第127話
「ライラさんっ!!しっかりしてくださいっ!」
マコト様が血の気が失せ青白くなってしまっているライラの腕をとって握り締めた。
マコト様の手がライラの血で真っ赤に染まる。
跪いたマコト様の服にもべっとりと血が付着していた。
「今、助けますっ!」
私は持てる限りの魔力を使ってライラに治癒魔法をかける。
ユキ様も私の隣でライラに向かって治癒魔法をかけていた。
ポワッとライラの身体が淡く光りだす。
私たちの治癒魔法がライラの身体を包み込んでいるのだ。
「ライラっ・・・。どうか、目を開けて。」
「ライラ・・・。」
必死の思いでライラに治癒の魔法をかけ続けるが一向にライラの目は開かない。
マコト様がライラの手を握り脈を確認しているが脈も戻らないようだ。
私たち三人に絶望が襲う。
「ライラ・・・。」
「ライラさん・・・。」
「ライラぁ・・・。」
祈るようにライラの名前を呟いた瞬間、強い光の波が私たちを襲った。
『ごめんなさいねぇ。ライラさんは助かりません。だって、心臓が壊れてしまったもの。いくら治癒の魔法でも死んだ人間は生き返らせることはできないわ。』
姿は見えない。
見えないが声だけが聞こえる。
男の人の声にも、女の人の声にも聞こえる不思議な声音。
だけれども、私はそれが誰の声なのかを知っていた。
「女神様・・・。」
そう、ユキ様とマコト様をこちらの世界に呼んだ女神様だ。
『はあー。私としたことが失敗だったわ。レイチェルをエドワードから守ってくれる人間を呼んだはずなのに、マコトとユキと死んだ時間がほぼ同じだったから、あんな奴までこちらに転移させてしまっていただなんて・・・。だからね、こんなに私の力が消耗しているのは。』
そう言って女神様はため息を一つついた。
でも、声音からは反省はしていないように見受けられる。
「私の所為でライラが・・・。」
『んー。レイチェルの所為じゃなくてナーオットの所為ね。あいつも相当歪んだ思考の持ち主だったのねぇ。まさか、レイチェルを異常に愛しているとは・・・。』
なでなでと女神様が私の頭を撫でたような気がする。
姿は見えないけれども、頭を誰かが優しく撫でてくれた気配がした。
『でもね、レイチェル。安心なさい。ライラの魂は貴女の中にあるわ。』
「え?」
「ええっ?」
「え?」
女神様の爆弾発言に私たちの目が点になる。
私の中にライラの魂があるとはいったいどういうことだろうか。
『言ったでしょ?ライラとレイチェルの魂は融合してしまっているって。そういうこと。二つの魂が融合してしまったらちょっとやそっとじゃ分離させることはできないわ。』
「あれ?と・・・いうことは?」
女神様の言葉にいち早く反応したのはマコト様だった。
胡乱げな瞳で光の中心を注視する。
『あら。気づいちゃった?これだから、君のような勘のいいガキは嫌いよ。』
女神様の言葉に棘が混じる。
「いえ、私も薄々感づいていたことですので。混ざり合った二つのものを元に戻すことなんてできるはずがないと。考えてみればわかることです。」
「えっ!?じゃあ、レイチェルとライラの魂が融合しちゃってるってことは、最初っからレイチェルの身体とライラの身体はどちらかしか生きられなかったってこと!?」
「・・・っ。」
マコト様が淡々と告げた内容を理解したのか、ユキ様が声を荒げる。
私はというと、あまりのことに言葉がでなかった。
私がライラの身体に入り込んでしまった瞬間から、ライラか私どちらかの身体しか生きていけないようになってしまっていたとは。
じゃあ、女神様が言っていた私が元の身体に戻るというのは、つまりライラの身体を放棄しろと言っていたということというわけで。
『正解。混ざっちゃったものは仕方ないものね。でもね、レイチェルは出産で瀕死の状態だったのよ。助けるには同じく瀕死の状態だったライラの身体にレイチェルの魂を同化させることしかなかったのよ。』
「ライラも・・・瀕死の状態だったの・・・?」
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