第118話
「事件か・・・。事件らしき事件は王都では起こってはいないなぁ。君たちのお父さんは王都に行った後はどこに行くか連絡がこなかったのかな?」
「ええ。ありませんでした。」
「しばらくは王都を観光すると連絡があったっきりです。」
男性の言うことには王都では事件らしき事件は起こっていないということだった。
「では、王都で変わったことなどありましたか?」
本題は、こっち。
本当に父親を捜しているわけではなく、ナーオット殿下がエドワード殿下を狙う理由が知りたいのだ。
そのためには、王都でいつもと違うことがあったのかどうかということを知りたい。
「変わったこと・・・かぁ。ああ、数か月前くらいからかナーオット殿下がよく街にお忍びで来るようになったなぁ。お父さんの件とは関係はないと思うけれどね。」
男性は何でもないように告げる。
王族がお忍びで街に来るだなんてあまりあり得ないだろうに。
「まあ!ナーオット殿下ですか!王族の方がお忍びで街に来られているなんて珍しいですね。もしかして、私たちも殿下に会えちゃったりしますか?」
「はははっ。運がよければ会えるかもしれないよ。ナーオット殿下は週に2、3回は姿を見るからね。一週間も王都に滞在していればお姿を見ることができるのではないかな。」
どうやらナーオット殿下は頻繁に街にお忍びで来ているらしい。
もし、簡単に会えるのであれば、こっそりナーオット殿下を観察してみるのもいいかもしれない。
さらに男性から情報を収集することにした。
「どこに行ったら会いやすいですか?」
「せっかく王都まで来たのだから殿下に会ってみたいですね。」
「うぅ~ん。どこと言われてもなぁ。いつも街のどの辺に現れるかはランダムだからなんとも・・・。」
「そうですか。」
男性は少し困ったように教えてくれた。
どうやら、ナーオット殿下はいつも同じ場所に現れるわけではないようだ。
「あの・・・。お忍びで来られているってことは、私たちが見てもわからないような恰好ですか?レコンティーニ王国から来たのでナーオット殿下の顔を知らないのです。」
「ああ。お忍びといってもシンプルだけれども上質な服を着ているし、雰囲気がやっぱりどこか他の人とは異なるから会えばわかると思うよ。それに、いつも殿下が現れると殿下の周りには女性が集まりだすからわかりやすいんだよ。」
男性の言葉に笑顔の裏でこっそりとため息をつく。
そんなにバレバレならば、もうそれはお忍びとは言わないのではないだろうか。
なんというか、お忍びで街に降りてきた風を装って自分の存在を周囲にアピールしているような気がする。
「まあ、そうなんですね。それは会うのが楽しみだわ。」
「ええ。そうね。」
私たちは笑顔で頷いて、レストランを後にした。
どうも、これ以上は情報を得られなそうだ。
男性はなぜナーオット殿下がお忍びで街に来ているのかまでは知らないようだった。
ユキ様と一緒にヤックモーン王国の王都を散策する。
散策と言ってもただ散策しているわけではない。
ナーオット殿下の痕跡がないか確認しながら散策をおこなっている。
そして、できればナーオット殿下の動向を知りたい。
そう思って王都を散策していると、
「キャーーーーーっ。ナーオット殿下だわっ!!」
すぐ後ろから女性の黄色い悲鳴が聞こえてきた。
すぐにナーオット殿下に遭遇することができた。
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