第53話


「レイ様、お食事をお持ちいたしました。」


「え?あ、ありがとうございます?」


ガラガラとワゴンを引きながらメイドが、やってくる。

ワゴンの上にはどうやら食事が乗っているらしかった。とても良い匂いが漂ってくる。


ぐーーーっ。


「あっ。」


自分では気づいていなかったが、どうやらお腹が空いていたようだ。

あれからどれだけの時が経っていたのだろうか。


「どうぞ、お召し上がりくださいませ。」


メイドはそう言って、食事の用意をしてすぐに下がっていく。


「待ってください。あの、私どれくらいここで寝ていたんでしょうか?」


「………丸一日寝ておりました。」


綺麗な礼をすると、メイドはそう言って部屋から出ていった。

どうやら、あのメイドに、私は嫌われているようだ。

視線がとても冷たかった。

丸一日も寝てしまっただなんて、それほど痺れ薬が強かったのだろうか。


用意された食事はパン粥だった。そうだよね、丸一日寝ていたのだから、胃に優しい食べ物を用意してくれたようだ。

スプーンで口にパン粥を運ぶ。


「………美味しい。」


冷たい視線とは異なり、用意された食事はとても美味しかった。少々量が物たりなかったけれども。


「食べ終わりましたか。それでは、下げさせていただきます。」


食べ終わってスプーンを置くとすぐに先程のメイドが来て、空の食器を下げていった。

なんとも躾が行き届いているようだ。


「あの、エドワード様は?ご無事ですか?」


「申し訳ございません。お答することは出来ません。」


エドワード様の姿をキョロキョロと探すが見当たらなかったので、メイドに声をかけてみる。しかし、望んだ解答は得られなかった。


「あの、じゃあ私はなぜここにいるか知ってたら教えてくださるかしら?」


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