No. 16 それは約束だったの?
夢を見た。
少し強めの日差しの下、私は知らない道を行く。
緩やかな坂道のその先には大きな門があって、
それをくぐればすぐに階段が続いた。
下りきるとそこには石造りのテラスがあって、
その先に広がっているのは海なのか湖なのか、
とにかく光があふれすぎてよく見えない。
そしてそこにあなたがいた。
私の知らない十代の少年のあなた。
知らないのにわかるなんて。
でもそれしか言いようがない。
私は少し声を潜めて言った。
どうして来たの。
待っててって言ったでしょ。
あなたは悪びれた風でもなく、
けれど不満げに返した。
いつまでたっても来ないからさ。
だから自分で来たんだ。
あなたの前髪が光に透けてキラキラと光った。
妙に暖かい風が私の肌を撫でていく。
ただただ、それだけの夢。でも。
覚えのない約束は、私の願望なのだろうか。
それとも、あなたの願望だったのだろうか。
交錯する時間の中に、
私たちの約束が隠されていたのだろうか。
夢の余韻が遠ざかる中で、
私は静かに涙を流した。
意味もなく、
けれどとてもとても、泣きたかったから。
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