第117話

 


それにしても、どうしてライラはこんな場所に倒れていたのだろうか。


「ライラはなんでこの場所にいたのかしら?」


「そうね。気になるわね。外傷はあったの?」


「いいえ。外傷は無いようだったのよね。」


『私もなぜこの場所に倒れていたのかはハッキリと覚えていないのです。そこだけ靄がかかったように記憶が曖昧なんです。』


困惑気味な声が聞こえてきた。


ライラもどうしてあの場所に倒れていたか思い出せないらしい。


暗殺者だったライラのことだから何か危険な任務にでもついていたのかしら。


それで、あの場で倒れていたとか・・・?


空腹で倒れていたというわけではないと思うし。


「そう言えば、その後で血だらけのエドワード様にお会いしたのよね。」


『はい。あの時、治癒の力が使えたことにはビックリとしました。』


まさか、あの場で血だらけのエドワード様にお会いするとは思わなかった。


普通の私だったら血だらけのエドワード様を見て、泣き叫んでいただろう。


でも、ライラの意識に私は同化していた。


だから、血だらけのエドワード様を見ても同様せずに冷静に対処ができた。


そして、ライラだったら使えなかったけど私がライラに同化していたから治癒の魔法も使うことができた。


私とライラが揃っていたからこそ、エドワード様を助けることができたのかもしれない。


 


 


 


王城の中に入った方が色々とナーオット殿下の情報を得やすいと思う。


しかしながら、一度王都でナーオット殿下の情報を探すのもありだろう。


エドワード様を暗殺しようとしたのはどうしてなのかということが、なにかわかるかもしれない。


それに、いきなり入ったこともない王城に忍び込むのもハードルが高いし、まずは王都で情報を集めることにした。


ヤックモーン王国の王都ははズラットーン大帝国の帝都と同じくらい栄えていた。


人々の顔も期待に溢れたような顔をしている。


売っているものもそれなりの物ばかりだ。


ヤックモーン王国も治安はそれなりに良いようだ。


でも、ライラの生い立ちを思うとそれは見せかけなのかもしれない。


きっと、王都の中にもスラム街のようなところはまだまだあるのだろう。


 ひとまず手近なレストランに入ることにした。


「本当は宿屋の食堂とかの方が情報集まるとは思うんだけどねぇ。レイチェルに気品がありすぎて、食堂だと浮くから止めたわ。」


「私のせいで申し訳ありません。」


「ま、ご飯を食べましょう!」

 

私たちは、レストランで食事をすることにした。


ほどよい感じの高級レストランだ。費用は気にしなくていいというユキ様だけど、本当に?


適当に頼んだご飯はどれも美味しいものだった。


「ここを選らんでよかったですね。」


「そうね、美味しかったわね。はあ。それにしてもお父様ったらどこに言ってしまわれたのかしら。」


食事を終えてユキ様と店内で話始める。


突然ユキ様から、お父様の話が出てちょっとだけ驚いた。



でも、すぐにそれがフリだということに気づいてユキ様に話を合わせる。


「お父様ったら、なにか事件にでも巻き込まれてしまったのかしら。」


「レイチェル、縁起でもないこと言わないでちょうだい。でも、急に連絡が途切れたから心配ね。」


「本当に。王都から来た連絡が最後でしたね、あれから数ヵ月。お父様はどこかしら。」


ユキ様と話を続ける。まるで王都で父親が行方不明になったように話を繋げる。


「………君たちの父親は出稼ぎか何かで王都に来たのかい?」


すると、隣のテーブルの品の良い初老の男性が会話に割り込んできた。


これは、情報を得るチャンスの到来ね。


ユキ様と視線を合わせて頷きあう。


「いえ。お父様はヤックモーン王国に旅行に来たんです。時々立ち寄る先々で、連絡をくれていたのですが、王都に着いたという連絡が来たきり連絡がないのです。」


「私たちお父様が心配で王都まで来てしまいましたの。あの、王都で何か事件などはありませんでしたか?」


うるうると目に涙を浮かべながら声をかけてきた男性をユキ様と一緒に見つめる。

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