No.9 何よりも優しいもの、何よりも愛しいもの

ふとした瞬間にこぼれだすもの。


姿形を思い出せないのに色が溢れて迫ってきたり、

切なくて切なくてため息が出てしまったり、

体の芯から燃えるように熱くなってしまったり。


忘れたと思っていることはいまだみな

心のひだの中に隠されている。

何一つ無くしていない。


悲しくて苦しくて

どうしようもなくなってしまったことも

ちぎって捨てたんじゃなくて、

知らないうちにちゃんと自分に優しくなって

奥深くに包みこまれた。


人はみんな自分を愛せているよ。

あなたの心はあなたをちゃんと守ってる。


全ての記憶はいつか、

甘い痺れになっていくから。

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