第2部 学園
第4章 魔法の訓練
「カイ、アン。お前達の家庭教師が決まったぞ」
射手月初旬のある日。アンと話しているとお父様がやってきてそう言った。
「家庭教師ってなんのですか?」
「来年の水瓶月からお前たちは聖ガルモンド学園に行くだろう? その前に魔法の訓練をしておいた方がいいだろうからな」
「聖ガルモンド学園というのは?」
「ああ。カイには説明したことなかったかな? 聖ガルモンド学園というのはガルモンド王国にある唯一の魔法学校でな、魔界から侵攻してくる魔族に対抗するために貴族家の子息が十七歳になる年から入るところだ」
そんなものがあるのか。この世界にも学校があるんだなあ。それにしても魔法か……。俺ほとんど使ったことないし、使ったことあるのも治癒魔法だけだからな……。
「それで家庭教師って誰になったんですか?」
アンがお父様に尋ねる。
「うむ。ライトア領伯爵家カルヴァール家の長女、ミーシャ・カルヴァール殿だ」
「え!? あのミーシャ・カルヴァール様ですか!?」
……誰だよ。聞いたことないわ。というかライトア領にフィアリー家以外の貴族がいたことに驚きだわ。
「そう。あのミーシャ・カルヴァール殿だ」
「???」
「ああ。カイは知らなかったか」
「私が教えるねっ」
アンがキラキラした目になっている。アンがこんなにテンション高いって珍しいな。
「ミーシャ・カルヴァール様はね、ライトア領の伯爵家カルヴァール家の長女で」
それはさっきお父様が言ってたね。
「弱冠二二歳なのに王国魔法師団の第二席に就いているの。貴族の若い子の憧れの的なんだ」
「へー」
二二歳で王国魔法師団の第二席なのか。王国魔法師団がなにか知らないけど、話を聞く限り凄い人なんだな。
「王国魔法師団ってなんですか?」
「王国魔法師団というのはな、魔界から迷い込んで来たり侵攻してきた魔族の対処を担当している王国直属の組織でな。爵位重視の貴族社会には珍しく、実力重視だから低い爵位の者でも上を目指せるんだ」
「え、じゃあミーシャ・カルヴァール様は国で二番目に魔法の才に秀でているってこと? そんな人が家庭教師になってくれるってこと?」
「まあ厳密に言うと第一席のライナス・ガレット殿の上に賢者モート・エンライト様がいるから二番目ではないな」
「でも凄い人には変わりないんですね」
「凄い人に教われるんだよ。楽しみだね、カイ」
アンのテンションがやばいことになってる……。
そしてミーシャ様がやって来る日がきた。屋敷全体の雰囲気が歓迎ムードになっている。アンなんて遠足前日の小学生みたいだ。憧れの人と会えるのだからわかるけど。もう少し落ち着こうよ……。
そして正午、門番さんがやってきて
「ミーシャ・カルヴァール様が到着なさいました」
と教えてもらった。
「よし。アン、カイ、迎えに行くぞ」
お父様に連れられ表玄関へ向かった。
表玄関に着くと、馬車が止まっていた。あの中にミーシャ様がいるのだろう。
馬車の扉が開く。中から一人の女性が従者を連れて出てくる。ボーイッシュな風貌。俺と同じくらいの身長。姿は魔法使いというより剣士のように見える。本物の剣士とか見たことないけど。
彼女が俺達の方に歩いてくる。
「初めましてアラン様。ミーシャ・カルヴァールです」
「アラン・フィアリーだ。今日から子供たちをよろしく頼む」
「お任せください」
「今日はゆっくり休んでくれ。ロバート、ミーシャ殿を客室へ案内してくれ」
「かしこまりました。ミーシャ様、こちらへ」
フィアリー家執事長のロバートさんがミーシャ様を客室へ案内しに行った。
「アン、カイ、実際に教わるのは明日からだ。今日はしっかりと体を休めて怪我の無いようにするんだぞ」
「わかりました」
「カイ、一緒にお話しよー」
その日はこれで顔合わせが終わった。……ちょっ、アンさん引っ張らないで。お話しするからぁ。
翌日。朝食が終わってから俺とアンは屋敷にある訓練場に来ていた。屋敷に訓練場とかあるなんて今まで知らなかったから正直驚いた。周囲が対魔法結界というもので覆われているらしい。対魔法結界はある一定の威力までの魔法なら完全に防ぐことができるすぐれものらしい。……この施設をつくるまでいくらぐらいかかっているのやら。
訓練場についてから約五分後。ミーシャ様がやってきた。
「ごめんなさい。遅くなりました」
ミーシャ様が俺とアンを交互に見る。
「では改めて。今日から二人の家庭教師を担当するミーシャ・カルヴァールです。ミーシャ先生、と呼んでくださいね。えっと……二人のお名前は?」
「あの、えっと、わ、私は……」
アンのやつ。すごくテンパってるじゃん。
「カイ・フィアリーです。よろしくお願いします、おい、アン。いったん落ち着け。深呼吸しろ」
「すーはー。すーは-。わ、私はアン・フィアリーです。あ、あのミーシャ様は私の憧れで……」
「よろしくね。アンさん、そんなに思ってくれてありがとう。でも今日からは家庭教師になるわけだから、『様』つけなくていいですよ。先生、って呼んでくださいね」
「は、はい!」
ミーシャ先生は、第一印象ボーイッシュな感じで少し厳しいのかなって思ってたけど、話してみると優しくて面倒見のいい人そうだな。
こうして俺とアンに家庭教師ができた。
「ではこれから授業を始めます。まず魔法について説明しますね。知ってるかもしれませんが一応。まず、魔法は低級、中級、上級、超級の四つに分類できます。名前の通り低級は威力が低い代わりに消費魔力量が少なく、超級になるにつれて威力と消費魔力が増していきます。さらに難易度も上がっていきますね。超級は使える人が少ないんですよ」
「先生はどこまで使えるんですか?」
「私は一応超級まで使えますよ」
第二席って言われても実感わかなかったけど、本当に凄い人なんだな、ミーシャ先生って。
「では次です。魔法には属性というものがありまして、基本属性が炎・水・雷・風の四種類。特異属性が闇・光・治癒の三種類。全部で七種類あります。ほとんどの人が基本属性しか使えません。特異属性が使える人は稀少なんですよ。これは遺伝が大きく関係しており、親が特異属性を使えるなら、その子供も使える可能性が高いです」
「「へー」」
特異属性と遺伝の関係は本に載ってなかったな。
「次は適応属性についてですね。適応属性はその人が使える属性の中で、消費魔力が抑えられる属性のことです。もちろん適応属性以外の魔法も使えるんですが、適応属性と比べるとやはり消費魔力が多いので、適応属性の魔法をメインで使っていくのがいいと思います」
「ミーシャ先生の適応属性はなんですか?」
「私の適応属性は風属性ですね。風属性だけ超級魔法を使えます。あとは基本属性の上級を使えますね」
「適応属性って一人一つなんですか?」
「基本的には一つですね。でも二つ持っている人もいると聞いたことがあります」
へー。二つの可能性もなくはないのか。
「じゃあこれから二人の適応属性を調べてみましょう。まずはアンさんから」
「はーい」
アンが返事をするとミーシャ先生が懐から小さな水晶のようなものを取り出した。緑色に輝いている。
「ミーシャ先生。それは何ですか?」
「これは適応属性を調べるためのものです。この水晶に触れると勝手に魔力を感知してくれて適応属性を教えてくれます。今は私が触れているので風属性を表す緑色になっています。属性によってそれぞれ色が異なるので一目見てわかるようになっています」
そう言ってミーシャ先生は水晶を手放した。落ちる! そう思った次の瞬間、水晶は空中に浮かんんで静止していた。水晶が透明になっている。
「「!?」」
「じゃあアンさんどうぞ」
「「いやいやちょっと」」
「? どうしました?」
「いやなんで水晶が浮いて……?」
「ああこれは風属性中級魔法の『浮遊』ですよ。対象を宙に浮かせることができます」
「「……」」
何でもアリだな……。
「それでは気を取り直して、アンさん触れてください」
「は、はい」
アンが恐る恐る触れる。水晶は青と白に輝いた。
「アンさんの適応属性は水属性と光属性ですね。二つあってしかも片方が特異属性というのは凄いですね」
「水と光か……」
「次はカイくん。お願いします」
「わかりました」
水晶に触れる。掌から"何か"が吸われる感覚。これが魔力だったのか。水晶が赤と紫に輝く。
「カイくんは炎と闇ですね。流石領主家。レベルが高いですね」
よかった……。アンが二つで俺だけ一つだけだったら悲しかった……。
「二人とも特異属性を適応属性に持つとは……。これは教え甲斐がありますね……」
「ミーシャ先生?」
「いや。何でもないですよ」
いや何か企んでるでしょ。ボソッと呟かないでよ。
「では次に、使用することができる属性を調べたいと思います。基本的にこれで調べて判定された属性しか使用することができません。判定はこれを使います」
そう言ってミーシャ先生は先程とは別の水晶を取り出した。また水晶かよ。水晶便利すぎでしょ。ミーシャ先生が再び水晶を宙に浮かべる。
「ではアンさん。触れてください」
「はい」
アンが触れる。水晶の色が変わる。今度は色が定まらずに変化し続けている。ミーシャ先生が水晶をじっと見つめる。
「ふむ。アンさんが使用できる属性は水・風・光、そして治癒ですね。特異属性が二つとは……。凄いですね」
はえー。アンはやっぱり凄いなあ。
「えへへー」
アンが照れたようにはにかむ。可愛いなあ、もう。
「次にカイくん。お願いします」
水晶に触れる。再び魔力が吸われる感覚。
「カイくんが使用できる属性は炎・雷・闇、そして治癒ですね。領主一族は流石ですね」
うーん。アンと被っているのは治癒属性だけか……。
「それにしても、面白いですね」
「「???」」
「二人で全属性を網羅しているなんて。あなた達双子ですよね? まるで二人で一人って感じですね」
「「二人で一人?」」
「……とにかく、二人の使用できる属性を知ることができました。次からは実技を練習していきます。今日の訓練……というより講義ですね。講義はこれで終わります」
ミーシャ先生が少し黙ったのが気になるな……。何かあるのかな?
「え? これで終わりですか? 全然時間たってないですけど……」
開始してからまだ十五分くらいしかたってない。時間的余裕は十分にあるのに。
「全然時間はあるんですけど、これらの水晶を使うと結構魔力を吸われるんですよね。私は鍛えているので大丈夫ですが、二人はまだ魔力の総量が少ないので疲労が知らず知らずのうちにたまっていると思いますよ? 魔力も足りないでしょうし」
そう言われて初めて、俺は体に疲れがたまっていることに気が付いた。ミーシャ先生の言った通りだ。
「わかりました」
「はい。ちゃんと休養をとるんですよ?」
「「はい!」」
今日は適応属性とか、魔力の存在を確認できたし、上出来かな?
「うちの子供たちはどうだ?」
「正直言って凄い才能だと思います」
ライトア領領主の屋敷、執務室でアラン・フィアリーとミーシャ・カルヴァールが話をしていた。
「具体的には?」
「個々の技量はもちろん高いのですが、あの二人組んだら化物になりますよ」
「組んだら、というのは連携したらということか?」
「いや、連携という感じじゃないんですよ。二人でワンセットというか、何というか。お互いがお互いに干渉しあって万全な状態になる感じな気がします。二人の全力がどの程度か計り知れないですね。怖いところが、二人が普通にしている時で常人よりも優れているところですね。万全な状態で魔法が放たれたらと思うと……楽しみでもあり不安でもありますね」
「そうか……。とにかく、これから子供達を頼むぞ」
「はい。では私はこれで失礼します」
ミーシャが出ていき一人になった部屋でアランは
「賢者様の言っていた異能とはこのことなのか……?」
と呟いた。
翌日から魔法の実技の訓練が始まった。最初にミーシャ先生に課題を出され、それをこなしていく、わからないところはその都度聞く、といった形式でやっていくらしい。
特異属性については聖ガルモンド学園に入ってから学べば十分だそうなので、俺とアンは基本属性の適応属性を中級まで、それ以外を低級を習得することが学園入学までの目標となった。
学園のクラス分け試験まであと約一ヶ月。できるところまで頑張ろう。
一日目は魔力の扱いから学ぶことになった。体内での魔力の流れをつかむことが魔法を使うことにおいて大事なのだとか。まあこれはある程度センスが関わってくるようなので自分で頑張るしかないのだが。
最初の方はやはり、全くと言ってもいいほど魔力を扱うことができず、体力も削られていき俺もアンも休憩することが多かった。しかしだんだんと扱える魔力量が増え、休憩する回数も減っていった。
まあ、ミーシャ先生が教えるの上手っていうのもあるんだけどね。本当にわかりやすい。躓いてるとこに的確なアドバイスくれるんだもん。そりゃ上達するわ。
四日もすると、俺もアンも体内での扱いが人並程度にまでになった。二人とも魔力の扱いがうまくなったので次の日から本格的に魔法の訓練をすることになった。
その日の夜。疲れた体を癒すために、俺はお風呂に入っていた。屋敷内のもので貴族家のものなので当然のように広い。風呂というよりも温泉って感じだね。そんな豪華なところを俺は独り占めにしていた。この屋敷はそもそも男の人数が少ないし、この時間帯は専属メイド意外のメイド、執事は忙しいからね。
俺は頭にタオルを乗せつつ浴槽のふちに頭を乗せてくつろいでいた。
疲労による眠気とお風呂の暖かさによりボーッとしていると、脱衣所の方から足音が聞こえてきた。
(お父様かな? でも普段はもう少し遅い時間に入ってるよな……)
そんなことを朦朧とした頭で考えていた俺だったが、入ってきた人物を見て俺の頭は一気に覚醒した。
「失礼します」
「!?」
入ってきたのはメリーだった。裸身にタオルを巻いただけの格好で入口のところに立っている。
「ちょっ、メリー。ここ男湯だよ!?」
「ええ、知っています」
「じゃあなんで?」
「カイ様のお背中を流しに来たのです」
「いや、一回洗ったよ」
「遠慮なさらず」
遠慮するわ! 普通、背中洗ってもらうとかないでしょ!
「そもそもなんで裸にタオル巻いただけなの……」
「別に見せても減るものじゃないですし、カイ様になら見てもらっても全然構いませんので」
「えぇ……」
普段はそれなりに布の量が多いメイド服を着ているのに今は布一枚なのだ。しかもメリーは出るところ出ててスタイルいいし……。タオル一枚だから体のラインが丸わかりで……。直視できない……。
「別に背中流してもらう必要ないんだけど……」
「いいじゃないですか」
メリーの勢いに流されるがまま、俺は背中を流してもらうことになってしまった。浴槽から出るとき、頭に乗せていたタオルを腰に巻く。……見えてないよね?
椅子に座ってメリーに背を向ける。メリーが石鹸をつけたタオルで背中を洗ってくれる。
うん。力加減も上手で気持ちいい。メリーは手際が良く、すぐに洗い終えた。
じゃあこれで終わりか、と思って椅子を立とうとすると、
「!?」
タオルとは別の感触が。
「カイ様。まだ終わってはいませんよ」
「いやもう十分だよ。しかもなんでよりにもよって手で洗おうとするかな!?」
「駄目……ですか?」
「……」
改めて椅子に座りなおす。
メリーさんの可愛い顔には勝てませんでした……。
「じゃあ続けますね」
背中を掌で洗われる機会が無いからなんか変な感じ。それにしてもメリーの掌ちっちゃいな。指が細くて柔らかいし、所謂女の子の手って感じだなあ。
「ふふふ……。これがカイ様の背中……。大きくて筋肉質で……。ずっと触っていたい……」
ちょっ、メリー。俺の背中で指をもぞもぞさせながら変なこと呟かないで。しかも手つきがいやらしいし……。
「うふふふふふふ……」
「!?」
怖い! 怖いよメリーさん! その笑い方はあなたに似合わないよ!
「あ。後ろ終わりましたね」
さっきまでの不敵な笑みはどこへやら、いたって平然としたメリーがそう告げた。どうやら背中を洗い終えてくれたらしい。丁寧に洗ってくれたからありがたかったな。
「じゃあ次は前ですね」
むぎゅっ
「!?」
柔い。背中に押し付けられる双丘の感触。
「ちょっ、マリー。離れて。しかも前を洗う必要ないでしょ」
「あります」
「ええ……」
それにしてもヤバい。背中の神経が鋭敏になってる……。うわっ。背中に押し付けられているものが変形して……。ちょっと離れてほしい……。
「……」
さわさわ さわさわ
メリーさん。相変わらず手つきがいやらしい……。まあ体を洗ってくれるのはありがたいからとやかく言うのはおかしいんだけどね。
「カイ様……」
「ん? どうしたの?」
いつになくメリーの声が暗い気がする。さっきまでのテンションはどうした?
「私って……そんなに魅力無いですか?」
「ぶふっ」
あまりの質問に吹き出してしまった。
「え? なんで?」
「だって全然手を出してくれないじゃないですか!」
…………は?
「この一ヶ月、寝るときに抱きついたり、好きって言ったり、今だってボディタッチしたり胸押し付けたり……。慣れないことしてたんですよ? なのになにもされないなんて……。てっきり私に魅力がないのかと……」
「ええ……」
そういうこと!? え? 手を出してほしかったってこと? なんか予想の斜め上を行ったぞ……。
「メリーには十分に魅力があると思うよ。少なくとも俺はメリーのことを魅力的で可愛い女の子だと思ってるし、好きだよ」
「だったら」
「でも、その"好き"は友達とか家族に対する"好き"、親愛の情が大半なんだと思う。もちろんメリーのことを異性として見ている自分がいると思う。俺はこの生活の中でメリーとも結婚するのも視野に入れてもいいんじゃないかって思い始めた。でも俺にはアンがいるし、アンを裏切ることはできない。メリーがずっと言っている結婚というのは難しいんじゃないかな。そもそもアンが認めないだろうしね」
「そう……ですか……」
半ば振ってしまった感じだけど、なんだかんだ言ってメリーのことは放っておけないからね。
「……じゃあ私はカイ様とはずっといられないのですか? 私は邪魔でしたか?」
「邪魔なわけないじゃん。しかもメリーには離れてほしくないよ」
「……え? でも……」
「本当に虫のいい話だし自分勝手だと思うんだけど、メリーにはずっと俺の専属メイドとしていてほしいんだ。それこそ一生、一緒に……ね」
我ながら屑みたいな発言してるな。チキンっていうのかな? メリーと結婚できないかもなのに一緒にいてほしいとか。
「……」
ポロポロ
「え? ちょっとどうして泣くの?」
「だって……嬉しくて……。カイ様が私のことを必要としてくれて……」
「そっか……」
「それにしても……さっきの言葉、プロポーズみたいでしたね」
「え、あ、まあ、うん、そうだね……」
メリーが後ろから抱きついてくる。さっきまでの胸を押し付けるようなものではなく、優しく愛に満ちた抱擁だ。
「私は一生カイ様と一緒ですから」
「……うん。ありがとう」
メリーと結婚するのは難しいのに一緒にいたいっていうこの気持ちは欲張りなのかな……?
「あ、カイ様。石鹸落とすの忘れてました」
「あ、そういえば。じゃあ最後までお願いするよ」
「はい」
ここまで本人に言っちゃったんだから、メリーのことは守ってやらないとなあ。
(はぁ……。カイ様の背中大きかったなぁ)
カイの体を洗い終えた数十分後。メリーは一人夜空を見上げ考え事をしていた。
(もう……カイ様ったら。私と結婚するのは難しいとか言いながら、一生一緒にいてほしいとか、わがままなんだから……嬉しいけど……)
いたって冷静の様相を装っているが、頭の中はカイのことでいっぱいで、興奮しっぱなしである。
(でもカイ様は私のこと、多少好意を抱いている一人の淫魔族の専属メイドっていう認識しかしてないんだろうな……。"あのこと"を知ったら、今度こそ離れていってしまうかもな……)
カイは離れていかないだろうけど、やはり不安。そんな面持ちでメリーは星を見つめていた。
そして十数日がたち、俺とアンはそれぞれの適応属性のうち、基本属性の中級魔法まで使えるようになっていた。
そんなある日。
俺とアンは並んで黙々と魔法の訓練をしていた。
適応属性ではない属性の魔法を訓練しているのでやはり魔力の消費が激しい。
魔力が少なくなってきたことを感じた俺は、休憩することにした。
「俺休憩するけど、アンは休憩しなくて大丈夫か?」
「うん。私は大丈夫」
顔が若干青い気もするけど、アンが大丈夫って言うならそうなのだろう。
訓練場の端に向かい、ミーシャ先生の近くに座る。メリーがお茶を持ってきてくれた。
「ありがとう」
「いえ。お構いなく」
うん。美味しい。メリーの淹れるお茶はやっぱり美味しいよ。
「そういえば、ミーシャ先生」
「うん? どうした、カイくん」
「ミーシャ先生ってメリーのこと見てもさほど驚いてませんでしたね」
「ああ。カルヴァール家は伯爵家だから人間のメイドの数が少ないんですよね。だから魔族のメイドがそれなりにいたんですよ」
「あー。なるほど。どうりで」
どうりで慣れてるわけだ。
「ところでカイくん」
「何でしょう」
「アンさんは大丈夫なのかい?」
「本人は大丈夫だと言っていましたが……」
その時アンの目が焦点を失った。俺はアンのことをずっと見ていたから、いち早くそれに気が付くことができた。俺は駆け出し、咄嗟にアンの体を受け止めた。
「アン!」
「あ……れ? カイ……? 私……」
「軽い魔力欠乏症だね」
ミーシャ先生も駆け寄ってきた。
「とりあえず休むぞ」
「え、でも……」
「倒れかけたんだからおとなしくしてないと」
「いや……ちょっと……この体勢は……恥ずかしいから」
「問答無用」
俺はアンに、所謂お姫様抱っこというものをしている。普通なら恥ずかしいのだろうが、今はそんな羞恥心に構っていられない。俺はアンの彼女の部屋に連れて行くために歩き出した。
「やあー。恥ずかしいからぁ」
うるさいです。ちょっ、おとなしくしてて。落ちる、落ちるってば!
俺はアンを彼女の部屋へと連れて行った。
「入るぞー」
「おー」
気のない返事だな。まあ弱ってるしな。
女の子の部屋に入ったことがほとんどないので珍しくて見回してしまう、
「ちょっと……恥ずかしいからあんまりジロジロ見ないで」
「ご、ごめん……」
アンをベッドに寝かせる。
「ありがとね」
「いや、気にすんな」
ベッドの脇に椅子を持ってきて座る。
「こういう状況、久しぶりだね」
「そうだな」
日本にいた時。俺が幼い頃アン、いや杏は病弱でよく風邪を引いていた。そのたびに俺はお見舞いに行ってこうしてベッドの脇に座ったものだ。
「なんか懐かしいね」
「小さい頃お前よく体壊してたもんな」
「まあ虚弱体質だったもんね」
「中学からだったか? ずいぶんと丈夫になったのは」
「そうだね。カイに振り回されてたから」
「そりゃ悪かったよ」
「別に責めてないんだけどね」
数瞬の間、沈黙が流れる。
「お母さん元気かな……」
「元気だろ。まあ俺もお前も突然いなくなって悲しんでいるだろうけど」
「それはそっか」
「それよりアン。もう休め。魔力も少ないだろうから」
「そうだね。お言葉に甘えて」
アンに布団をかぶせる。
「あの……」
「ん? どうした?」
「一つお願いがあるんだけど……」
「何?」
アンは口元まで布団を引き上げて、
「昔みたいに……眠るまで手、握って?」
……確かに杏が風邪をひいたときは、眠れないからと言って手を握ってあげたことはあったけど……。
まあ別に断る必要もないし、お願いするときのアンが可愛かったので、手を握ってあげることにした。
布団の中に手を入れる。布団の中でアンの手がもぞもぞと動き、おずおずと手を握ってきた。俺も握り返す。アンの手もメリーと一緒で柔らかく、細い。華奢だ。
アンが少しでも楽になるなら治癒魔法でもかけるか。えっと……。
平民時代のことを思いだす。平民の頃は治癒魔法しか発動してなかったからね。前は意識を失ってしまっていたけど、魔力の扱いがそれなりにうまくなり、総量も増えた今なら倒れることはないだろう。
アンの体に魔力を流し込むイメージで魔力を動かす。
すると、今までは魔力が出ていくだけだったのに、今回は何故か魔力が入ってくる感覚がする。
これは……アンの魔力か?
俺とアンの魔力が混ざり合う感覚がする。なんというか、魔力が繋がるっていうのかな?
『やっぱりカイと触れていると安心するなぁ……』
「!?」
安心の感情と共に、そんな言葉が頭に響く。
(この声は……アン?)
そう。頭に響いている声はアンのものだ。
(なんでアンの声が……?)
アンを見る。寝息が聞こえる。完全に寝ている。
俺とアンは手を繋いでいる。手を繋いで……魔力を繋いでいる……? 魔力? 魔力を繋ぐと、その人の感情とかがわかるのか? しかもなんか、魔力の強さが高まっているような……。もしそうなら……うん。やってみる価値はある。今度アンに相談してみよう。
魔力を流すのをやめる。魔力の繋がりも切れ、高まっていた魔力の強さも元に戻った。
とにかく、今はゆっくり休めよ、アン。
目が覚めると私はベッドの上にいた。
「そうだ……。私、魔力が少なくなって……」
カイが運んでくれたんだった。……お姫様抱っこで。恥ずかしいいよ……。カイの顔見れないかも。
お腹に重みを感じる。カイが突っ伏して眠っていた。
あ。私の手とカイの手繋がったままだ。そういえば寝る前に握ってほしいとお願いした気が……。今更ながら恥ずかしい……。本格的にカイの顔を見られなくなる可能性が……。
きっと私が握ったままで離さなかったのと、私を安心させるためにずっといてくれたんだろう。それで疲れて寝てしまったのかな?
「もう。こんなに気持ちよさそうに寝て……。優しいんだから……。そういうところが……好きなんだぞ」
頭を撫でられる感覚。次第に目が覚めていく。
「起きた?」
アンが頭を撫でていた。アンが心配で看てたんだけど……いつの間にか眠ってしまっていたようだ。それにしてもアンさん頭撫ですぎじゃない? 恥ずかしいよ。悪い気はしないから言わないけど。
「私が手を握ってたからどっか行くにも行けなかったんだよね。ごめんね」
「いや気にすんな」
むしろ握っていられて嬉しかったです。
「アン、体はもう大丈夫なのか?」
「うん。カイが看ててくれたからね。ずいぶんとよくなったよ」
「ならよかった」
回復したようだ。よかった。
「そうだ、アン。相談したいことがあるんだけど」
「? どうしたの?」
「さっきな……」
さっき、アンと魔力を繋いだときのことを話した。感情が分かったこと。アンの声が頭の中で響いたこと。それらを伝えるとアンは耳まで真っ赤になってしまった。
「え、なんで知ってるの……? 実際に思ってたことじゃん……。でもでも、私がカイのことを好きなのはカイは知ってるわけだし……。ああ、でも恥ずかしいよぅ……」
アンが小声で呟いている。元々赤かった顔がさらに赤くなった。
「アン、一旦落ち着け」
未だに慌てているアンを宥めようとする。しかし、声は届いていないようだ。よほど感情を知られたのが恥ずかしかったのだろう。
はあ……。この方法は使いたくなかったんだけど……。
「ほら、アン。落ち着け。な?」
なでなで
「あう……」
恥ずかしいから滅多にやらないけど、今はアンを落ち着けるのが先決だから仕方ない。
アンの頭を撫でる。アンは驚きつつも次第に落ち着いていった。
「落ち着いたか?」
「うん……」
落ち着いたようだし、本題に戻るか。
「魔力を繋いだ時のことについて、いくつか仮説を立ててみたんだよね」
「仮説?」
「うん。ちょっとしたことだけどね」
「どんなの?」
「一つ目は魔力を繋いだり、感情を知るのはアンの方からでもできるんじゃないかってこと。二つ目は魔力を繋いでいる状態で魔法を使うと、威力が上がるんじゃないかってこと。この二つ」
「ふむふむ」
「確かめるためにアンにも手伝ってほしいんだけど……いいかな?」
「もちろん」
アンが協力してくれるようだし、早速検証やってみるか。
「じゃあ早速だけど、大丈夫?」
「うん」
「じゃあ……」
アンに手を差し伸べる。
「?」
「ほら、魔力繋ぐには手を握らないと」
「あ……うん……」
恥ずかしがらないでよこっちまで恥ずかしくなってくるから。
アンの手を握る。
「まずは俺が魔力を繋いでみせるから、感覚を覚えて」
「うん」
アンと繋いでる手に魔力を流して、魔力を繋ぐ。やはり、その部分の魔力が強まっている気がする。
「なんとなくわかったよ」
「じゃあ次はアンがやってみて」
「うん」
繋がっていた魔力を一旦切る。そして、再び魔力が繋がった。アンから魔力を繋ぐこともできるようだ。
『私もできた!』
頭の中でアンの声がする。
これって、流す魔力の量を増やしたらどうなるんだろう。
俺の方からも魔力を流してみる。意図的に多めに。
すると、アンからの感情、いや思念と言った方がいいかな。それが今までよりもはっきりと伝わってきた。握っている手に集まっている魔力もより一層強いものになった。
慌てて手を離し、魔力を遮断する。
びっくりしたあ。結構強かったぞ……。
アンも驚いている。
「カイ、何したの?」
「アンから繋いでいる状況下で、俺の方から意図的に魔力を流してみたんだ」
「それであんなに強い魔力になるんだね……」
アンも魔力の強さを感じたようだ。
「ところで俺の感情は伝わったの?」
「うん。それはもうばっちり。心の声がダダ漏れだったよ」
「まじか」
恥ずかしいな。さっきアンがあんなに慌ててたのも理解できるわ。
「この様子だと魔力を繋いだまま魔法を使うと、威力上がりそうだね」
「そうだね」
「明日にでも試してみようか」
「うん」
「このことはみんなには内緒だよ?」
「うん」
俺とアンは微笑みあった。
「ちょっと疲れちゃった」
「無理させたか? ごめんな。さっき倒れたっていうのに」
「ううん。大丈夫だよ。でも……」
「でも?」
アンが目線とジェスチャーでベッドに座るように促してくる。なんだろう。その通りにベッドに腰掛ける。背中に重みが。アンが背後から抱きついてきた。
「少しだけ……こうさせて」
「うん……」
アンの柔らかい体が押し付けられて……。嬉し恥ずかしな感触。俺生まれ変わってよかった……。
数分間、アンの部屋に沈黙が訪れた。お互いに相手の体温を感じられる。それだけで幸せだった。
と、その時
「カイ様、そろそろ夕食のおじか……」
メリーが俺を呼びに来て、そのまま固まった。
「…………見せつけてるんですね、アン様。そうですかそうですか。喧嘩しますか? いくら仕えている方であってもカイ様が関わっているなら容赦はしません」
「別に容赦なんていらないし。そもそも喧嘩するの? 血の気が多いね」
バチバチ
あ、これヤバいやつだ。
「ちょっとちょっと。待てって。アンもメリーも険悪なムードにならないでよ」
「……仕方ないですね」
「むう……。しょうがないなあ。離れるよ……」
よかった。なんとか……。
「カイ様行きますよ」
「あ、うん」
メリーが歩き出したので慌てて俺も後をついていく。
「あとで、さっきのこと、お話聞かせてくださいね?」
ええ……。迫力が凄いんだけど……。
翌日。訓練場で俺とアンはいつも通り魔法の訓練をしていた。習得できそうで、あと一歩のところで及ばない。そんな状況が続いていた。
ということなので気晴らしにでも、例の"仮説"の検証をしてみよう。
「アン。仮説の検証したいんだけど、今いい?」
「ちょっと待ってね。あと少しでできそうな気が……」
アンが終わるまで、横で見ることにしよう。アンは手元に魔力を集めている。風属性初級魔法の『烈風』を完成させるために頑張っている。しかし、
「ああ……」
今回も完成しなかったようだ。
「うーん。無理だったかあ・・・・・。カイ! 終わったよー」
「うん。じゃあほら」
「うん!」
手を繋ぐ。そして魔力も繋ぐ。魔力が高まっていく。
『カイと手を繋げた~』
魔力を繋げるときにアンの機嫌がやけによかった理由がなんとなくわかった……。
「じゃあ魔力を流すよ?」
「うん。私も流せばいいのかな?」
「そうだね」
二人で魔力を流す。繋いでいる手に魔力が集まっていき、強まっていく。
「じゃあ使うね」
集まっていた魔力を繋いでいない方の手に移動させる。イメージは両手を
繋いでいない方の手に魔力が集まっていく。
(凄い……。こんなに強い魔力が……)
普段からは考えられないほどの魔力が集まっている。これなら魔力切れの心配はなさそうだな。まずはいつもと同じくらいの魔力で魔法を使う。使うのは簡単に行使できる炎属性初級魔法、『
ドゴォン!
「「「!?」」」
驚いた。普通の『火弾』なら、地面を抉るくらいなのに、今回は小規模な爆発が起きた……。
俺だけでなくアンや遠くで見ていたミーシャ先生も驚いている。
「この威力……」
初級魔法を撃ったはずなのに……。中級魔法かそれ以上の威力だぞ……。
「アン。もう一回。今度はもうちょっと魔力を込めてみる」
「え? あ、うん。わかった」
再び魔力を込める。『火弾』を地面に向けて撃つ。今度は込める魔力を増やして。
ドカァァン!
さっきよりも大きい爆発が起きた。
「!?」
ミーシャ先生がまた驚いている。俺とアンはさっきのでなんとなく予想できていたので、さほど驚かなかった。
うん。やりすぎた。これは簡単に人に教えられるものじゃないな。でも切り札にもなりえるな……。
ミーシャ先生がこちらへと駆けてくる。
「アン。これはまじで秘密にした方がいいかも」
「やっぱりそうだよね。うん、誰にも言わない。先生には?」
「念のためにミーシャ先生にも言わないほうがいいと思う」
「おっけー」
「二人とも、大丈夫ですか? それにしてもさっきの爆発は何ですか?」
「え? 魔法使っただけですよ?」
「いやいや、威力がおかしいでしょう。上級魔法並ですよ? あなたたちまだ中級魔法までしか使えないですよね? 教えてください!」
「えっと……秘密です」
「ええー。お願いですから教えてくださいよ! 気になりすぎて寝られなくなっちゃうじゃないですか!」
ミーシャ先生、魔法バカすぎでしょ。
「教えてよぉぉぉ」
ミーシャ先生の叫び声が訓練場に響き渡った。
そして翌日。驚いたことに俺もアンも急激に魔力量と操作能力が上昇していた。普段と違うことは昨日アンと魔力を繋いだことだけど……。魔力を繋ぐと上達するのか? どうなんだろ。
上達したこともあって、俺もアンも簡単に課題をクリアしてしまった。
「できたー」
俺から遅れて数分。アンも目標を達成できた。
「二人とも当初の目標をクリアできたようですね。よかったです」
ミーシャ先生が言う。
「私も教えた甲斐があったというものです」
「ありがとうございました」
「先生。ありがとうございました」
こうしてミーシャ先生指導の訓練が終了した。
聖ガルモンド学園のクラス分け試験まであと七日。
そしてミーシャ先生との別れの日。
ミーシャ先生が迎えの馬車に乗るまで俺とアンはミーシャ先生と会話していた。
「ミーシャ先生、今までありがとうございました」
「ひっく……あり……ありがとうございました……」
アン。泣きすぎ。
「二人ともずいぶんと上達しましたからね。聖ガルモンド学園でも十分上位に入れますよ」
「はい。頑張ります」
「じゃあそろそろ行きますね」
「はい」
「はい……」
「アンさん。泣かないでください。またいつか会えますよ。ほら、いつもの可愛い笑顔を見せてください」
ミーシャ先生がアンの頭に手を乗せてそう言う。アンが涙を拭う。
「はい!」
笑顔になったアンが返事をする。
「カイくんも元気でいてくださいね」
「はい。先生もお体には気を付けてください」
「……カイくん」
「何でしょう?」
「あの日の爆発について教えてくれませんか?」
「秘密です!」
あの爆発について毎日聞かれたなあ……。それももう今日で終わりなのか……。
「はあ……。気になりますが、今はいいです。いつか教えてくださいね」
「まあ、その機会があれば」
「約束ですからね! そろそろ行かないと……。二人とも今までありがとうございました。二人は私の自慢の生徒ですよ」
「ありがとうございました」
「お元気で」
ミーシャ先生が馬車に乗り込む。そして遠ざかっていく。ミーシャ先生のおかげで魔法の腕だけではなく人間としても成長できた気がする。ミーシャ先生には感謝しかないや。
アンはミーシャ先生のことを尊敬していたし、それも合わさって余計に寂しそうだ。
アンの手を取る。アンは一瞬驚いたもののすぐに握り返してきた。そして俺の肩に頭を預けてきた。
ミーシャ先生のためにも試験、頑張らないとな。
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