第56話


大きく目を見開いたマコト様は、しばらく時が止まったように動けずにいた。


「・・・どこで、それを?」


マコト様から掠れた声が漏れた。

でも、今ここで本当のことを言っても信じてはもらえないだろう。


「ひみつ。」


にっこり笑って伝えれば、マコト様はびっくりしたように瞬いた。そして、ブンブンと音がするかと思うくらい首を勢いよく左右に振る。

それから気を取り直したかのように、私のことを真正面から見つめた。


「貴女は私の知り合いに似ています。だから、エドワード様も貴女に気を許しているのかもしれません。ですが、貴女はエドワード様にはふさわしくありません。」


「そう。残念だわ。それで?私はもうここから解放してもらえるのかしら?」


「いいえ。貴女には不振な点がたくさんある。すべて調べ終わるまではここにいていただきます。」


先程の驚きはどこへやら。

マコト様はしごく真面目にそう言ってきた。どうやら私はとても怪しまれているらしい。


「貴女の名前を教えてください。」


「レイよ。」


答えると、ゲロゲロ君18号がピカーッと赤い色を発した。

先程までは反応がなかったのに。


「貴女の名前を教えてください。」


「だからレイよ。」


またしてもゲロゲロ君18号が赤く光る。これはどういうことなのだろうか。

マコト様の視線も強くなる。


「貴女の本当の名前を教えてください。」


マコト様はさらに私に名前を尋ねる。もしかして、この赤い光は嘘をつくと光るのかしら。

でも、レイという名前はあながち嘘でもないのだけれども。


「レイチェルよ。」


私は本名を伝えた。

それでもゲロゲロ君18号は赤い光を発した。


「冗談はよしてください。どこでその名を知ったのですか?」


マコト様の目がさらにするどくなる。

どういうことなの。だって、私はレイチェルなのよ。

レイチェルなのに。

どうして、どうして嘘だということになるの。


「私はレイチェルよ。その魔道具が壊れているのではなくって?」


私はレイチェルなのに。それ以外の何者でもないのに。

どうして、ゲロゲロ君18号は赤く光るの。


「・・・はぁ。埒が明きません。質問を変えます。貴女の出身国はどこですか?」


「ハズラットーン大帝国よ。」


私が答えるとまたしてもゲロゲロ君18号が赤く光った。

どういうこと………?


「出身国まで嘘をつかれるんですね?貴女の出身国はヤックモーン王国ですよね?」


「違うわ。」


そう答えるとまたしてもゲロゲロ君18号が赤く光った。


「ゲロゲロ君18号は嘘をつきません。貴女はヤックモーン王国の出身です。隠してもゲロゲロ君18号は見破りますよ。素直に認めてください。」


「嘘よ。私はこの国の生まれでレイチェルというのよ。レイチェルなのよ私は・・・。どうして・・・。どうしてなの・・・。」

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