしくは脱北者なのだと勘違いしたのかもしれない。

 助ける事はマズイと感じたから、せめてもの施しで、食料を恵んでくれたんだと……


 韓国人、めっちゃいい人!


 でも、起こしてくれても……


 いや、疲れ果てて眠ってしまった俺が悪い。

 死んでいると思われたかもしれないしな。


 ひとまず数日の飲み食いは困らなくなったが、また船と出会うのはいつになるかわからない。

 水と食料の確保は必要だ。


 水はペットボトルとビニールがあるから、海水を太陽光で蒸発させて飲み水に変える。

 少量しか取れないが、いざと言う時のために、やっておいて損はないだろう。


 食料は魚をとるしかない。

 魚が海面近くまで来てくれたら、クナイと細いワイヤーを使ってとれるんだが……


 来た!!


 俺はワイヤーを結んだクナイを海面に投げて、すかさず引き上げた。


「おお! 鯛だ! めでたい~~~!!」


 と、現状を悲観しているより、少しは楽しみを覚えたほうが、サバイバルを生き抜く事には必要だろう。

 オヤジギャグも言っておかないと、誰も話し相手がいないから、口数が減ってしまうからな。


 鯛は、多少の料理の心得もあるから、ちょちょいとクナイで三枚におろし、ぶつ切りにすれば、刺身に変身だ。


「うん。いける!」


 小さい頃の食生活もあり、俺はなんでも美味しく食べられるから、塩味の刺身でも大満足だ。


 ただ、暇なのがな~……


 普段は適当なVチューブを見たり、体が鈍らないように町を飛び跳ねていたから、何もやらない時間なんて無かった。

 子供の頃も、訓練したり、農業したり、野草も探したりしていたから忙しかったからな。


 これほど何もしない数日は初めてだ。

 多少は俺の望んだ生活だけど、やる事が無さすぎる。


 せいぜい、防水の袋に入れて生き残ったスマホに、今日の記録を動画として残すぐらいだ。

 バッテリーは携帯用の太陽光発電機があるから、時間が掛かるがなんとかなる。

 ただ、電波が入った時のために、節約しているからゲームもできないんだよな。


 電波があれば、電話して助けに来てもらうのだが、如何せん、日本海沖には届いていない。

 やはり、高くても衛星電話にしておけばと、後悔しているんだ。


 航海を先にしてしまったんだが……


 フフ。泣けてくるな。


「あ~……暇だ~~~」



 こうして、俺の漂流生活は続く……

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