第40話「発動! 『高速再構築(クイックストラクチャー)』(取り扱い注意)
イリスが見ている前で、護衛の兵士が倒れた。
床が、血に染まっていく。
ここはイリスの別荘の応接間。昼間、ナギたちと会っていた場所だ。
イリスは悲鳴をこらえるために、唇をかみしめた。
正規兵たちは必死で戦ってくれている。
イリスがみんなを動揺させるわけにはいかない。
「貴公が、『
兵士と戦っている「敵」にイリスは問いかける。
「敵」はコウモリの翼で空を飛び、窓を破って飛び込んできた。
奴は身体を黒いマントで覆っている。見えるのは顔と手足だけ。
背中からはコウモリの翼が生えている。耳の後ろからは、ねじれた角。
こんな姿をしているもののことを、イリスは知らない。
「我は、魔の者」
ぎりり、と、大きく裂けた口を開いて、『敵』は言った。
「お前たちの知らない力を持ち、世界を新たな姿に導く者だ」
魔の者の短剣が、正規兵の首筋に食い込む。
頸動脈を断たれた兵士から、血が噴き出す。
兵士の動きがおかしかった。反応も動作も、異様なほど遅い。
魔の者に近づくと、まるで水の中に入り込んだように、兵士の動きが遅くなる。
あれは奴の特殊能力なのだろうか。
「ならば魔の者に問いましょう。あなたの目的は!?」
イリスは声を張り上げた。
「我が望むのは、海竜の巫女の血」
魔の者は手のひらで兵士の血をすくい、なめた。
その味が気にいらなかったのか、ぺっ、と吐き出す。
「海竜の巫女は、『海竜の娘』の直径の子孫と聞いている。イリス=ハフェウメアこそ、古き神々の血を引くもの。その血は、我々にとって利用価値がある。ゆえに、身体ごといただく」
魔の者は喉をそらして、カカカと笑った。
「我は汝の血と肉を利用し、より強力な魔法生物を作り出す」
「……魔法生物を?」
「『黒い鎧』は実験体。海竜の血を引く者ならばより高等なものができよう」
「そんなものをなんに使うというのです!?」
「汝がそれを知ることはない。が、汝の名は、世界平和に貢献した者として歴史に残るであろう」
心底不思議そうに、魔の者が首をかしげた。
肩と水平になった首が、からからと笑う。
生き残りの正規兵は、あと3人。
マチルダが叫んでいる。「なにをしているのですか! 今期の査定は月末ですよ! それまでに成果を上げた者には昇級とバカンスが待っているのです」って。
こんな時なのに笑いそうになる。目の前に死が迫っているのに、来月のバカンスだなんて。
そっか、ここで死ぬんだ。
ううん。死ぬよりもひどい運命が待っているんだ。
イリスは目を閉じた。思わずつぶやく。「ソウマさま……」
「覚悟を決めたか、海竜の娘」
魔の者が、兵士の顎をつかみ、壁に叩きつけた。
レンガづくりの壁に亀裂が走る。兵士の身体が、崩れ落ちる。
「絶望せよ。我は魔の者……そう、魔族の後継者とでも言っておこうか。我は人を超越したもの。異能により新たな生命を作り出すもの。やがて魔王をも越えて、世界を変革するもの。それが魔族。そう、我は魔族なのだ!」
「黙れニセモノ──────────っ!!」
どがん
レンガの壁が、吹っ飛んだ。
「必殺! 『建築物強打LV1』!」
壁に開いた大穴の向こうに立っていたのは獣人の少女、リタ=メルフェウス。
イリスの恩人の一人だった。
「な、なん……汝……我を魔族だと知っての所行──」
「うるさい! くらえ! ナギからもらった『建築物強打LV1』!」
どがん どがん どがががんっ!
リタは壁を殴り続ける。レンガの塊が次々に、魔の者に向かって飛んでいく。
勢いよく飛んでいくレンガの塊は、魔の者の近くでスピードが低下する。魔の者はそれをたやすく回避する。剣を振り上げ、リタに向かって走り出す。
「『ほのおの、やーっ』」
レンガの隙間を突いて飛んできた炎の矢が、魔の者の進路を横切った。
魔の者は反射的に立ち止まり、炎の矢を避けるため後ろに飛ぶ。
イリスは思わず声の主を探す。
いた。
レンガに当たらないように、地面すれすれを這いながら進んでくる、ちっちゃなダークエルフ。
きっとこの子が、ソウマさまが言っていた魔法使いだ。
涙があふれて止まらない。
具合が悪いっていってたのに、無理してイリスを助けに……。
「『正規職員に馬鹿にされてムカついたので、はらいせに壁を殴りにきました』──これが、ナギさまからのご伝言です」
「……え?」
「『奴隷ぷらす友達と一緒にいい気分でくつろいでたのに、そちらの正規職員──じゃなかった兵士のせいで精神的苦痛を受けた。というか、ぶっちゃけ斬られそうになった。メイドも裏で糸を引いていたらしい』──ナギからのご伝言は以上です。
わたしはその件について『くれーむ』を言いにきました。お詫びの気持ちをこめた『
「ソウマさまに危害を!? マチルダ、あなたはなんてことを!」
イリスはかたわらのメイドを見た。倒れてた。
そういえば、リタ=メルフェウスが飛び込んできたとき、びっくりして気絶したんだっけ。
話はすべてが終わってから。今は生き残るためにできることをしよう。
「リタさん! 気をつけて。そこにいる魔の者は周囲に奇妙な結界を張っています!」
イリスはこぶしを握りしめ、リタに向かって叫んだ。
「わかってる! なんなの!? 近づくと動きが遅くなるって──!?」
リタの蹴りが『魔の者』にかわされた。
兵士と比べて、リタの動きは数倍速い。
それでも『魔の者』に近づくと、動きが遅くなる。
まるで空間に『スロー』の魔法をかけられているように。
「『歌を捧げましょう──』」
リタの口から、綺麗な声が流れ出す。同時に、リタの動きが速くなる。
なのに攻撃は、魔の者に当たらない。
「あんた、本当は魔族なんかじゃないんでしょ!? 何者よっ!」
ぎりぎりで魔の者の剣を避けながら、リタが問う。
「ご主人様が言ってた。そんな『ちゅうにびょう』の魔族はいないって! そんな恥ずかしい格好するのは人間だって! そうなんでしょ!?」
「答える必要があるか、獣よ」
魔の者の背中の翼が、変化した。
コウモリの翼が伸び、二本の鋭利な刃に変わる。
『魔の者』の短剣を避けたばかりのリタに、異形の刃が襲いかかる。
「ちっ!」
リタは『神聖力』を宿した両腕をクロスさせて受ける。
衝撃。細い身体が飛ばされる。
壁際まで飛ばされたリタは、空中で一回転してなんとか着地。
だが、後ろに逃げ場はない。おいつめられた。
「それで? 今度は口から炎でも吐く? 角から雷でも飛ばすの?」
それでもリタは不敵に笑う。
「魔族を
リタの言葉に、魔の者が唇をゆがめた。
「我は『魔の者』だ。我は必要なことをやっている。中二病などと呼ぶな!」
「ふぅん。ところで『ちゅうにびょう』ってどういう意味? 私もセシルちゃんも知らないんだけど」
「──っ!?」
「私のご主人様が教えてくれたの。この言葉に反応したら、それは来訪者の証拠だって。これはご主人様の世界の言葉で、この世界には対応する言葉がない。だから私たちには意味がわからない。
つまり、『ちゅうにびょう』の意味を知ってるあんたは、この世界の人間じゃない」
「我が──だろうと、──だろうと関係ない! お前に我のなにがわかる!?」
魔の者のセリフが途切れ途切れになる。
まるで、ある単語を口にできないように『契約』しているかのように。
「我は──に呼ばれ、勇者となるはずだった! が、失敗作として放り出された。我は再び────に認めてもらい、もう一度勇者になるのだ。研究成果を納品すれば──だって我を認めてくれるはず! それまでの間、ちょっと魔族の名前を借りたところで、誰にも迷惑はかからないはずだ!!」
「ふざけるんじゃないわよっ!!」
リタは吐き捨てた。
「ご主人様にも、セシルちゃんにも、イリスちゃんにも迷惑かけてるじゃない! 自分勝手な理屈でつまんない力を振りかざすなっ!!」
「我の力は世界を救うためにある! 我が見下されていいはずがないだろう!? 我はもう一度──に認められて勇者に戻る。そのために海竜の血をいただく。この世界のためにも!」
「そういうのいいから。邪魔だから、消えて!」
「追い詰められた者の言うことか。お前が死ね!」
魔の者が剣を振り上げる。
「私は死なないわよ。ご主人様が私を必要とする限り」
リタは笑う。魔の者の剣をかわし、真横に飛ぶ。
「ご主人様、ご命令の通りに誘導しました。あとはご意思のままに」
「ありがと、リタ」
魔の者の目の前で、壁が砕けた。
「『建築物強打LV1』からの──」
ナギの声が、応接間に響き渡る。
壁に空いた穴から、黒い刃が姿を現す。
「──『
黒い刃が、巨大化した。
魔の者が金色の目を見開く。
壁越しの
リタの言葉はすべて魔の者をこの位置に誘導するためのもの。魔族は剣を振り切った体勢。この距離で、巨大化した魔剣レギィを避けるすべはない。
「ぐああああああああああっ!」
漆黒の刃に貫かれ、魔の者の右腕が吹っ飛んだ。
『自称「魔の者」
種族:人間
固有スキル:「合成」「
僕のスキル『高速分析LV1』のウィンドウに、敵のステータスが映ってる。
奇襲は成功した。
『高速分析LV1』は、近くにいる相手のまわりに、ステータスウィンドウを表示してくれる。
だから、そのウィンドウを見れば、リタと偽魔族の正確な位置がわかる。
あとはタイミングを計って『遅延闘技LV1』を解放すればよかった。
相手がこっちの動きを遅くするなら、避けられないくらい攻撃範囲を広くすればいいだけだ。
「やっぱりこいつは、『来訪者』か」
『高速分析』のウィンドウに、自称魔族のステータスが映ってる。
『合成』は死者か、死にかけの者を使ってキメラを作ることができるスキルらしい。
『黒い鎧』の中身は『合成』スキルで作ったもの。僕たちが戦ったゴーストたちは、たぶんその素材になった人たちの魂だ。キメラにされて、成仏できなくて漂ってた。
『低速領域』はこいつの周辺、数メートルの範囲内に近づいたものの動きを遅くする。いわば空間にスローをかけるスキルだ。
両方ともチートスキルだ。ってことはやっぱり『来訪者』か。
僕は『高速分析LV1』のウィンドウを閉じた。
偽魔族は、まだ動いてる。
奴は起き上がり、近くにあった兵士の死体の腕を切り落とした。
自分の傷口につけて、合成。再生する。あのスキルは自分にも使えるのか……。
セシルが『炎の矢』を、兵士が矢を撃ってるけど、『
……やっかいだな。まともにやりあったら時間かかりそうだ。
「ソ、ソウマさま。あ、ありがとうございました」
イリスが僕に頭を下げた。無事でよかった。
「イリス=ハフェウメア、あとでお話があります」
「わかっています。正規兵があなたがたにご迷惑をおかけしたこと、イリス=ハフェウメアの名において、公式にお詫びいたします」
イリスはドレスの胸元を押さえて、深々と頭を下げた。
「助けていただいたこと、感謝のしようもありません。海竜の名において、できる限りのことはさせていただきます。『
「わかりました。詳しい話はあとでしましょう」
僕はイリスにうなずいてから、リタの方を見た。
「でも今はあの
僕はリタの手をつかんで、
「悪い、リタ。ここでスキルを『再構築』させて」
「あ、はい。ご主人様──って、え、ええええっ!?」
「時間がないんだ。理由を手早く説明するから、聞いて」
魔の者を逃がすわけにはいかない。
だけど、あいつの『
この状態でも、こっちの動きを極限まで遅くできる。だから攻撃は当たらない。倒せないわけじゃないけど、普通にやったらこっちにも被害が出る。
だからこの場で『低速領域』を破るスキルを作り出す。
「そ、そんなことできるの?」
「セシルと『
「……いいわよ」
リタは覚悟を決めたみたいに、うなずいた。
「でも、私に恥ずかしいことさせるんだから、お願いを聞いて」
「いいけど、なに?」
「あとで考える。今は、さっさと済ませましょう」
「わかった」
僕はリタにスキルクリスタルを手渡す。
それをリタがインストールするのを確認して、僕は彼女の胸に手を当てた。
動いたあとだから、汗ばんでる。あったかくて、やわらかい。頭の中がとろけそうになるけど、今は我慢だ。
「起動、『
まず僕は、リタのスキルを呼び出す。
今、渡したばっかりの家事スキル『下ごしらえLV1』、昼間イリスからもらったやつだ。
『下ごしらえLV1』
『食材』を『すばやく』『解体する』スキル
続いて、自分の中にある、覚醒したてのスキルを呼び出す。
『面接LV5』
『相手のエリア』で『礼儀正しく』『交渉する』スキル
「いくよ、リタ」
「う……うん」
リタがうなずく。
僕の右手には魔力の糸がからみついてる。セシルと『魂約』したときに出てきたものだ。『高速再構築』はこれを利用するらしい。たぶん、こうするんだろうな。
「……ん、んぁっ」
「ちょっとだけ我慢して、リタ」
僕はリタの中にある『下ごしらえLV1』の『食材』に糸を絡みつける。
続いて自分の中にある『面接LV5』の『相手のエリア』にも同じようにする。
よし、これでOKだ。
「実行! 『
「────あ、ああ……って、あれ?」
リタがきょとん、としてる。
「え? 終わり。これで終わりなの?」
「うん。そうみたい」
スキルはあっさりと新しくなった。
『
『相手のエリア』を『素早く』『解体する』スキル
魔法およびスキルによって生まれた空間支配を破壊する。
破壊できるのは結界、炎の壁、
使用者は物理的な攻撃で、空間にかけられた魔法やスキルの効果そのものを破壊できる。
なお、使用者とその主人は相手の空間支配を目で見ることができる。
これがリタの中に生まれたスキル。
『
『食材』で『礼儀正しく』『交渉する』スキル
食材を通貨のかわりにして、他者とやりとりできるスキル。
このスキルの発動中は、相手が動物や魔物でも意思を通じ合わせることができる。
互いの同意があれば、やりとりできる商品に制限はない。
よしっ。こっちは通貨交渉系のスキルだ。
こういうのを待ってた。これで「働かない生活」に一歩近づいた。
「……うー、落ち着かない。じんじんする。なんだか、ナギが私の中にいるみたい」
でも、リタはうらめしそうに僕を見上げてる。肌が火照って桜色になってる。
「僕たち、まだ繋がってるからね……」
僕とリタの間には、魔力の糸がある。僕の方は右腕に、リタの方は首輪を経由して、胸の中央へと繋がってる。
で、僕たちのスキルだけど、正確には書き換えられてないんだ。スキルの概念『相手のエリア』と『食材』に魔力の糸が繋がってて、おたがいを擬似的に入れ替えてるみたいだ。
「糸の長さは──3メートルってところか」
「ちょ、ナギ、引っ張らないで……はぅっ。や、あ、はぅぅっ!」
リタが真っ赤になって胸を押さえた。
「私たち、ひとつになってるんだから。引っ張ると……その……いつもみたいになっちゃう……」
「ご、ごめん」
「わ、私、この状態で戦わなきゃいけないのね……」
リタは恥ずかしそうに胸と、お腹のあたりを押さえてる。
『魔力の糸』の長さは3メートルくらい。
切れたりはしないけど、リタはそれ以上僕から離れられない。
つまり、これが『
ずっとじゃないよな……スキルが安定したら消えるんだよね?
「じゃあ、リタ。頼む」
「もう……わかったからついてきてね、ご主人様!」
僕とリタは走り出す。
奴の『
「おろかな。二度も同じ手は食わぬぞ!」
「それはこっちも同じだよ、中二病の偽魔族!」
偽魔族の背後で黒い翼がゆらめく。異形の刃になって襲ってくる。
「あんたの手の内はわかってるんだ。やっちゃえ、リタ!」
「発動! 『
リタが結界に拳を叩き付けた。
ぱりん、と音がして、自称魔族の『
「──な!?」
「反応が遅い!」
僕は『遅延闘技』で黒い翼を払いのける。
3回しか空振ってないけど、即席の防御には問題なし。
「寝てなさいっ! 迷惑なニセモノめ────っ!」
そしてリタの蹴りが、偽魔族の身体を天井まで吹き飛ばした。
ずん
偽魔族の身体が天井でバウンドして、落ちてくる。
リタはぐいん、と身体をひねってジャンプ。落ちてくる偽魔族のどてっぱらに、もう一撃。
ずどん
「……がはっ!」
「私のご主人様の手をわずらわせた罪は、地獄で反省しなさい」
天井にもう一回叩き付けられて、頭から床に落ちて──
手脚が奇妙な方向にねじまがった偽魔族は、完全に意識を失っていた。
偽魔族は鎖でぐるぐる巻きにされて、町の牢屋に入れられることになった。
結界つきの牢屋だから安心です、ってイリスは言ってた。
これから偽魔族は、正規兵と町の衛兵たちの尋問を受けることになる。
今回の事件が、あいつの単独犯なのか、裏に誰かいるのか、知らなきゃいけない。でないと同じことの繰り返しだ。
でも、もう夜も遅いから、続きは明日。
僕はイリスにクレームを伝えて、『僕たちが兵士に殺されそうになった』って事実を公式のものとして認めてもらった。
僕たちのスキルについては、一応また口止めをした。
というか、メイドさんも執事も呆然自失、生き残りの正規兵も、誰に助けられたのかなんて意識してなかった。
ひげ面兵士たちは別荘の離れから姿を消してた。今は、激怒した生き残りの正規兵たちが行方を捜してるところだ。見つかったら懲戒免職か、牢屋行きだろうな。
僕たちが離れに戻ったのは真夜中になってからだった。
もう、くたくただった。
僕はリタと繋がったまま軽い食事を済ませて、リタと繋がったまま身体を拭いて、リタと繋がったまま着替えて、リタと繋がったままベッドに入った。
魔力の糸が消えたのは、僕たちが目を閉じる寸前だった。
寝る前にスキルを再確認。
『
『相手のエリア』を『素早く』『解体する』スキル
『
『食材』で『礼儀正しく』『交渉する』スキル
よし、書き換えは完了してる。
『高速再構築』は、書き換え直後はスキルの文字を『魔力の糸』で擬似的に入れ替えて、その後でゆっくりと、データをやりとりして実際に書き換えていく、っていうスキルみたいだ。
……このまま一生繋がったままだったらどうしようかって思ったよ。
じゃあ安心して、おやすみなさい……。
「……はぅ。あ……あぅ。は、あ。ごしゅじん……さま、ぁ」
……なんか生暖かい感触がする。
「やだ……だめ……………………とまって……くれない…………やぁ、また………………やだ、ああんっ!」
「…………リタ?」
僕は目を開けた。
リタが、僕の手のひらを舐めてた。
「…………ごめんなさい…………ナギ…………ごしゅじん、さまぁ」
リタが大きな胸を押さえて、僕を見た。
薄い寝間着が汗でびっしょりだった。
金色の耳と尻尾が、ぴん、と、立ってた。
リタは涙目で僕を見て、こう言った。
「…………スキルが……私の中で……うごいてるの……じんじんするの。…………んっ。これ……だめぇ……」
…………はい?
──────────────────
今回使用したスキル
『
「相手のエリア」を「素早く」「解体する」スキル。
魔法やスキルによって作られた特殊なフィールドを、物理的にぶちこわすことができる、問答無用のチートスキル。
スローフィールドや、魔法封じの空間、高重力空間などを、ぶんなぐって壊すことができます。
ただし、リタがそれを見ることができて、動ける状態である必要があります。
たとえば時間停止など、リタがそれを認識する前に止まってしまった場合は壊せません。
『建築物強打』と組み合わせると大抵の場所に入り込めるので、リタから逃げるのはとっても大変です。
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