第06話:時を戻し続ける少女
気が遠くなるほどの時間を繰り返す最中、
仲間がいたからこそ今まで戦い続けてこられた反面、仲間がいたからこそ傷付いた場面もある。結果、今は時恵と
今現在、屋上で急速にその距離を縮めているであろう2人。
何度繰り返しても迫り来る隕石をどうする事も出来ず、世界を救う糸口さえ見つけられない絶望的なループ体験。そんな中での恋人の喪失は耐えられるものではない。
そんな中、時恵はその身に何が起ころうがループを離脱する事など出来ない。時恵のループ離脱は、イコール世界の終わりを意味するからだ。
恐竜を絶滅させたであろう巨大な隕石。その規模の隕石がこの街に向かって落ちて来る。普通、隕石が地球に向かって来ているのであれば、地球に到達するかなり前の段階でその隕石を発見しているはずだ。
しかし、その隕石は突如出現する。何の兆候もなく、降って沸いたように。
何度もループを経験する中で、時恵達は気付いた。これは自分達と同じく超能力に覚醒した誰かの仕業ではないか、と。
夢子と渡、そして
しかし時恵と
そんな能力が実際に存在するのだから、宇宙のどこかから隕石を呼び出してしまうような超能力が存在しても不思議ではない。
(心音、気を悪くしてなければいいけど……)
何度も共にループを経験した仲間、心音。時恵は心音の超能力を知っているからこそ、今回は仲間へ引き入れず、逆に突き放した。
心音の力を借りずに現状の打開を図る事が出来ないだろうかと、渡と2人で話し合った結果だ。
(まだかなぁ、早く帰って来て……)
今はただ、ここにいない
そしてまた、悲劇が時恵に降り掛かろうとしていた。
一度振られている相手、
何故ここまでショックを受けないのか、逆にそちらの方が気になってしまい、授業が終わり放課後になるまでぼーっとし続けていた。
(確かに私は胸は大きくないし、外見は中学生と間違われるけど……、でもサラサラで自然な茶色の髪の毛がいいねって、顔はお人形さんみたいだねって言われるし! 黙っていればって一言が余計だけど)
もうすでにクラスメイト達は帰っており、残っているのは記代子のみ。
人の記憶を書き換える超能力。
書き換えるからには、一度相手の記憶を読み込まなければならない。
自身の右手で相手の額に手を当て、相手の記憶を読み込む。
読み込んだ記憶を自らの脳内で書き換えてから、相手に返す。
能力が発現してから未だ試した事はないが、これを使えば透でなくても、例えば学校で一番カッコいいと言われている
瞬には学校で一番可愛いと言われている女の子、
瞬は私に告白をしてくれた。
十和子は誰とも付き合っていなかった。
そのように記憶を書き換えて、そして飽きたらまた別な男の子の記憶を書き換えて……。
心音とのやり取りなど忘れたかのように、自身の超能力に魅入られたように、記代子はこれからの日々を思い浮かべて心を躍らせる。
全ての授業が終了した後。記代子がそんな不穏な事を考えてながら廊下を歩いていると、見覚えのある後ろ姿を見つけた。
あれは瞬と同じくらい人気がある男の子、
しかし、記代子は渡に特定の彼女がいるという噂を聞いた事がない。人の彼氏を奪う事も出来るが、彼女の記憶をも書き換えなければならないのは手間だ。
元から相手のいない男子を狙う方が、お手軽なのではないか……。
(よしっ、渡君を今から私の彼氏にしよう。そうしよう)
渡を練習台にすると決め、記代子は足音を消して渡に着いて行く。
渡は教室の廊下側に歩み寄り、開いている窓に両肘を着き、教室内の誰かに声を掛けた様子。
「やっぱり何の手掛かりもなかったよ」
(誰かと話してる? どうしよう、渡君は止めておこうか)
いや、話し相手からすれば何が起こったのか理解出来ないはずだ。
見られていたとしても、まさか人の記憶を書き換えたのだと判断出来るはずがない。
万が一面倒な事になれば、その時は多少手間ではあるが話し相手の記憶も書き換えればいい。
そう判断し、ゆっくりと記代子が渡の背中に近付く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます