No.8 幻影の向こう

水の上に揺れるものと水の中で揺れるもの。

どっちも本当でどっちも虚像。


水面みなもという薄い一枚の向こうとこっちで、

揺れて歪んで作りだされる麗しき幻影。


それはまるで、遠く離れたあの人のようで、

届かなくてはかなくて、狂おしいほどに美しい。


でもいつか、手を伸ばしてみようと思う。


美しい幻影を砕き散らして波立たせたら

この手に触れるものはきっと紛れもない真実。


そしてそれを愛することができたなら、

その時こそ

一番大切なものを掴み取ったのだと思う。

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