転生魔王のジュリエット

久慈マサムネ/ファンタジア文庫

前文


遺跡より発掘されたグローヴ・ストーンの碑文は語る。


 ――かつて旧支配者あり。

 それすなわち、この世界を支配せし魔族。

 他の生きとし生けるもの、全て弱きものなり。

 中でも人は極めて弱きもの。その使命は、労働と食料となる他なし。

 その報酬は、絶望と恐怖なり。

 魔族の繁栄と共に人も増えゆき、その数だけ悲劇が生まれるなり。

 数多増え、消費される人の中に、剣を取る者あり。

 人と、神と、獣と、剣が魔族に反旗をひるがえすこと幾千回。

 ブラッドウォールの戦いにて、ついに勝利を手にするなり。

 魔族は北方へ去り、旧支配者はその身を二つに分かたれ、魂を奪われん。

 それより後、地上は人の支配する土地となり。

 ――されど、

 旧支配者は死なず。

 二身、一つになりしとき、地上に降臨す。

 後世の者に告ぐ。

 全てを投げ打ち、復活を阻止すべし。

 旧支配者にして魔王。

 

 ――ジュリエットの復活を。

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