『人間の罪名』中篇小説

九頭龍一鬼(くずりゅう かずき)

第1話

 わたしのしようがいは終わった。

 いますべての物語を書こうとおもう。

 わたしは暗黒から誕生した。めいもうたる宇宙のかたすみにて誕生したわたしのたましいけんらんたるほうおうのようなはくいろたましいと最初にった。ぜんもうおきのようであった。もうまいなるわらであったわたしのたましいれいをほこるおききようどうされながらきよおくりよをはじめた。わたしはおきとともにくらやみさまった。天地かいびやくとみまがうようなこんとんたる真空をまいしんしてゆき諸行無常のようにめいめつするさんらんたる星雲をばくしんしていった。わたしは太陽系へととうたつした。ゆうすいとしててんしている天体のかたすみにはめつの神のなみだにもまがうすい色のわくせいがきらめいていた。ばんこくの生命がしようめつしている地球であった。わたしは地球のぜんぼうもくげきした。こうまいなるおきゆうどうされたわたしはきゆうの天空をしようしながら全人類の悲劇をかんした。ほうはいたる戦争にほんろうされてあんたんたる戦場にたおれてゆく人間の絶望を。れいなる文明のかたすみきよまんの群像のなかにまいぼつしてゆく青年のどくを。まんえんする大地で最愛の家族とさえかいこうできずにじやくめつしてゆくゆううつを。もくなるおきはついに物語った。そうなるわくせいを熟視しているわたしにりゆうりようたるしおさいのような美声で世界の真実をふうした。いわく平和のために戦争がぼつぱつし戦争によって平和が誕生すると。全人類とかいこうしたものは全人類とけつべつする運命にあると。誕生するがゆゑにしゆうえんゆううつしゆうえんがあるがゆゑに誕生を祝福されると。こうまいなるおきじんもんした。あんたんたる世界の悲劇を熟知したわたしにぜんたるがんぼうのまま運命の決断をしよくぼうした。いわく絶望しない人間などいないと。どくではない人生などないと。悲劇のほかに運命などないと。それでもおまえは生まれたいかと。わたしはちゆうちよした。れいろうたる月面へとりたわたしはこうまいなるおきとともに地球をはるかしながらちんもくした。これほどれいなるわくせいはないはずだった。満天のぼしのようにめいめつする生命にとうすいしたわたしははくだくしたおきひとみめながらぜんとして決断をくだした。絶望もしたいと。どくでもありたいと。悲劇であってもいいと。ぼくは生まれたいと。こうまいなるおきは物語った。こんとんたる二〇世紀のしゆうえんにおいてけんをにぎる合衆国はテキサス州へとわたしがきようどうされることを。なる母親とたいとうたる父親のもとにとくの愛をそそがれながらわたしがうぶごえをあげることを。愛すべきもののもとにしか誕生できないことを。げんしゆくなる運命をりようしようしたわたしはぜんたるがんぼうおきへと最後に疑問をなげかけた。あなたがすべてを造るのですかと。あなたはだれが造ったのですかと。こうまいなるおきかんとしてちんもくをつづけた。

 はくだくしたおきひとみさんらんたるなみだめいめつした。

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