Movement:4『学園祭直前』

-宮澤家-


蛍「舞、ほらこれ」

舞「なに?」

蛍「うちの学園祭のパンフレット」

舞「え、もうやるの? まだ六月だよ?」

蛍「そうなんだけどな。まあもらっといてくれ」

舞「お兄ちゃんの学校、学園祭すっごく面白いらしいね」

蛍「らしいな」

舞「もー! なんでお兄ちゃんがそんなに無関心なの!」

蛍「この学校を近さでしか決めてないからな」

舞「もうね、これくらい! こ~んのくらい面白いんだって!」

蛍(大きさで例えられてもよくわからんが、今日も俺の妹は可愛い)


舞「ん? この表紙の絵は誰が描いたの?」

蛍「あー、これか。同級生が描いたって話は聞いてるんだが」

舞「へー! あ、『美術部作成』って書いてある」

蛍「すっきりしてて見やすいよな」

舞「ね。お兄ちゃんにもこういう才能があったらなぁ」

蛍「うちの家族は美術センスが皆無だからな……」


舞「お兄ちゃんのクラスは何をするの?」

蛍「とりあえず食べ物を出す」

舞「衛生管理はちゃんとね!」

蛍「もちろん」

舞「それにしてもご飯か~。何を出すの?」

蛍「まだ決まってないんだよなぁ。モダン食事処ってことぐらいしか」

舞「モダン食事処?」

蛍「そうだ」

舞「そっかー……モダンな食事処……。

  うーん、どうやってモダンな空気を出すのか悩み所だねっ」

蛍(アイツも同じこと言ってたなぁ)


-放課後、教室-


唯「毎日毎日、委員会おつかれさま」

蛍「実行委員ってこんなに大変なんだな」

唯「学校自体が大きいから、緻密に決めないといけないんだろうね」

蛍「そうだな……。大雑把にやると上手くいくものも上手くいかないよな」

唯「そう。しっかり排卵日を避けて、計画的にね」

蛍「何 の 話 を し て い る ?」


唯「焼きそば、お好み焼き、たこ焼き……定番を三つ出すのはいいけど」

蛍「ああ」

唯「これだけだとね」

蛍「メニューが被ってるクラスもある。流石に三つやるクラスはないみたいだが」

唯「メニューの多さは強みだね。あとはそうだね……」

蛍「服装とかも統一するといいかもな」

唯「体操服!」

蛍「マニアックだな! モダンはどこ行った!」


唯「よく考えてみればボク達のクラスは三つもメニューを出すんだ。

  それならば、服装にお金をかけるのは得策じゃないね」

蛍「でもなぁ」

唯「体操服というミスマッチ感……このいやらしさがたまらないじゃないか!」

蛍「そう言ってもなぁ」

唯「何故肯定してくれないんだい!?」

蛍「衛生面とか、火傷の危険があるからな」

唯「ああ、なるほど。それならボツだね」

蛍(すんなり受け入れやがった)


-宮澤家-


蛍「ただいま~。……んっ!?」

舞「おかえりなさーい」

蛍「舞、その格好は!?」

舞「ああ、今日の授業、体育で終わりだったの。

  だから体操服のまま帰ってきたんだー」

蛍「そ、そうか」

舞「うんっ、あとで着替えるね」

蛍(舞の体操服……可愛い!!)


-教室-


唯「あれよあれよと、もうすぐ学園祭だね」

蛍「口を動かすな、手を動かせ」

唯「一応腰は激しく動かしてるんだけど」カクカクッ

蛍「え? うわっ! やめろ!」

唯「注意が遅いから、だいぶ突かれちゃったよ」

蛍「変換がおかしい! 周りに見られたらどうすんだ!」

唯「ボクは勘違いされても平気だよ? 君となら……」

蛍「俺を巻き込むな!」


―宮澤家―


舞「お兄ちゃん、学園祭のパンフレットもう一枚ちょうだい」

蛍「あれ? 前に渡しただろ」

舞「友達が欲しいって言うからあげちゃったの」

蛍「そうか。確かここにあったはず……ほら」

舞「ありがとー! 何回見ても、やっぱり高校の学園祭って違うなぁ~」

蛍「他の学校でもこんなに大規模ではやらないだろうな」

舞「凄いなー……。!!!」

蛍「?」

舞「な、なにこれ!」

蛍「ど、どうした?」

舞「早食い・大食い大会だって!!」


蛍「ああ、確か開催されるって聞いたな」

舞「お兄ちゃん出よう!」

蛍「え、なんでだよ」

舞「だって早食いだよ? 大食いだよ?」

蛍「いや、俺そんなに食えないし……」

舞「食費が浮くじゃん!」

蛍(そこかよ! ちゃっかりしてるな!)


舞「ね~、出ようよー」

蛍「舞、そういうのはな。

  体育会系の部員連中が出て、競い合うもんなんだよ」

舞「出ることに意義があるよ!」

蛍「やだよ」

舞「お兄ちゃん……」うるうる

蛍「うっ……や、やめろそんな瞳で見るな!」

舞「お兄ちゃんの凄いとこ、見たいな……」

蛍「ぐぐ……」

舞「……」うるうる

蛍「……うおおおおおお! まっかせろぉぉぉぉぉ!!!」


-学校-


蛍「ふぅ……間に合った」

唯「もう少しで漏らしていたね」

蛍「早食い・大食い大会のエントリーに間に合ったんだ。トイレの話じゃねえ」

唯「前日にエントリーなんて、どうしたんだい?」

蛍「舞にのせられた」

唯「なるほどね。君は舞さんが(性的に)食べちゃいたいくらい好きだもんね」

蛍「なんだその括弧内は。誤解の生じる言い方はやめろ」


-学園祭前日-


蛍「よし!店内のレイアウトも完成だ! いよいよ明日か……」

唯「ワクワクだね」

蛍「そうだな」

唯「ふふっ、ボクはそれ以上にワクワクしていることがあるよ」

蛍「なんだ?」

唯「君のフードファイト」

蛍「ああ……それも明日か。はぁ……」


-下校途中-


蛍「明日って実感がないな」

唯「長い間準備してきたけれど、始まればあっという間だからね」

蛍「午前中は実行委員の見回りもあるし、クラスの出し物、それに大会も……はぁ」

唯「あらら。自由時間はないのかい?」

蛍「んー、大会が終わったあとなら空いてるかな」

唯「じゃあ、ボクと一緒に回ろうよ、午後」

蛍「え」

唯「ダメかい?」

蛍「まあ、予定も決めてないし、別にいいけど」

唯「ふふ、じゃあ決まりだね」

蛍「……おう」

唯「最高の学園祭になるといいな」

蛍「……ああ、そうだな。」

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