第21話

「ああ、レイチェル。君は本当に可愛いね。大好きだよ。愛しているよ。」


夜はエドワード様の部屋で一緒に眠る。エドワード様はそう言って毎日私を抱き締めながら寝る。

本当にこのエドワード様姿は嘘なのだろうか?

私を愛しそうに見つめるその瞳も作り物なのだろうか。

この優しく抱き寄せてくれている手や、暖かな体温も偽りなのだろうか。


「エドワード様………。」


エドワード様に問いただせたらいいのに。

「本当は私のこと疎んでいらっしゃるのですか?」って聞けたらどんなにいいことだろうか。

でも、肯定されたらと思うと聞くことができない。

少しでも長くこの時間が続けばいいのに。


「レイチェル?どうしたの?」


ちゅっと甘やかにキスの雨が顔中に降ってくる。これも演技なのだろうか。

嫌いで陥れたい相手にここまでするのだろうか。


「いいえ………なんでもありません。」


「そうか。妊娠中はなにかと不安を感じるというが………。不安に思うようなことがあれば、都度教えて欲しい。」


「はい………。」


本当にエドワード様は、私のことを疎ましく

思っているの?そう尋ねたい。

でも、言葉には出せなかった。

出せないままエドワード様の体温を感じるように、エドワード様の身体に身体をピタッとくっつける。

エドワード様は何も言わずに私の髪を撫でていた。


「エドワード様。おやすみ中のところ申し訳ありません。お耳にいれたいことがございます。」


エドワード様の体温を感じて微睡んでいると、突然アルフレッドが先触れもなくやってきた。

慌ただしく部屋の扉をノックする音が聞こえる。よほど急いでいるようだ。

なにか、あったのだろうか。

不安に感じてエドワード様の顔を見る。

エドワード様は何を思っているのか、私の方はちらりとも見なかった。


「………わかった。今、そちらに行く。」


「………エドワード様。」


不安に感じてエドワード様を呼び止めるが、その声に答えてくれることはなかった。

エドワード様は思案顔で、アルフレッド様の元に行ってしまう。

そのままエドワード様は振り替えることもなくアルフレッド様と行ってしまわれた。

先程まで私を愛しそうに抱きしめてくださっていたのに、その名残も見せない。

やはり、私はエドワード様に疎まれているのだろうか。

結局、この日は朝までエドワード様が戻ってくることはなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る