第57話

私は嘘をついているとして、皇太子宮の一室に軟禁されることになった。

本来では牢に入れられてもおかしくないそうだが、皇太子であるエドワード様が不在のため入れられないそうだ。

嘘をついていて怪しい人物ではあるが、まだ何もしていないし、何かをするという証拠も見つかっていないから泳がされているようだ。


「意外と厚待遇なのね。皇太子宮なのだから、こんなところに怪しい人物を軟禁しちゃダメじゃないの。」


まあ、私がエドワード様になにかするわけではないけれども、この皇太子宮の処置は甘いのではないかと思ってしまう。

軟禁されてはいるけれども、庭に出たいと言えば出してくれるのだ。

皇太子殿下の婚約者であった時と同様にだ。

今思えば、皇太子殿下の婚約者だったのに軟禁まがいに近い待遇がおかしかったのだろうか。

あの時は庭に出ることも許されなかったですし。

今の方が高待遇に思える。

ただ、侍女からの視線は今の方がキツイけれども。


「ねえ、エドワード様はいつ帰ってくるのかしら?」


エドワード様と会わなくなってからすでに3日が経っていた。

エドワード様はどこかに行ったっきりまだ帰ってきていないらしい。

もしかして、またヤックモーン王国にでも行っているのかしら。

先日大怪我を負ったばかりだというのに。

この国の皇帝はエドワード様を物のように思っているのかしら。

ついつい懐疑的に考えてしまう自分がいる。


「私は存じ上げません。」


侍女はいつ尋ねてもそう答えるだけだった。

話相手もいないし、とても退屈な日々を送っている。

以前だったらこんな退屈な日々もマコト様やユキ様のお陰で不安だとは思うことがあっても退屈だとは感じなかったのに。


「そう。どこに行ったのかを教えてくれる気は今でもないのよね?」

 

「申し訳ございません。お教えすることはできかねます。」

 

この会話も何度目だろうか。返ってくる答えはいつも同じ。

いったい私はいつまでここに居ればよいのだろうか。

私の産んだ子がどうなっているかも気になるし。

そう思って不意に気がつく。なぜ、私は今まで我が子のことを忘れていたのだろう、と。

長い間、お腹の中にいた大切な存在であり、慈しむべき我が子なのにも関わらず、私は我が子の存在を今まで気にもとめていなかった。


「では、マコト様を呼んでくださることは可能かしら?」


もしかしたら、私は私ではないのかもしれないということにやっと思い至る。

もしかすると、ゲロゲロ君18号の判定は正しかったのではないかと思った。

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