No. 52 探し物は世界で最も尊いもの

容器には美しい花が入っていた。


見たことのない色、形。

けれどとてもきれいなもの。

花びらが微かに揺れていた。


中に恋が詰まっているのさ。

それが花の命を繋いでる、

生かしているんだよ。


首をかしげれば彼が微笑んだ。


世界で最も尊いものだよ。

探しにいけばいい。


私は彼を見つめた。

彼も私を見つめた。


きみは傷つくかもしれない、

泣くかもしれない。

だけどきっと。


微笑みがわずかに歪み揺らいだ。


泣きそうなのはあなたでは?

という言葉の代わりに、

彼の頬にそっと口付けて扉を押し開いた。


真っ白な雲の道。

心に浮かび上がるものも何もなかったけれど

ふと振り返った。


私たちの花園の前に彼は立っていた。

震える翼は容器の花よりもずっと美しかった。

私は彼を真似て微笑んだ。


あなたのいう恋を知った時、

何を想うのかしら。


それが彼だったら素敵なのでは。

そう思いついたことが嬉しくて、

さらに大きく微笑んだ。

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