「タイプ」と狼

モノズキ

前編

こんにちは、私は作家のタイリクオオカミ

突然話を振る様で申し訳ないが、君は作家には2種類のタイプがいる事を知ってるかな?まあ今のパークに作家は私1人しかいないんだけどね。………コホン


1つは、「初めに筋道を立てて、その道を辿ることで物語を進めるタイプ」

もう1つは「あらすじだけを決めておいて、その場の気分と勢いで展開を決めるタイプ」

前者には緻密に伏線を張り巡らせる計画性、後者には作者本人さえも予想出来ない意外性を出す事が出来るという点でメリットがある、

今回はその「タイプ」の話をしようと思うんだ、…因みに私は今、ロッジのベットの上にいる、ちょっと腕を痛めてしまってね、フフ

……前置きが長くなってしまったね、

それじゃ話そうか、それは今朝の事だった…




太陽がロッジを照らす、朝を告げる鳥のさえずりは

「先生先生せんせぇーい!!」

ドタドタを床を踏む音に掻き消される

「おはようキリン、朝から元気がいいね」

椅子に座り、欠伸をしていた私の前に彼女が滑るように現れた

「おはようございます!先生!」

ハアハアと息を荒らげながら挨拶を返してくれたのはアミメキリン

白いシャツに茶色のネクタイを締めていて、

黄色と茶色の斑点の付いたマフラーを巻いている、これは元の動物が首の長い生き物だった事に由来するとか何とか。

遅寝早起きのショートスリーパーであり、私の1番のファンであり…………自称名探偵だ。

「実は…先生!お願いがあります!」

決して悪い子じゃあ無いんだけど

「突然ですが…私も「まんが」に挑戦してみたいんです!」

こんなふうに勢いだけで突っ走る所があるからそこが困りどころかな

「えらく急だね、キリン、一体どうしたんだい?」

机に置いてあった水を差し出すと彼女は両手で受け取り、それを飲み干した。少し間を置いて息を整えたあと、彼女はゆっくりと口を開いた

「実は…夢を見たんですよ、漫画を描く夢」

「へぇ」

「夢って、その人が憧れている物を見るって言うじゃないですか、だから私、実は漫画を描くことに憧れていたんじゃないかって思ったんです。」

彼女の目が輝いて見える、いい顔頂きだ

「……そういう事か、それなら大歓迎だ、」

「ありがとうございます!」

「因みに、どんな漫画だったんだい?」

「勿論!名探偵キリンが難事件を次々解決していく探偵漫画ですよ!それじゃ早速」

「待った!……その前にご飯にしようか」

その時、キュルキュルと私の腹が鳴った


水を組んでくるとどこからともなくボスがじゃぱりまんを運んできた。その中にはいくつか見慣れない色のじゃぱりまんがある。

「…おや、この色のじゃぱりまんを見るのは初めてだ、新作かな?」

手に取った黄緑色のじゃぱりまんを手に取り首を傾げた。それには棘のような模様が描かれている、こっちの青いじゃぱりまんには渦巻きのような模様が施されている

「ああ、きっとそれハンターさん達の分ですよ」

「ハンター達の?」

「はい、先生が寝た後にやって来て、一晩泊めて欲しいって、この辺を見回りしてるらしいです、最近セルリアンが多いからって」

「へぇ、今は居ないのかい?」

「私が起きたちょっと後に3人とも出ていきました。リカオンさんは「せっかくのロッジだしもう少しゆっくりしてもいいじゃないですか〜オーダーキツイですよぉ」って言ってましたけど」

「ははは、あの子も結構苦労してるんだね、私もその場所にいればなぁ」

「先生がそこにいたら何かあるんですか?」

「いい顔を頂けたかもしれないじゃないか」

「先生はそればっかり…」

「フフフ…しかし、初めて見るじゃぱりまんか…いいネタになるかもしれないね」

胸ポケットからメモ帳を取り出し、紙を1枚めくる、そこから丸を2つ描いて、その上に棘の模様と渦の模様をそれぞれ書き足した、キリンは興味深そうにそれを見ている

「なんですか先生、その…紙を沢山乗せたの」

「ああ…この間かばんを送り出した後、博士に貰ったんだ「メモ帳」って言うんだけどね、なにかネタになりそうな物を見つけたらこれに書き留めておくんだ、そしたら忘れる事も無いだろう?」

「成程…すごいですね先生!私だったら何も考えず進めちゃうかな…」

「おいおい、それじゃあ事件が解決しないじゃないか」

「え?お前が犯人だー!ってやればいいんじゃないんですか?」

…………これは長くなりそうだ


「うぁぁぁぁぁぁ!!」

私達が食事を済ませたタイミングで叫び声がロッジに響いた、

「なんですか!事件ですか!?」

キリンが立ち上がる、耳を立たせてなんだか嬉しそうに見える、

「違うと思うよ、この声は…アリツさんかな」

アリツカゲラ、灰色のブレザーと赤いメガネが特徴的なこのロッジのオーナー、普段は物腰の柔らかい人なんだけど今日は何やら様子が違うようだ

「2人ともおはようございますっ!キリンさん!ハンターの皆さん見ませんでしたか!?」

目を合わせるやいなやキリンに問いかける

「あの3人なら朝早くに出ていきましたよ、よろしく言っておいてくれって…」

キリンは少し困惑しながらも冷静に質問に答えてみせた

「あぁ〜!」

アリツさんがガックリと肩を落とす

「お客様をお見送りすることが出来なかったなんてオーナー一生のふかくぅ……」

どうやらアリツさんはハンター達を送り出す事が出来なかったのが悔しいようだ

「アリツカゲラさん、落ち込んでますね…」

キリンが小声で私に話しかけてきた

「そんなに抱え込むような事じゃないと思うけどね…まあ、こういうのは私に任せてくれ」

狼は元来社会性の高い動物である、私にかかればロッジという1つの群れの仲間を慰めるなど朝飯前だ、今食事を済ませた所だけど

「そんなに気にしなくても大丈夫だよアリツさん、ずっと起きてる事なんてできないんだから」

「オオカミさん…」

「アリツさん……………いい顔頂き」

場を弁えない発言に空気が凍りつく、

失言だったと自責する刹那、アリツさんの拳が飛んできた、後述の私は頭にタンコブが1つあるで読み進めて頂けると有難い

「で、でもそこまで気にしなくていいって言うのはホントだよ、私なんて締切しょっちゅう伸ばして貰ってるし」

「先生、それフォローになってません、というか締切守って下さい」

キリンの冷静なツッコミが私に刺さる、君はどっちの味方なんだい

「でも、今晩また泊まりに来るかも知れないって言ってましたよ?」

「本当ですかっ!」

アリツさんはその言葉を聞くやいなや勢いよく飛び上がった、キリンの助け舟に救われた

「また来るんですね…じゃあその時の為にしっかり準備しておかないと!」

先程落胆していたのが嘘のよう、すっかり上機嫌でどこかに行ってしまった、

「先生…大丈夫ですかソレ、頭の腫れ凄いですよ」

キリンが心配そうに私の膨れ上がった頭を見つめる

「大丈夫だよ…自業自得だしね、冗談を言うのも考えものだ」

「ジゴージトク、ですか?」

「人をからかったり嘘をついたり…悪い事をすると自分に返ってくるっていう言葉だよ、覚えておくといい」

「はぁ…」


後先考えずに行動すると必ずしっぺ返しが来る、最初に筋道を立てて、こうなる事が予想出来ていればこうはならなかっただろう、最初に言っていた「タイプ」は作品を作る時だけの話じゃ無いのかもしれない、

実はこの後、それを痛感することになるんだけど…それはまた別の機会に

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