第59話

 


私は・・・暗殺者。


レイチェルじゃない。


では、このレイチェルの記憶は何?


「どうしたんですか?」


ガタガタと震える身体を抱きしめていると不審に思ったマコト様が顔を覗き込んできた。


「顔が真っ青ですよ。なにか、思い出しましたか?」


言えない。


思い出した。


私が暗殺者だったこと。暗殺者になった経緯のこと。


そして、今、誰が暗殺のターゲットなのかを。


レイチェルに会わなくては。


まず、会って何故レイチェルの記憶が私の中にあるのかを確かめなければならない。


記憶の中ではレイチェルは子供を産み、そのまま意識を失ったようだ。そして、森を彷徨い私の身体に入った・・・?


レイチェルの意識は私の中にあるのだろうか。


それとも私がレイチェルで、ライラの記憶と精神と同化してしまっているのだろうか。


わからない。


わからないが、まずはレイチェルの本体に会って確認しなければならない。


「レイチェルのところに連れて行ってください。確かめなければいけないことがあるの。」


震える身体を叱咤して、マコト様にお願いする。


マコト様はレイチェルの居場所を知っている。


そして、そこに行く術を知っているはず。


「どこで、それを・・・。なりません。貴女をお連れすることはできません。」


「・・・そう。」


理由も話さずにレイチェルのところに連れて行ってほしいと告げても拒否されるだけだった。


ただ、理由を言っても信じてはもらえないことはわかっている。


それならば・・・自分で行くしかない。


幸い私はいにしえの魔法が使えるらしい。


森からこの皇太子宮まで転移してきたのは私の力だったようだ。


それならば、無意識に転移の魔法を使えたというならば意識的にレイチェルのところまで転移できるのではないだろうか。


転移魔法の使い方はよくわからないが、なんとなく転移できそうな気がした。


連れて行ってくれないのならば、自分で行くのみ。


「一目見てみたかっただけなの。エドワード様がレイチェルと良く口に出していたから。連れて行ってくれないならいいわ。諦めるわ。」


 諦めるなんて嘘。


こっそり、レイチェルの本体に会いに行ってしまおう。


そう心に決めた。


 


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