使えない巫女と引きこもりニート
琥珀
プロローグ
青春、それは人生の春にたとえられる時期、理想にあこがれ、異性を求め始める時期。
そしてリア充の時期でもある。
しかし気づいて欲しい………青春とは極わずかな高校生にしか与えられないものであって、決して全員がリア充になる権利を与えられるものでは無いことに。
リア充になりそこなったオス豚は非リア充に属し、また二次元にハマりこみアニメしか愛せなくなったオタク。
しかし俺はそんなヤバイ奴らとは違う。
「リア充でもないし」
「オタクでもない」
この俺、一ノ瀬 紫樹(十六歳)はただのボッチだからだ。
「リア充とオタク共はオオカミのように群れを作り自分達の趣味があったものしかグループには入れない。
だが群れを作らないボッチは別の分類だ。一人で行動し、他人のことなど一切考えないからだ。だから俺は引きこもる。」
と、春中旬宣言こと言い訳を家族が立ち会いの元、リビングで言い放った。
見る目はみな、ゴキブリを見るかのような表情だ。
挙句の果てには中学三年の妹に「キモイ」など暴言を吐かれた、この程度の暴言高校で飽きるほど聞いた俺にとっては痛くもかゆくもない。
妹の言葉を最後に家族から距離を置かれるようになり、俺も俺で部屋に引きこもり外との世界との繋がりをシャットダウンした。
引きこもってから一ヶ月後にいや半年が経とうとしていた。
この半年アニメ、ゲーム、ライトノベルのローテンション。
そしてこの日々がずっと続くと思っていた。
しかし人生はそう都合が良いようには出来ていなかった。
ある日いつも同じで朝まで徹夜でゲームをしていると珍しくノックが部屋に鳴った。
ノック音に機敏に反応したが重要な要件ではないと勝手に思い込み無視を貫いた。
正解だったのかやがて物音一つしなくなり。
一安心した瞬間―
突然部屋と下界と繋がるドアが粉砕された。
今目の前で何が起こっているかわからない、あまりに突然のことで脳が処理できずオーバーヒート寸前だ。
ドアの先にはがたいのいい外国人二人が腕を構えて佇む。
まるで映画で見るボディーガードのような人が。
「アー、ゴメンナサイ」
片言の日本語を話しここ半年誰も入ったことがなかった部屋にズカズカと入り込む。
「アナタガ、シキサンデスカ?」
人じゃあない、今目の前にいるのは人ではなく壁。
「あぁぁ、はぁ、はい、ぼぼ 僕です」
二人の外国人は顔を見合い俺の手と足を結束バンドで、身動きできないように拘束した。
名前を聞かれて答えてそして拘束される、これは夢なのか何かの悪い夢なのか?
俺を軽々担ぎ半年ぶりに外に出された。
眩しい。
黒いボックスカーの荷台に投げ捨てられた。
もう人間の扱いではない、さながら人形と思われているのか。
二人の外国人は車に乗りこみ俺の家を無言で立ち去れる。
こいつら、どこ向かっているんだよ。てかなんで親父たちは俺がいなくなったのに、助けてくれないんだよ!
次第に車はガタガタと揺れ始めた。外がまったく見えない俺にとってこれほど怖いものはない。
恐怖のどん底で怯えていると国道に出たのか揺れも止まりそして車も止まった。
引きずり下ろされるかのように外にほおり投げられ拘束も解かれた。
目隠しが取れ、光が差し込んでくる。
視界に最初に入ったのは緑。
周りを見渡すが四方八方山に囲まれ逃げることは不可能に近い。
今ここで逃げ出してもまた外国人に捕まる、なら外国人に誘導されて山の中を歩いていく、
白い壁の建物が徐々にあらわになった。
導かれるまま中に入ると部屋に連れ込まれる、中に入ると二つの椅子と机それだけしか置かれてなかった。
外から足音が聞こえた、
「君が四番目ね。私の名前は高橋 凜よ、よろしくシキさん?」と言い椅子に座り込む。
入ってきたのは茶髪のロングの二十歳ぐらいの女性だった。
容姿なんてどうでもいい、
俺が気になるのはなぜ俺の名前を知っているのと、四番目と言われたことだ。
「いや、なんにもないです、それよりここはなんですか?」
冷静だった、自分でもここまで冷静とは思ってもいなかった。
単刀直入に話を切り出し出来る限り情報を根こそぎ取ろうとした。
「ここは、新作ゲーム機と新作ゲームソフトの開発場所」
その瞬間俺の心の底にあるゲーム魂がエンジンを鳴らした。
それもそのはずだゲーマーだったら誰しも新作ゲーム機が何か気になるのが普通。
「新作ゲーム機ってどんなものですか?」
興味心身な俺を見ると高橋さんはニヤリと悪魔のような微笑みを見せ淡々と話した。
「バーチャル世界へ入ることができるゲーム機よ、脳とダイレクトリンクしてまるで主人公になりきれる革命機」
情報を聞くとますますプレイしたいと言う願望が沸いてくる。
「ところでそのゲーム機はいつ完成するんですか?」
真顔で聞くと深刻そうな顔をし、
「あ、うん、ゲーム機はたぶん完成しているけど、ソフトが・・・」とおぼつかない口調で言う。
「そう君がここにいる理由はね、その未完成のゲームソフトのテストプレイヤーに応募して選ばれたからよ!」
耳を疑った。俺はそんなのに応募した覚えなどなかったからだ。
呆然としていると胸ポケットから折りたたまれた紙を広げて机の上に置いた、契約証を。
書かれていた内容は精神を疑うものだった、契約に含まれる内容は「たとえ、ゲーム中に脳死しても私達は責任をとりません」
などほぼすべて生死に関わることしか書かれていなのだ、恐怖の何物でもない。
サインを見ると明らかに俺の字ではなく、どっからどう見ても母親の字。
契約書の下にもう一つ小さい置き手紙のような物がしれっとあった。
振り込み書。
そこに書かれていたのは契約時に支払われる料金。
「三十万円の振込み完了しました★」
金額の大きさ・・・いや息子が三十万と言う値段で取引されていたことがなによりもショックでならない。
全身の臓器が活動を停止しフリーズする、フリーズする中抑えきれないほどの怒りが湧き、体を食い破っていく。
「…俺の両親は今どこに?」
「今は太平洋の上を飛んでいるらしいです」
彼女の口調はとても冷静だった、まるで何度も同じ光景を何度も見てるかのように。
冷めた目でこの場面を見る。
今ではもう怒りよりも呆れた気持ちの方が大きかった、普段怒らない俺にとってこの気持ちはとても新鮮で高揚感が微弱だが沸いた。
気持ちの整理が出来たタイミングで高橋さんは話を切り込んできた。
「では、改めまして、これからよろしくお願いしますシキさん、ではそろそろここの施設を案内をしようと思います」
ゆっくりと椅子を引き俺を見るやニコッと微笑み施設を案内し始めた、俺はされるがまま後ろをただひたすら歩く。
もちろん脱走を考えていた、だが出入り口がわからない以上下手に動けばなにをされるかわからない、今出来ることと言ったらここの構造を覚えるしかなかった。
説明そっちのけでただ場所を覚えた。
「ここが最後です」
最後に案内されたのは新作ゲーム機が置いている開発部、なかに入るとテレビやアニメなどでしか見たことがない巨大なPCが二つあり、中央にはヘルメットのような機械が置かれていた。
思わず息を呑んだ。
「これが、世界でたった五個しかない、新作ゲーム機アイオスです」
ふと目線の先にガラスケースの中に厳重に保管されているスマートフォンがコードでアイオスと接続されていた。
「すいません、あのスマホは?」
それを待ち望んでいたかのように高橋さんは狂気の笑みをこぼし目を輝かせた、
「アイオスの設計図とソフトのデータも入っているスマホです!」
「つまりあのスマホにゲーム機とソフトが入っているんですか?」
無言、なぜ高橋さんが無言だったのかはわからない、ただ無言で立ち尽くす。
無言が何を意味するか少しであるが理解出来た、
それと同時に頭に残っていた答えの欠片が繋がり答えが導いた。
契約書に書かれていたことも重なるかのように合致、つまり誰かが作ったゲームだからどうなっても知らないということに。
遅かった・・・立ち尽くして唖然としていると高橋さんは手を引っ張りアイオスの前にあるベッドに体を固定した。
「え…………」
俺の気持ちなんかお構えなく次々と準備が開始し、俺の体には次々と機械が取り付けられ、その時点で体の自由はもうなかった。
強引に頭にアイオスを被らされ次々とボタンを押し起動準備状態にして行った。
理解は出来ていた、ただ理解したくなかった。
目が泳いでいると光を遮るかのように高橋さんは顔を覗き込み、
「シキさん、あっちの世界にはシキさんのほかに三人先に行っているから、たぶん大丈夫だと思うよ。始めてください」と告げる。
「ちょ!」
その瞬間記憶が途切れた。
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