第18話


「ねぇ、一緒にゲームやらない?」


見たこともない服をきた少女が私に話しかけてきた。

少しユキ様に似ているだろうか。

足を膝上まで出しているなんてはしたない。


「うん。ユキ、それ新作?」


私はその少女をユキと呼んでいた。彼女もそれを否定しない。


「新作だよー。この表紙絵のキャラかっこよくない?エドワードっていうんだけどね。イラストがかっこよくてジャケ買いしちゃったの。」


そう言って見せてくれたのは15センチ四方の四角いものだった。

なんでもゲームはゲームでも乙女ゲームと言われる種類のゲームらしい。

それから場面は急に変わり、私は狭い部屋の中にいた。

四角い箱にエドワード様が映っている。

四角い箱越しにエドワード様と会話をする私たち。


「げっ・・・。なにこれ。エドワードの性格見た目と違って最悪じゃない。」


「確かに、なかなかに腹黒いよね。」


「うーん。メインヒーローがこれじゃあなぁ~。でも、折角買ったし最後までやるかぁ。」


私とユキ様は最後までゲームを進めた。でも、やる気はどんどん失せていく。

それもこれも、メインヒーローであるエドワード様の性格が腹黒く、だんだんとその黒さが増していくのだ。


「確かにさ、悪役令嬢のレイチェルは意地悪してきたけど、なにも自分の婚約者を処刑する必要なくない?」


「そうだね、婚約破棄でも酷いくらいだよね。」


「ほんと!婚約者がいるのに浮気してるエドワードの方が悪いじゃん。いくら婚約者と仲が悪くて婚約破棄したいからってこれはないっ!」


ユキ様は本気でゲームの展開に憤慨している。

確かに、主人公がいじめられているそもそもの原因は婚約者のいるエドワードに近づいて親しくなったことによるものだった。

まあ、いじめと言っても教科書を隠されたりとか陰口を叩かれたりとかの些細なものだった。

それで、処刑だなんてひどすぎる。

婚約破棄するにも他にやりようがあっただろうに。


「あれってただ単にエドワードがレイチェルを気に入らないから、処刑したって感じだよね。」


「そう、見えたね。」


「エドワードもさ婚約者と仲良くする方法を探せばよかったのに殺す方法を探すだなんて、ひどすぎる。これ、ヒロインのこともレイチェルを殺すための道具としか見てないでしょ?きっとこのあと、ヒロインもポイされるよ!?」


確かに。

ゲームの中のエドワード様はとても怖かった。誰でも利用して捨てるような人だった。

私はユキ様はなんとかゲームをクリアしたが、後味は悪かった。






「はっ・・・。」


異常なほどの汗をかいている。

今見た夢があまりに鮮明で、あまりにもエドワード様の本性が酷くて。

こんなエドワード様。エドワード様じゃない。と思えるほどだった。

見たこともない部屋で見たこともない服を着た私とユキ様。

しかも、私、ユキ様のこと呼び捨てにしているし。

もしかして、これってユキ様のいた異世界なのだろうか。

私は、ユキ様を呼び出し確認することにした。マコト様にも話を聞きたいが、マコト様は仕事があるので、まずはユキ様と話すことにした。

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