第44話

注:人が亡くなる表現があり、R15となります。苦手な方は閲覧されぬようお願いいたしますm(_ _)m


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「うっ………ううん………。」


エドワード様が声をあげ、ゆっくりと目を開いた。

目が掠れるのか何度かまばたきを繰り返す。

それから、ゆっくりと起き上がった。

立ち上がろうとして、血が足りないためか、くらっと傾いたので、慌てて全身でエドワード様を支える。

その時、チラリとエドワード様の目が私を認識した。


「君が助けてくれたのか?」


こくりと頷く。

エドワード様は私がレイチェルだってことに気づいてくれるのかしら。

ドキドキしながら、エドワード様を見つめる。


「ありがとう。私はもうここで死ぬかと思った。それくらい酷い傷だったと思うが、それを治してしまったとするならば、君はとてもすごい治癒師なのだな。もしかして、聖女様であったりするかい?」


フルフルと頭を振る。

私は聖女様ではなくて、レイチェルなの。

気づいてエドワード様。

気づいて欲しいという思いをこめて、じっとエドワード様を見つめる。


「君の名を教えてくれるかい?」


「………レイ。」


エドワード様は私に気づかない。

名前を尋ねられたので、エドワード様がいつも呼んでくださる愛称を告げた。

でも、エドワード様は私だということには微塵も気づかないようだ。


「そうか。いい名だな。レイ、私のそばに誰かいなかったか?」


「誰も見かけませんでした。エドワード様だけが、こちらで倒れていらっしゃいました。」


「そうか………。」


私がエドワード様と呼んでも気づかない。見た目が違うから気づかないのかしら。

残念に思い目を伏せる。


「私はもういかねばならない。レイ助けてくれて礼を言う。また会うことがあれば、必ずレイの力になろう。」


エドワード様は私にお礼を言うと、ふらふらとしながらも歩きだした。

私はエドワード様に置いていかれるの?ここがどこかもわからないのに。


「私も一緒に行きます。そんなに足取りが危ないのに一人で行くなんて危険すぎます。」


もっともな理由をつけて、エドワード様の身体を支え、一緒に歩き出す。


ねぇ、エドワード様。私はレイチェルなのです。気づいてはいただけないのですか?


「そうか。ありがとう。君は優しいね。」


エドワード様の体温を右側に感じながらゆっくりと歩き出す。

エドワード様は以外としっかりとした足取りで前に進んで行った。

しばらく歩いていると、見慣れた男性が倒れていた。


「ロビンっ!!」


エドワード様は焦ったように、男性に近づく。そうだ、彼はロビン様。エドワード様の側近の一人だ。


「う………うぅ。エドワード様………ご無事で?」


「ああ。ああ。今、治療を………。」


「………不要でございます。私は………もう。それよりも…………レイチェル様が………赤子を………お産みに………レイチェル様………意識不明の………状態………です………。お早く………お戻りに………。」


「………わかった。」


ロビン様の傷はエドワード様よりも酷いものだった。

お腹が裂かれ、内蔵がはみ出してしまっている。呼吸をするのも苦しいのだろう。息も絶え絶えな様子だ。

千切れた腸が痛々しい。

この状態だと、治療することも無理だろう。

それに血も出すぎている。

辺りは血の海だ。

ごふっとロビンは口から血を吐き出す。


「エドワード様。彼はもう………。せめてもの慈悲として一思いに首を落としてあげてください。」


「………わかった。」


「ありがとう………ございます。………エドワード様どうか…………ご無事で。」


エドワード様は私にロビン様の上半身を支えるように言うと、自らの剣を鞘から抜いた。

ロビン様はゆっくりと目を瞑る。


「レイ、動かぬように。ロビン、今までありがとう。」


ビュッと剣が優雅に振り落とされる。


お腹を裂かれた者は苦しみながら死ぬ。この世界での治療法では、千切れた内蔵を治癒させる方法がない。

治癒魔法でも、だ。

だから、せめてもの餞として首を切り落とす。少しでも苦しむ時間が短くなるようにと。

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