第102話


「レイチェルどうか起きて・・・。」


想いを口に乗せて呟いて、魔力を少しずつレイチェルに流し込む。


「きゃっ!!」


想いを込めて魔力をレイチェルに注ぎ始めると、触れた手がバチッと何かに勢い良く弾かれた。


鋭い痛みが手に走る。


思わずレイチェルから手を放し、痛みの走った右手を左手で守るようにつかむ。


「ふむ。レイチェル様が拒絶・・・した?」


マコト様が顎に手を当てて、そんなことを言い出す。


レイチェルが拒絶?自分の身体に戻りたくないというの?


「ねぇ、マコト。レイチェルと話せるかしら?」


私たちの様子を黙って見ていたユキ様がマコトに話しかける。


その声には先ほどのような怒りは込められていなかった。


ただ、レイチェルを心配している声のようだ。


「ええ。ライラさんに自白薬を飲ませればたぶんレイチェル様とお話することができますよ?」


「そう、じゃあちょっと試してもらえる?レイチェルと話してみないと何故もとの身体に戻りたくないのかわからないわ。」


「そうですね。ライラさん。ご協力いただけますか?」


マコト様がそう確認してくるが、ここで否とは言えないだろう。


「もちろん。構いません。」


私は二つ返事で頷いた。


マコト様は私が頷いたことを確認すると、懐から親指ほどのサイズの小瓶を取り出した。


まさかして、それが自白薬だろうか。


マコト様はいつも自白薬をそんなところに隠し持っているのだろうか。


「ユキ、紅茶を用意してくれる?」


「わかったわ。」


「あの・・・紅茶がなくてもそのくらいの量ならそのまま飲んでしまいますよ?」


わざわざ自白薬を飲むだけに紅茶を用意してもらうのも悪いと思い提案する。


すると、マコトさんはゆるゆると首を横に振った。


「原液だと濃すぎてしまうんです。薄めて飲むのが正しい使い道なんですよ。」


・・・。どうやら原液では飲んではいけないものだったようである。


私はおとなしくユキ様が紅茶を用意してくれるのを待った。


ユキ様は私が気に入らないのにも関わらず丁寧に紅茶を淹れてくれた。


それに、マコト様が小瓶に入った薬を一滴だけ垂らす。


そうして、マコト様は自白薬が入った紅茶を私の目の前に置いた。


「さあ、用意ができました。どうぞ、お飲みください。」


「・・・ええ。」


紅茶の入ったカップを右手に持つと、そのまま口許に持っていく。


コクッと一口飲むと甘い香りが口の中に広がっていった。

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