Movement:6『学園祭と、フードファイト(後編)』

-校内広場-


 わ い わ い が や が や


*「それでは出場者を発表します」

蛍(うわー、物凄い人がいるなぁ……。

  大会の宣伝バッチリじゃねえか。もっと人少ないと思ってたのに……)


舞「お兄ちゃん頑張ってー!」


蛍(お、舞……うわ、すっげーニコニコしてる!

  やっぱり可愛いな。隣にいるのは友達かな?

  ……友達が女の子で良かったと安心した俺がいる)


唯「……」


蛍(ん、その横にアイツもいるのか)

唯「……」アヘェ

蛍(遠くでアへ顔してんじゃねえ!!!)


*「大会の参加者を読み上げます。一番――」

蛍(てか、周り体育会系の先輩ばっかりじゃねえか!!

  ……勝てるわけ、ないよな。

  良くみりゃ、一年生俺しか出てねえし!)

*「五番、一年C組、宮澤選手」


蛍(おっと、頭食らい下げとかないとな)ぺこり


舞「お兄ちゃ~ん!」

唯「ふふっ……」


*「早食い大会を始めます。ルールは簡単です。

  出てきたものを誰よりも早く食べてください」

蛍(シンプルなルールだ。

  ……って、なんだこれ!? 5kgはあるんじゃないか…?!)

*「お皿は全員の前に並びましたね。それでは、スタート」

蛍「えっ!」

 (いきなり始まった!? しかたない、食べるしかねえな!)

 「あむっ……んっ!」

 (美味い! めちゃくちゃ美味しいぞ!

  これならいくらでもいけそうだ。休まずにどんどん食べないとな!)


舞「お兄ちゃんファイトー!!」

唯「ふふっ、あんなに大きく頬張っちゃって……いやらしいなぁ」

舞「? 唯さん何か言いましたか?」

唯「あはは、なんでもないよ」


     *


蛍「……」もぐもぐ

*「終わりです」

蛍(あれ? 終わった?)

*「完食者が出ました」


舞「ゆ、唯さん……アレって」

唯「うん、どう見ても明らかだね」


*「早食い大会、優勝は15分24秒……1年C組の宮澤選手です」

蛍「へ!?」


舞「やったー!!」

唯「ふふっ……凄いなぁ」

舞「でも、なんでって顔してますね」

唯「食べ切ったことに気づかなかったのかな」


*「おめでとうございます。こちらが優勝トロフィーです」

蛍(た、淡々としてるな、司会の人……

  ってか優勝トロフィーも大きいな!?)

*「一言コメントをどうぞ」

蛍「あー……美味しかったので、食べ続けられました」

*「おめでとうございます。それでは続けて大食い大会を開催します」

蛍(か、間髪入れず大食いか……俺の腹、持つだろうか)


唯「おや、連続出場は彼だけなんだね」

舞「そうですね……お兄ちゃん、大丈夫かなぁ」

唯「こういう時こそ、大きな声で応援してあげないとね」

舞「そ、そうですよね! お兄ちゃんファイトー!」


*「ルールは簡単。とにかく出てきたものを食べてください」

蛍(こっちもシンプルなルール……って、うお!?)

*「それでは開始します」

蛍(ちょ、ちょっと待て……なんだこの量!? これで一皿なのか!?)

*「スタート」

蛍(くそ、とにかく食うしかない!!)


蛍(うぐっ……とんでもない量だ……でも美味い!

  しかし、さっきの早食いのせいでもうお腹が……!)


舞「頑張ってお兄ちゃん!」

蛍(ん……舞!)


唯「おや、目の色が……ふふっ」


蛍(まだまだいけるぜえええええ!!)


     *


*「宮澤選手以外、22皿でギブアップしています。現在宮澤選手は23皿。

  これを食べきれば優勝決定です」

蛍(マジか?!)


舞「最後だよお兄ちゃん!」


蛍(よーっし、一気にかっこもう!)


     *


*「宮澤選手、23皿目を完食。優勝です」


ウオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!


蛍(か、勝ったのか俺……)

*「こちらに来てください。一言コメントをどうぞ」

蛍「は、はい」

 (やべ、動くと吐きそうだ……)


     *


唯「立派なトロフィーだね」

蛍「そうだな」

唯「ふふ、おめでとう二大会連続優勝だね」

蛍「おう。あれ、舞は?」

唯「友人とどこかへ行ってしまったよ」

蛍「そうか……一言声かけてくれりゃ良かったのに」

唯「ふふっ、そうだね」


唯「これからどうするんだい?」

蛍「だいぶ食い過ぎたし、ちょっと休みたいな。腹がはちきれそうだ」

唯「……そっか。じゃあ、休憩室に行こうか?」

蛍「ん、ああ」


     *


唯「お腹、大丈夫かな?」

蛍「ああ。……お前はどこか行かなくていいのか?

  ついてこなくても良かったんだぞ」

唯「平気。特に行きたいところもないし」

蛍「ふーん」

唯「……」そわそわ

蛍(なんでそわそわしてるんだ?

  まさかコイツ、昨日――)


唯『じゃあ、ボクと一緒に回ろうよ、午後』


蛍「……よし、腹も大分良くなったし、回るか」

唯「え、まだそんなに経っていないよ?」

蛍「大丈夫だから、行こうぜ。早くしないと学園祭終わっちまうぞ。それに――」

唯「それに?」

蛍「――昨日、約束しただろ」

唯「……そうだね。よし、じゃあ行こう」


-学園祭、終了-


唯「面白かったね。何もかも」

蛍「そうだなぁ」

唯「君の食事のペースは他の生徒とは比べ物にならないくらい、速かったよ」

蛍「そんなに速かったか?」

唯「うん。サカりのついた犬みたいな……」

蛍「嫌な表現だな」

唯「ふふっ。……」

蛍「ん?」

唯「来年も楽しみになったよ」

蛍「……まあ、大会に出るのはこりごりだけどな」

唯「ふふっ、開催されたら目指せ二連覇だね」

蛍「は!? む、無理だっつーの!」

唯「ふふっ」

蛍「……ったく」


唯「あとさ」

蛍「今度はなんだ?」

唯「……ありがとう」

蛍「え?」

唯「君のおかげで、最高の学園祭になったよ」

蛍「……お、おう」

唯「責任、取ってくれるかい?」

蛍「いやなんのだ」


-宮澤家-


蛍「ただいま……ん?」

舞「おかえりお兄ちゃん! そして優勝おめでとー!」

蛍「ああ、ありがとう。

  ……でも舞、なんですぐいなくなっちまったんだよ。

  おめでとうって一言くらいその場で言って欲しかったぞ」

舞「ごめん。でもいてもたってもいられなくてさ……」

蛍「え、どういう……アレ? な、なんだこの匂いは?」

舞「ふふっ、お祝いの料理作ったの!」

蛍「お、お祝いの料理ぃ~?!」

舞「うんっ! だから……いーっぱい食べてね?」

蛍(ま、マジかよ……)


それでも完食したことは言うまでもない。

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