理不尽な世界を“権力”で踏ん張る~戴冠式には間に合うか~

あがしおんのざき

序章 悪魔の産声

プロローグ 仕組まれた“ゲーム”

 「“異世界転移”で自分は変われる。もっと輝けると思ってたんだろ?」


 俺の額に突き付けられた“銃口”から伝わる金属独特の生々しい冷たさが、これが現実だと痛感させる。…これは、夢じゃないのか?


 「ざーんねん。どうやら、輝くのはこちらだったようだ」


 「っ…を貰っただけで調子に乗るな」


 銃口が額にめり込んでいく。このピリピリとした痛みが、緊張と相まって拍動を加速させる。


 ――どこで計画が狂った…?


 必死に記憶を探る。が、見つからない。完璧、すべて順調だったはずなのに。


 「いいスキルを貰っただけ…か。しかし前の世界ではそういう者が強者になる“作品”は沢山あったじゃないか」


 「ふざけるな!…上げ膳据え膳の“ヒーロー”なんて見てて誰が面白いんだ!」


 俺は声を荒げる。が、ヤツは怯むどころか不気味な笑みを浮かべ、高笑いを始める。


 「あは、アハハハハハ!」


 笑い声が狭いコンクリートの部屋に木霊する。


 「――面白いよ“当人”は…だけどね」


 「…」


 「見てても面白くもないだろうけど、こちらはとても楽しませてもらってる。“最強”、“チートスキル”…いい響きだ!」


 「何がいい響きだよ…」


 俺は…俺はここまで自らの力で頑張ってきた。スキルに踊らされて自分を見失うことはなかったはずだ。なのに…なのに、なぜこんなあっさりと欺かれなければならないのか。


 ――俺は、何故努力したのか。何故恥を捨てたのか。何故すべてを捨てたのに何も手に入れられなかったのか。


 徐々に力の入るヤツの人差し指が、もうこれ以上考えても無意味だということを無慈悲に告げる。


 「さあ、そろそろ消えてもらおうか…神崎?」


 ヤツはにやりと笑う。


 「――このゲームは最初から“仕組まれて”いたんだよ」


 「最初から…という訳か」


 馬鹿な…そんなの信じられるはずがないじゃないか。


 「まさか“自分の実力でのし上がった”なーんて思ってたのかな?」


 「…」


 「そう、上げ膳据え膳はだったんだよ」


 ヤツは銃のハンマーを下ろした。


 「さあ、ゲームは終わりだ…」



 


 


 



 


 

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