第2話 キジトラ猫がヘビに噛まれた

 キジトラ猫の様子がおかしい。猫は朝、人になでられていた。


 私に気づいても、チラ見しただけで「ミャン」とも鳴かずに、ふらふらと歩いて行った。


 猫はベンチへ戻って来ると思い、私はベンチで待っていた。だけど来ない。


 私が見に行くと、猫はさっきのところで寝そべっていた。(どうしたんだろう?)


 とりあえず「みゃんこ、また来るからね」と、その場を後にした。


 昼休みに猫のところへ行くと、猫は朝と同じ場所で寝転んでいた。


 それも直射日光が当たっているのに、その場から動こうとしない。


 なんだか猫の意識が、もうろうとしている感じがする。


 このままじゃ熱中症になってしまう。「みゃんこ、しっかり!」


 私が猫を抱っこしようとすると「シャー」と、威嚇された。「みゃんこ、どこかが痛いの?」


 それでも私はなんとか、猫を抱っこしてベンチまで移動させた。


 猫友も駆けつけて来て、ふたりであれこれ看病したり原因を探ったりした。


 猫は元気が全くない。食欲もない。右後ろ脚にケガをしているが、猫同士の喧嘩にしては不自然だ。


 精神的にショックを受ける、出来事でもあったのか? 何か変なものを食べたのか? 


 しっぽだけは、元気にふりふりしている。立てる・歩ける・鳴ける・ベンチを上り下りできる。


 うつろな表情ながら、目を大きく見開くようになった。さっきより、意識ははっきりしてきたようだ。


 肩のかゆいところをかこうとしても、右後ろ脚が上がらない。あっ、これでピンときた! ヘビに噛まれたんだ。


 ケガの跡も、ヘビの歯型と一致する。ヘビの毒で、意識がもうろうとしているんだ。


 右後ろ脚もお顔も腫れてはいないけど、多分ヘビだ。昨夜の縄張りパトロールの時に、噛まれたんだ。


 次に見に行った時には、猫はベンチから姿を消していた。少しは元気になったのか?


 熟睡して治すために、誰にも邪魔されない静かなところへ猫隠れしたのでは——。


(猫ちゃん、どうぞお大事に……)

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