白《はく》いきに願う春

夏艸 春賀

声劇台本

《諸注意》

※なるべくなら性別変更不可。

※ツイキャス等で声劇で演じる場合、連絡は要りません。

※金銭が発生する場合は必ず連絡をお願いします。

※作者名【夏艸なつくさ春賀はるか】とタイトルとURLの記載をお願いします。

※録画・公開OK、無断転載を禁止。

※雰囲気を壊さない程度のアドリブ可能。

※所要時間30分。男2:女2の四人台本、もしくは男3:女2の五人台本です。



《役紹介》


金代 理沙(カナシロ リサ)

主人公、女性、18歳

152cm、黙っていれば美人な元気な子

焦げ茶セミロング猫っ毛、猫目




湯岐 太一(ユギ タイチ)

男性、22歳

178cm、インテリ気取り

黒髪ショート

黒縁眼鏡着用時、崩した敬語を使う



琴宮 鈴音(コトミヤ スズネ)

女性、23歳、148cm

兄の恋人



金代 倫(カナシロ リン)

男性、25歳、175cm

理沙の兄



槌谷 弦樹(ツチヤ ゲンキ)

男性、22歳、164cm

ワンコ系、太一の友人




《配役表・四人》

理沙(女):

太一(男):

鈴音(女):

倫+弦樹(男):



《配役表・五人》

理沙(女):

太一(男):

鈴音(女):

倫(男):

弦樹(男):






↓以下本編↓

────────────────────




理沙M

「私には好きな人がいる。年上で背も高くて、頭も良くて格好良くて優しい、私の兄。だけど、兄には恋人がいる。」



《間》



太一

「はい、残念でした」


理沙

「え、またですかぁ〜?」


太一

「ほら、ここから計算式が噛み合ってないでしょう?」


理沙

「……あ。ホントだ……」


太一

「まぁ、少しずつ良くなってるので、次はこっちの問題。後こっちもやってみてください」


理沙

「は〜い……」


太一

「それが終わったら休憩にしましょうか。終わるまではずっと見ててあげますね」


理沙

「え〜? 休憩は嬉しい、けど……あの、あまり見ないでください。集中出来ないんで」


太一

「嫌です」


理沙

「うーわ、めっちゃ良い笑顔」


太一

「さー、早くやってくださいよー」


理沙

「う、分かった、分かりましたからぁ、顔! 近づけないでください!」


太一

「……くくっ、はいはい。それじゃあ頑張ってくださいね」


理沙

「は〜ぁ。先生って、ホンット良い性格してるよねぇ……」


太一

「何か言いましたか?」


理沙

「いいえ! なんでもありません!」


太一

「早くかないと、貴女の好きなチョコレートケーキ、食べちゃいますよー?」


理沙

「え!? やだ、それは困る! ちょっ……頑張ります!」


太一

「うーん、いつ見ても美味しそうなケーキですねぇ」



理沙M

「なんて事を感情もなく彼は言うと、母の持って来てくれたケーキをフォークで突付つつく素振りを見せる。 湯岐ゆぎ 太一たいち先生、彼は私の家庭教師。高校に上がってしばらくは兄に教えて貰っていたけれど、その兄もいなくなり、勉強をしないせいで成績が落ち始めたのをきっかけに、母が連れて来てくれたのだ。分かりやすく教えてくれるけれど少し意地が悪い。」



理沙

「……と、よし、終わりました! もう、食べ物で遊ばないでください!」


太一

「おや、早かったですねー。食べ損ねました」


理沙

「食べる気なんかないクセに……もー、つついたりしちゃダメじゃないですかぁ」


太一

「突付いてなんかいませんよ。……えーっと、はい、正解、お疲れ様。休憩にしましょう」


理沙

「やったね! それではー、イタダキマス!」


太一

「あー、食べる前に片付けないと汚れますよ」


理沙

「ん、はぁい」


太一

「もう食べてるんですか。……休憩とは言いましたが、そろそろ時間ですね。今日はここまでにしますか」


理沙

「(ケーキを頬張りながら) ん、んぇ、ホント?」


太一

「食べながら喋らないでください」


理沙

「んふふー(飲み込む)……と、ごめんなさい。いやー、終わりだと思うとケーキが格別に美味しい〜!」


太一

「(眼鏡を外し)……良く、そんな甘いもんが食えるよな……」


理沙

「お母さんのお手製ケーキはそんなに甘くはないんです〜、一口食べてみれば分かりますって……あ」


太一

「そうか……なら、一口」


理沙

「ちょっ……え?」


太一

「(理沙の頬に付いているクリームを舐め取る)……ん、無理。あっま」


理沙

「……な、……」


太一

「慌てて食ってんじゃねーよ全く…」


理沙

「な、あ……なん……」


太一

「ん? ……なんだよ、顔、真っ赤だぞ?」


理沙

「〜〜ッばかぁ!!」


太一

「くはは! そんじゃ、帰るとすっかね。また来週、な!」


理沙

「二度と来るなぁ!!」



《間》



【理沙、通話中】


理沙

「──……て事があったんですよぉ? なんなんですかね? 何がしたいのか全く……」


鈴音

『ふふふ。なんだかいいなぁ。その家庭教師さん、理沙りさちゃんが好きなんじゃないのかな?』


理沙

「嫌ですよ! 私にはちゃんと好きな人がいるんです!」


鈴音

『それはりんくんの事?』


理沙

「そうですよぉ! お兄ちゃんと先生は全く似てないし!……あ、と……ご、ごめんなさい」


鈴音

『ううん、謝らなくてもいいよ。……ごめんね?』


理沙

「……いえ。なんで、鈴音さんが謝るの……」


鈴音

『うん。大好きなお兄ちゃんを、取っちゃってごめんなさい』


理沙

「……」


鈴音

『でも、私凄く幸せなの。りんくんと恋人同士になれて、こうして一緒に過ごせるようになれて……』


理沙

「……今、も?」


鈴音

『うん、そうだよ。今も隣にいるよ? だって一緒に(暮らして)……』


理沙

「(遮って) 代わって!!」


鈴音

『えっ……うん。分かった。……りんくん、理沙りさちゃんが話したいって』


『話したい?……分かった。……はい、もしもし』


理沙

「…お兄ちゃん?」


『…ん。なに、理沙りさ


理沙

「お兄ちゃんー! もー、久しぶりじゃーん!」


『うん。……元気、してたか?』


理沙

「元気だよー。それより、お兄ちゃんたら全然連絡してくれないから、私寂しかったんだよ?」


『連絡……昨日、メールは、しただろ?』


理沙

「それだけじゃ足りないよー、やり取りだってしてなかったし!」


『そう、だったか?』


理沙

「そうだよぉ! 声だって聞きたかったし、顔だって見たいし! 今度お兄ちゃんだけでも遊びに来てよー、お母さんも喜ぶと思うよ!」


『……あぁ、悪かった。気が付かなくて』


理沙

「んーもー、仕方ないなー。お兄ちゃんだから許しちゃう!」


『ん。……話はそれだけ?』


理沙

「え、いや、……うん……」


『じゃあ鈴音すずねに代わる。……はい』


理沙

「え!? ちょ……」


鈴音

『ん? もういいの?』


『……あぁ……もうすぐ夕飯だし』


鈴音

『そうだけど、もう少し出来上がるのに時間あるから、ゆっくり話しててもいいよ? 久しぶりなんじゃ──……』


理沙

「……ッ!!」



理沙M

「私はそこまで聞いて通話を終わらせた。すぐに鈴音すずねさんからメールは来たけれど返す気にはなれず、携帯の電源を落としてベッドに寝転んだ。

鈴音さんは兄の恋人。可愛くて優しくて、どこか頼りなさそうに見えるけど、しっかり気持ちを伝える事の出来る人。付き合い始めたって聞いた時には物凄く悲しかった。とても良い人だとは思ってる。」



《間》




太一M

「落ち込んでいる様に見えるのは今日が初めてではない。いつもの様に笑ってはいるのに、不意に漏れため息が妙に色っぽく聞こえるのは、俺の欲目だろう。

 俺はこの少女に、一目惚れをしてしまっているからだ。」



理沙

「あれ?……ここなんだっけ……えっと……」


太一

「どうしました?……あぁ、ここは、先週もつまづいてたところですね。ちゃんと予習しておけばすんなりけるはずですけど?」


理沙

「……ごめんなさい……」


太一

「……」


理沙

「ごめんなさい」


太一

「……今日は、ここまでにしましょうか」


理沙

「え、え? だって、まだ始めたばっか……」


太一

「全然、集中出来てませんよね。そんなので身になりますか?」


理沙

「……う。ごめ(んなさい……)」


太一

「(遮るように) それ。やめてくれますかね」


理沙

「……え?」


太一

胸糞むなくそ悪くなるので。……気分転換に、外の空気でも吸いに行きますか、寒いけど」


理沙

「えっ……」


太一

「デート、しませんか?」



太一M

「連れ出してはみたものの、あまり遠くへ行く訳にもいかず。近くの公園へ向かう間にも溜め息ばかりで、俺にもそれはいつの間にか移っていた。深く吐く息は白い。」



理沙

「……ねぇ」


太一

「何です?」


理沙

「先生って、好きな人……いる、んですか?」


太一

「へ?」


理沙

「いる?」


太一

「……急、にどうしたんですか」


理沙

「少し前から気になってて。先生って、どんな子にも意地悪なのかなって……」


太一

「そんな事、ないと……思いますけど?」


理沙

「そうなんだ……」


太一

「……、……」


弦樹

「あー! やっぱり! たいっちゃん、おーい!!」


太一

「……げっ」


理沙

「た、たいっちゃん……?」


弦樹

「なになに、こんなとこでな〜にしてんのー?」


理沙

「……あの……」


太一

「う、うるさいですね、なんですか!」


弦樹

「いいねえいいねー! デートか、このこの〜!!」


太一

弦樹げんき!……ちょ、やめ……」


弦樹

「この子って、狙ってるって前言ってた子じゃないの? あ、こーんにちは! 彼女さん!」


理沙

「……彼女?……狙って…?」


太一

「いや、違……」


弦樹

「え、違うの? じゃあ別の子かー」


太一

「違う。あ、いや、そうじゃなくて」


理沙

「……別?」


太一

「いや、今は彼女いないですから。てか、そうじゃなくて……」


弦樹

「んー? なに、この子、リサちゃん、じゃないの?」


太一

理沙りさは、この子だけど!」


弦樹

「なら、狙ってるって言ってた子じゃんか〜、良かったな! 彼氏になれて!」


理沙

「……かれ、し……?」


太一

「だぁ! 弦樹げんき! お前、黙れ!!」


弦樹

「うわ〜い! たいっちゃんにおーこらーれたー! ごめんって〜」


太一

「うるせぇ、あっち行けよ、ったく。何しに来たんだよ!」


弦樹

「なにって、彼女のとこに遊びに行こうと思ってたら、たいっちゃん見かけたからさー、追いかけてみた! そしたらデートしてんだもん、オレビックリ!!」


理沙

「……せ、先生……この人……」


太一

「んあ?!……あぁ、こいつは」


弦樹

「ども! オレ、弦樹げんき! たいっちゃんのお友達でっす! よろしく!」


理沙

「あ、どうも……」


弦樹

「たいっちゃん、実はすっげー優しいやつだから! 嫌わないであげてね!」


太一

「……本当。……黙れよ」


弦樹

「うはは! もー、メガネしててもが出ちゃってるぞー! たいっちゃんてば忘れんぼさん!」


太一

「お前のせいだっつの……」


弦樹

「そうなの? ごめん!……おっとぉ、彼女から電話来ちゃった!! んじゃオレ行くね!」


太一

「あー、はいはい、さっさと行け……」


弦樹

「まったねー!……は〜い、もしもし〜?」


太一

「……はぁ、ようやく行った……」


理沙

「……」


太一

「……(咳払い一つ)……あー、その……」


理沙

「……賑やかな、人……ですね」


太一

「あぁ、まあ……悪いやつじゃ、ない、ですよ?」


理沙

「……ふふ。もうね、なんか。いつもの先生でいいよ」


太一

「……おう」


理沙

「私って……先生に、狙われてたんだ……」


太一

「う。……まぁ、そう、言う事になるな」


理沙

「そっか……」


太一

「……あー、くそ!!」


理沙

「んふ、ふふふ。ねぇ、先生?」


太一

「なんだよ!」


理沙

「私、なんだかやる気出て来た! 勉強の続きしよ!」



太一M

「そう言って笑う理沙りさは、どこか吹っ切れた様にも見えた。これは、冬休みに入る前の事。

 この日は大人しく家に帰り、最後まで真剣な表情で机に向かっていた。」



《間》


《数日後》



理沙

「……あ、鈴音すずねさん。ごめんなさい、急に呼び出したりして」


鈴音

「大丈夫だよ。りんくん、来なくても良かったの?」


理沙

「……うん、いいの。今日は、鈴音すずねさんとはなしたくて」


鈴音

「そうなんだ。……外寒かったし暖かい物でも頼もう?」


理沙

「……ケーキも食べたい……」


鈴音

「うふふ。好きな物食べちゃお! 私はアップルパイかなー」


理沙

「んっと、私は……」



鈴音M

「冬休みに入った頃、私は理沙りさちゃんに呼び出された。いつもなら兄であるりんくんと話したがるのだけれど。珍しいなと思いながら待ち合わせ場所の喫茶店に向かうと、理沙ちゃんは先に待っていた。

 何かを考え込んでいる様な表情をして、窓の外を見つめている女の子はどこか大人びて見えた。」



理沙

「……ふ〜、美味しかったぁ〜!」


鈴音

「そうだねぇ」


理沙

「……はぁ〜……カフェオレも美味しい……」


鈴音

「紅茶も美味しいよ。今度また来た時には違うの頼んでみようかな……」


理沙

「……」


鈴音

「……ねぇ、理沙りさちゃん」


理沙

「は、はい……」


鈴音

「なんで私と話したいなんて言ったのかな……?」


理沙

「う。意外と直球」


鈴音

「そうかな、ごめんね?」


理沙

「いえ、いいんです。私は鈴音すずねさんのそう言うところ、好きですもん」


鈴音

「本当? ありがとう」


理沙

「うん……」


鈴音

「そう言えば……家庭教師の先生の意地悪はなくなったのかな。前に話した時に辞めさせてやるぅって言ってたような……」


理沙

「っ……あれ? そ、そんな事言った、かな……」


鈴音

「何考えてるのか分からないって、感じには聞こえたかな」


理沙

「……あの……」


鈴音

「なぁに?」


理沙

「私、は……お兄ちゃんが好きなの」


鈴音

「うん。大好きだよね」


理沙

「……けど。最近、分からなくて……」


鈴音

「好きって事が……?」


理沙

「……うん。この気持ちって……なんだろうって……」


鈴音

「……」


理沙

「あのね。先生って、私の事が好きなんだって」


鈴音

「えっ、私がそれを聞いてもいいの?」


理沙

「あっ……うん、そっか……えっと」


鈴音

「私が誰にも言わなければ大丈夫だよね。そうだよ、今日の事は二人だけの秘密って事にしようかな、うん」


理沙

「……鈴音すずねさん……」


鈴音

「先生のお名前、聞いてもいい?」


理沙

「ゆ、湯岐ゆぎ太一たいち先生」


鈴音

湯岐ゆぎさんって、呼ばせてもらうね。好きって、告白されたの?」


理沙

「告白……と言うか、なりゆきで知ったの。その後に否定されなかったから……」


鈴音

「……そっか」


理沙

「それが先週の話。で、昨日……勉強教えて貰ってる時にね? なんか、分かんないけど……つい、先生の顔見ちゃってて。あ、無意識に見てたんだよ? それを見つかって何度も揶揄からかわれちゃって、でも、その……前までは少し嫌だなって思ってたのに、嫌じゃなくて、むしろ……(嬉しいなぁ、なんて……(少しずつ小声になっていく)」


鈴音

「(小声になるのに合わせて同時に)……嬉しいなぁって?」


理沙

「……うん。なんかね、これ、お兄ちゃんに褒められた時に似てるの。よく頑張ったなって頭撫でて貰った時にふわ〜って嬉しくなるのと、似てて。でも違う気がして……」


鈴音

「どう、違うのかな」


理沙

「……先生のは、きゅうって、した……」


鈴音

「……うふふ」


理沙

「えっ……アレ、なんかおかしい事言っちゃった?」


鈴音

「ううん、違うの、ごめんね?……きゅうってなるのはね、よく分かるなぁと思って」


理沙

鈴音すずねさんもそう言う事あったの?」


鈴音

「うん、たくさんあったよ。声を掛けてくれた時、廊下ですれ違った時、笑いかけてくれた時。今も……ずっと」


理沙

「……それ、お兄ちゃんに?」


鈴音

「そうだよ。その気持ちが心に積もってあふれて、涙が出ちゃうくらいにりんくんを好きになっていってたの。目で追ってただけだったのに心でも追うようになって……離れたくない! って思ったら呼び止めてたの」


理沙

「……お兄ちゃんを目で追う……?」


鈴音

理沙りさちゃんがりんくんを思う気持ちってね、恋じゃないと思うよ?」


理沙

「え……──あ、……うん」


鈴音

りんくんへの気持ちって、多分憧れだったんじゃないかな?」


理沙

「……憧れ……か」


鈴音

「そうじゃなかったら……湯岐ゆぎさんに好きだと言われても、揺らがないもの」


理沙

「……」


鈴音

「湯岐さんの事……」


理沙

「あの……」


鈴音

「ん?」


理沙

「……き、気安く、先生の名前。呼ばないでくれますか……?」


鈴音

「ふぇ? ……あ、理沙ちゃん……顔真っ赤……」


理沙

「んー、もう! もう……分かっちゃったら急に……! なんなの、もう……」


鈴音

「ふえぇ……! ごめんなさいー」


理沙

「なんなのよぉ!!」



鈴音M

「顔を真っ赤にした理沙りさちゃんはテーブルの上に突っ伏してしまった。もがくみたいに足をばたつかせていたけれど、多分、自覚しちゃったのかな。そうしたら急に恥ずかしくなったんだろうなって思ったら、懐かしい気持ちになった。」



《間》



太一M

「年も明けて数日経ったある日。理沙りさから『初詣に行こう』と誘われた。待ち合わせ場所は近所の神社、小さい所だが人は多い。

 鳥居近くで待っていると、俺のそばに写真で見た事のある顔をした男が近寄って来た。確証は無いが恐らく、理沙の兄。俺は妙な居心地の悪さを覚えて、喫煙所へ向かった。」



《少しの間》



理沙

「あ、鈴音すずねさん! こっちこっちー!」


鈴音

「ごめんなさい、遅れてしまって…!」


理沙

「いいのいいの! いい女は男を待たせるのが仕事なんだから!」


鈴音

「ふぇ、そうなの?」


理沙

「昔の偉い人が言ってる! はず」


鈴音

「知らなかったよぉ」


理沙

鈴音すずねさんの晴れ着姿……めっちゃ可愛い……え、なんなの、なんなの!?」


鈴音

「そ、そんな事ないよぉ。理沙りさちゃんの晴れ着姿もよく似合ってるし、綺麗だし……可愛いよ」


理沙

「ふふん! これで惚れ直させないといけないからね!」


鈴音

「……え?……ふふふ。うん、そっか」


理沙

「うん、紹介したいんだ。鈴音すずねさんと、お兄ちゃんに。もうそろそろ……あ、いた。先生ー!」


鈴音

「あ、りんくんもいるね」


太一

「おー。……そんな走って来たら着崩れるだろ。せっかく綺麗にして貰ってんのに」


鈴音すずね理沙りさ。明けましておめでとう」


鈴音

「おめでとうございます、今年もよろしくお願いしますね」


理沙

「大丈夫だよーだ。動き回っても着崩れしないようにして貰ったから!」


太一

「そうか? ……その、初めまして、でしたよね?」


「……あぁ……そうか。湯岐ゆぎ、先生?」


太一

「えぇ、はい。妹さんの家庭教師をしてます、湯岐ゆぎです。あー、明けましておめでとうございます」


「……おめでとう、ございます」


理沙

「うん! 追加で、これから多分、私の彼氏になる人!」


太一

「は?!」


「ん!?」


鈴音

「そうだね」


太一

「なっ……え?」


理沙

「よーっし! 皆揃ったし、お参り行こ!」


「ちょ、っと。理沙りさ、待ちなさい。彼氏って……?」


理沙

「言葉の通りだよー! ほらぁ、先生! 早く行こ!」


太一

「いや、え、ちょ……なに、聞いてなかったんだけど!?」


理沙

「あっはは!」


理沙りさ、ちょっと……」


鈴音

「あらまぁ、ふふふ」


太一

「おま、このやろ! 大事な事聞いてねーんだぞ!? こら!」


「待って、理沙りさ!」


鈴音

「いい年明けになったねぇ……」


鈴音すずねはしみじみ言ってないで、どうなってるのか教えて?」


鈴音

「そんなの、嫌ですよぉ〜」




理沙M

「ちょっとしたサプライズは大成功。先生の驚く顔と兄の驚いた顔、ちょっと似てて面白かったよ。鈴音すずねさんには色々と聞いたり話したりしておいて正解だったと思う。

……私には好きになるかもしれない人がいる。年上で、背も高くて頭も良くて、格好良いのに可愛いところもある、少し意地悪な優しい人。先生の事、これからはちゃんと見るから。あんまり意地悪、しないでね?」




終わり

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