琵琶師《びわし》
吾妻栄子
早春
「もうすっかりいいよ」
真っ暗だが、ふんわりした梅の匂いがする。
「お
向かいのお屋敷の梅は
「お前、見えないのかい?」
墨で塗り潰したような闇の中、震える声が響いた。
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