兎は喰らう

私は小さい

安価な妖艶を被った街の乙女

私は小さい

だからミニスカートをはく乙女


今宵も夜行性の者達が身なりを整え動きだす

どちらの毛並みが美しいだの

どちらの遠吠えが大きいだの、くだらない


そこに蛙のような一匹の狼を見つける

凛々しく無知な爽やかが

なんて綺麗なんだろう

そして腹をすかしていた


私はさみしい

狙いを定めた憂な乙女

私はさみしい

だからかわいいを求めゆく乙女


おとなしくしないと食べちゃうよ


からかうように笑ってる

近寄って離れて

噛みつかれそうになったら

言葉をほてった空気になじませる

逃げ惑う「ふり」をして懐にもぐりこむ


狼は言う 愛しいものに触れるように言ったのだ


この世の全てにさからって

誰もいない所に逃げようよ

夜に輝く真珠の瞳よ どこにもいかないで


青くてからっぽなまっすぐが

鋭く痛かった

私はいたいけな兎

あなたに食べられるのが筋なのね

けれど残念 罠にかかるのはあなた

私は狡猾な兎

さらりと微笑み真っ赤なベロだしこう言うの


あらあら本気にしてしまったの

それじゃあ朝がくるまで踊りましょ

これは恋じゃないのだから


二つの吐息がワルツを踊る頃

ずっとこのままでいたいけど

兎は絶対に認めない


狼から流れる透明な血を

抱かれた腕の温もりを

兎はこれを夢にする


それを喰らって、生きていくの

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る