第54話

 


「申しわけございませんが、そちらについては私は存じ上げません。皇太子殿下もしくはマコト様がご存知かと思われます。」


「そう。わかったわ。ありがとう。」


思ったとおり、ただの侍女にはその辺の状況は説明されていなかったようだ。


エドワード様かマコト様が知っているということだけれども、お二人に会うことはできるのでしょうか。


「エドワード様にお会いできるかしら?」


「申し訳ございませんが、皇太子殿下は本日ご不在です。」


エドワード様にお会いできるか確認してみると、否という回答が帰って来た。


エドワード様も怪我をされており、血が足りない状態なのにそんな身体で、どこに行ったのだろうか。


「どこに行ったのかしら?」


疑問をそのまま侍女に伝える。


「私どもには伝えられておりません。」


表情を変えずに、答えを返される。


行き先を伝えられていないのか、それとも私に行き先を教えてもいいと伝えられていないのか。


どちらにせよ、今日中にエドワード様にお会いすることは難しいようだ。


「そう。では、マコト様にはお会いできるのかしら?」


「確認して参ります。」


侍女は丁寧に例をして、部屋を出て行った。


どうやらマコト様はエドワード様に着いていったわけではなく皇太子宮にいるらしい。


 


ほどなくして、部屋のドアがノックされた。


「マコト様がいらしております。」


「お通ししてちょうだい。」


先ほどの侍女の声がマコト様の来訪を告げる。


侍女の案内によりマコト様が部屋に入ってきた。


マコト様のお姿は以前お会いしたときよりもやつれていた。


「座ってください。」


よく見ると目の下にクマもできている。


私はマコト様をソファーに座るように促し、私もマコト様と向かい合う形でソファーに座った。


マコト様はソファーに腰掛けると、私を射抜くような瞳で見つめてきた。


「エドワード様を助けてくださりありがとうございます。」


「私には何があったのかわかりません。エドワード様が切られそうになったら急に視界が眩しくなったのです。次に目覚めた時はこの部屋でした。」


「そうでしたか。貴方様は転移の魔法をお使いになられたのですよ。今は失われた古の魔法、貴方様はなぜそれを使用することができるのでしょうか?」


「私が転移魔法を使用したというの?私は魔法がほとんど使えないわ。」


疑うような眼差しで私を見てくるマコト様。


古の魔法を使っただなんて、まったく覚えてもいない。


むしろ、私は今まで魔法という魔法を使うことができなかったのだ。


エドワード様とヤックモーン王国で会ったときに初めて治癒の魔法が使えたくらいだ。


私が古の転移魔法を使用したということ事態、自分のことが信じられないくらいである。


 


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