女勇者が敗北した、エロ同人誌の続きみたいな世界の騎士道物語

藤塚マーク

プロローグ

 実によくある話だ。

 数千年に一度訪れるとされる、人類を滅ぼす災厄――“魔王”の復活。

 それに伴う魔族の活性化。

 奴らは一丸となって人類へと攻め入り、一つ、また一つと国が落とされていく。

 そうして人々が絶望に打ちひしがれた頃、魔王に対する抑止力である、人類の希望――“勇者”が立ち上がる。


 うん。実によくある話です。

 それこそ古くから伝わる英雄物語のような展開テンプレ

 立ち上がった勇者は聖なる剣を手に、魔王率いる魔族の軍勢へと立ち向かう。


 はい。死ぬほどよくある話なんです。

 けれども一つだけ、斬新な展開が起こりました。

 “起こってしまった”……と言った方がいいかもしれない。

 それは――


『グハハハハハハハ! 勇者もこうなってしまえば唯の小娘よ!』

『くっ……殺せ!』


 ——勇者が負けました。


 装備を奪われ、磔にされた状態で晒される女勇者。

 占領した街中で陵辱の限りを尽くされ、いっそひと思いに殺してくれと泣き叫ぶ、身も心も弄ばれたかつての希望。

 いやこれ逆によくある話だわ、薄い本的な意味で。


 そんな感じで、勇者を失った世界は暗黒の時代を迎える。

 ドウジーン歴1086年の事であった。








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