Chapter:1 "Spring"

Act:1 『また明日』

-教室-


唯「さあ、帰ろうか」

蛍「おう」

唯「下校前に忠告しておくけれど」

蛍「なんだ?」

唯「ボクを襲うのはやめてくれよ?」

蛍「襲わねえよ」


唯「ボクが『帰ろう』と言った時……」


蛍『ゲヒヒ、今回はどんな犯し方してやろうか』


唯「……って目をしていたよ」

蛍「してない」

唯「ボクにはそう見えたよ」

蛍「そんな目もしてねえし、言ってねえ」

唯「イッてない!?」

蛍「なんか意味が違う!」


-下校途中-


唯「なるほど、ボクの身体では満足できないということか……」

蛍「何のことだよ……」

唯「ナニのことだよ」

蛍「手で輪っか作って上下に動かすな」

唯「シコシコ」

蛍「その効果音もやめろ」


唯「ついついクセでね」

蛍「嫌なクセだな」

唯「いやあ、それほどでも」

蛍「褒めてねーよ」

唯「君に言われたら、なんでも嬉しいのさ」

蛍「……いきなりそういうことを言うのはやめろ」

唯「おや、照れてしまったかな?」

蛍「……ちっ」 


唯「もはや罵倒すら心地良い」

蛍「とんでもねえこと言いやがる」

唯「うーん……あっ、『なんでも嬉しい』というのは、ちょっと嘘になるね」

蛍「嬉しくない言葉もあるってことか?」

唯「そういうことだね」

蛍「教えろよ」

唯「嫌だよ。教えたら、君は言うだろう?」

蛍「い、言わねーよ」

唯「本当に~?」


唯「絶対に言うね、君は」

蛍「……ちっ、わかったよ。そこまで言うなら聞かねえ」

唯「いいのかい?」

蛍「ああ」

唯「本当にいいのかい?」

蛍「しつこいな」

唯「そう言われると、言いたくなるなぁ」

蛍「めんどくせえな!! じゃあ教えろ!」


唯「教えるけれど、言わないでくれよ?」

蛍「おう」(絶対に言ってやる)

唯「ボクが言われたくない言葉は……」

蛍「……」

唯「『可愛い』だよ」

蛍「……」

唯「ボクはそういうキャラじゃない。

  ましてや、可愛いという言葉とは正反対にいる」

唯「だから、言わないでね? 約束だよ」

蛍(恥ずかしくて言えるかっ!)


     *


唯「おや、もうお家の前だ」

蛍「そうだな」

唯「あっという間だなあ。

  時間が経った感覚がしないのだけれど」

蛍「確かにな」

唯「ふふっ、君も同じ気持ちで良かった。それじゃあ、また明日」

蛍「おう、また明日」

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