彼女の誕生日

浦和 りえ

彼女の誕生日

 今日は彼女の誕生日だというのに、俺は馬鹿なことにバイトをいれてしまった。

 彼女は『仕方ないから…』とデートのできなくなった俺を許してくれたけど、やっぱり後悔ばかりが募る。



 午後8時。やっとバイトを終えた俺は、しばらく更衣室でボーッとしていた。でも、頭の中は彼女のことがぐるぐると駆け巡っている。

 帰り支度を済ませ、携帯のメール画面を開きながら店の扉を開けた。


「お疲れ様。」


 幻覚?

 彼女と似た声が聞こえた気がして声の方に目をやると、幻覚じゃなくて本当に彼女がいた。


「…由美?」

「へへっ。びっくりした?」


 頭の中に色んな言葉が駆け巡り、何を言えばいいか一瞬わからなくなった。結局口にしたのは、一番言いたかった「お誕生日おめでとう。」だった。

 彼女は少し照れたように「ありがとう。」と満面の笑みで言った。


「なんでここにいるの?」

「…会いたかったから。」


 会いたかった…?

 嬉しくて、心臓がバクバクと鳴って、顔がだんだんと熱くなった。今きっと俺の顔が赤いのは、俯いて顔を真っ赤にしてる彼女につられたせいに違い。



 今日が終わるまで、残り2時間。彼女の誕生日は、まだ終わらない。

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彼女の誕生日 浦和 りえ @enlico

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