第19話
ユキ様を呼び出すとユキ様はすぐに部屋まで来てくれた。シロとクロを連れて。
「レイチェルなんの用?」
「異世界のことでお話があるのです。そちらに座ってくださる?」
私はソファーに座りながら、私の正面にあるソファーを指し示して、ユキ様に座るように告げた。ユキ様は、ソファーに座ると、クロとシロもソファーに乗って、ユキさまにもたれ掛かるように寝そべった。
尻尾がたゆんたゆんと緩やかに揺れている。どうやらご機嫌なようだ。
「しばらくユキ様とゆっくりお話をしたいから部屋の外に出ていてくれるかしら?」
私付きの侍女と近衛騎士にそう指示する。できればこれからユキ様とする話は誰にも聞かれたくない。
だって、エドワード様の話題だもの。
いい話であればいいけれども、際どい話になるのは確実で。ここにいる侍女も近衛騎士も皇太子宮に来てから付けられた人たちだから、あまり話を聞かれたくない。
侍女は「かしこまりました。」とだけ言い、私とユキ様の前にお茶とお茶菓子を置いて退室した。
近衛騎士も、しぶしぶと言ったようではあったが、侍女と一緒に退室した。
これで部屋の中にはユキ様と私の二人だけ。まあ、クロとシロという猫様は一緒だけれども。
「よかったらお茶とお菓子をどうぞ。」
そう言うと、ユキ様は早速お菓子に手をつけた。どうやらユキ様はお菓子がお好きなようだ。
「この世界のお菓子って素朴な味だよね。もっと、こう生クリームいっぱいのケーキとかクレープとか食べたいな。そういうのってないの?」
ユキ様はそう言いながら目の前に出されたフィナンシェを口に運ぶ。
このフィナンシェも十分美味しいと思うのだけれども。
生クリームというものはこの国では貴重なものとなり、食卓にはほとんどあがらないと言って言い。なにか大切な行事があるときだけ食卓に出ることがある。
それほど貴重なものをたっぷり食べたいだなんて、どんな国に住んでいたのかしら。
「生クリームはこの国では貴重なものです。普段は滅多に食べることができません。ユキ様の国では豊富だったのですか?」
「うん。いつでも食べられたよ。こっちでは貴重なんだ?なんで?」
ユキ様の国では生クリームはそれほど貴重でもなかったようだ。
「生クリームはバッフバッフという魔獣からしか取ることができません。魔獣ですのでかなり強いためなかなか生クリームはとれません。」
「ふぅ~ん。魔獣なんているんだ。」
「ええ。」
どうやらユキ様の国には魔獣はいないようだ。安全な国なのだろうか。
「でも、牛乳は普通にあるよね?」
牛乳?牛乳と生クリームに何の関係があるのだろうか?
牛乳だったらバッファという家畜から取ることが出来る。
「ええ。牛乳はバッファという家畜から取れますので、豊富にあります。」
そう告げるとユキ様は「はぁー」と大きなため息をついた。
「魔物からは生クリームの状態でが取れるの?」
生クリームの状態でとはどういうことだろうか?魔物であるバッフバッフを倒すと稀に生クリームをドロップするのだ。
「ええ。バッフバッフを倒すと生クリームがドロップされます。」
そう告げるとユキ様は苦虫を噛み潰したような面白い顔をした。
「乙女ゲームとRPGの融合かよ。もしかして、魔物を倒すとお金をドロップしたり?」
「まあ!ユキ様よくご存じで。ええ、お金をドロップしますわ。」
生クリームがドロップ品だと知らなかったのに、お金をドロップすることは知っていたなんて、ユキ様は物知りです。
それを告げるとユキ様は更に変な顔をした。
そして、この国を揺るがすような発言をした。
「牛乳から生クリーム作れるよ?確か。」
「まあ!!それは!!」
牛乳から生クリームが作れるなんてそんな夢のような話があるのだろうか。
もし本当だとしたら、生クリームをいっぱい食べれるわ!
早くエドワード様のことをきいて、ゆっくり生クリームの話をきかなくてはならないわね。
「ユキ様、エドワード様のことを教えてくれないかしら?エドワード様は腹黒なの?ほんとうに?」
「唐突に話題を変えてきたわね………。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます