交信記録
「……8J……1R……」
「QRZステーション? こちら8J1RL、ハロー」
「ハロー、8J1RL。ブリザードが酷いからか、QRK?」
「FB、エドか。南極ウイルスの件、ついに公表されたそうだぞ」
「ああ。さっきウガンダの医者とも会話した。向こうも全員感染済みって見通しで、直接聞いたぶんでもこれで六大陸制覇だ。我がマクマード基地も全員だよ。おおよそ、人類を含む真核生物の全部に感染したって見方が確定的だ。そっちは?」
「昭和基地も全員感染してる。しかしこんなことがあるか。たった数ヶ月でそこまで広がって、おまけに南極では風邪をひかないのが定説だったのに」
「南極ウイルスは、百万年前の環境が保たれてたボストーク湖の氷層下にいた未知の種だぞ。そいつが地球温暖化の変動で地表に出て、オゾンホールからの放射線で突然変異して海に流れた。化け物になっても不思議はない。うまい仕組みだ、環境破壊で発動するようになってたんだからな。さながら地球の免疫機能、連中が白血球ならおれたちは病原菌だ。……どうぞ」
「疑問なんだが、本当に温暖化はそこまで進行してたのか。オゾンホールもだが、寒冷化さえ囁かれてたのに」
「ああ、謎は多い。なにより、この感染力で毒性がないってのが妙だ。お蔭で、パニックを恐れての情報封鎖が解かれたそうだが、どっちみち隠せない規模だった」
「確かなのは、こいつが有害なものになったらおれたちも終わりってことか」
「アーメン、祈るしかないな。いろいろ思考したくなってきた。これまでにしよう、オーバー」
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