第8話 偽りの神

「…死ね」


パァン…


「…ふふふ…撃ったねぇ…?」


「…!?なぜ弾が出ない!?」


「…僕が仕掛けを施した」


「出来るわけない!ポケットの中にあったからな!弾数もあと4発あるぞ!?」


「…なら教えよう。…愚かな貴様にな。

…僕は物理操作の能力が使える…それはさっき見せたからおまえも知ってるはずだ。だがな、操作できるのは固体だけではなく液体、気体も操作できてな。そこで僕は銃口に何を詰めたと思う?」


「…知らんな」


「答えは…2種類だ。一つは…炭素、2つは…世界で1番硬い宝石、ダイヤモンドだ」


「ダイヤモンド…!?」


え?なんでダイヤモンドにしたかって?空気などで作れる物質がこれしかなかった…から!


「あぁ。ダイヤモンドは炭素の塊とも言える。だから主に炭素、その他のものを銃口に詰め、ダイヤモンドを人工的に作り出した。ちなみにこのダイヤモンドは人工で作ったとは言え、硬さは天然物だ。さらに僕が物理操作の能力を使い、さらに強度を高めた。…これがカラクリだ。…さて、答えたんだ。僕の質問にも答えてもらおう。…おまえは誰だ?」


「…単純だ。…僕はカカオだ」


「…正直に答えろ。おまえがカカオなわけがない」


「…さすがはオレンジだな。昔と同じだ。ならそんなおまえに敬意を表して…全てを話そう。僕は…オレンジ、おまえの記憶のカカオだ」


「記憶…」


…記憶は曖昧だけどこんな話し方をしていたっていう思い出があるような気がする。


「そうだ。だが記憶のカカオは…弱いものが多い…そう思うだろう?」


「そうだな…」


…まあフレンズ体じゃないし…人だし…


そう答えた瞬間、考えた瞬間、腕と足、頭がおかしな動きを始め、次第に黒くなっていく…


「…これが僕の今の姿だ。もうおまえなんかにも頼らず生きていける。むしろ憎い人類をこの力で滅ぼせる」


「…その力をどこで手に入れた!?」


「僕は…この力を持つ直前、おまえと一緒に船から飛び降り、自殺を図った…おまえはオイナリサマというフレンズにあったはず…だが僕は違う。…守護けものにあったわけでもない。…僕は神にあった」


「神…」


壇黎斗神かな?…いやいや、今はそんなことは考えてはいけない。


「そうだ…神だ…もっとも、その神をおまえが知るかどうかは知らんがな」


「…誰だ」


「…おまえも知ってるはずだが?…女王の名をな」


「…!?まさか女王と手を組んだのか!?」


「はは…まさか!手を組んだわけではない!

僕は取り込まれたんだ…元は謎に意識があったから、完全に死のうとして女王に取り込まれようとした…だが!そうじゃない!僕は!帰ってきたんだ!人間に復讐するために!

あぁ…女王にはとても感謝してるよ…さいっっっこうに清々しいよ…見苦しい人間どもを根絶やしにできるんだから…!さぁオレンジ…君も人間が憎いだろう…?僕の友達でいてくれよ…そして…2人で更なる強みを求め、女王に取り込まれ、人間を支配しようか…!」


「バカが…僕がそんなことできるわけない!」


「…それは…僕との縁を切るということか…?弱いままでいるというのか…?」


「…カカオ…遅くはない…戻れ!」


「無駄だよ…僕はもう取り込まれちゃったんだからねぇ!?さぁ…今からでも遅くはない…神の加護を受けよう…なんなら代理で僕が取り込んであげようか…?」


「はっ!それで幸せになれるなら受けてやってもいいな!」


「できるさぁ…!僕たちが憎む人間を滅ぼせば幸せになれるんだからなぁ!そして…僕たちはこの世界の神として降臨する…この計画に狂いはない!」


「はは…ならその計画、僕が狂わせる!」


「出来るのか?おまえみたいな貧弱な人間がよォ!」


「僕はもう人間じゃない!神の力を持つ、タイリクオオカミのフレンズだ!」


「フレンズゥ…?…くっひひ…フレンズなんて…ひひひ…!あれは空想の世界だろう…?ふざけるのもいい加減にしろ…?しかも神の力…?神の力は僕が受け継いでる!僕以外に…神がいてたまるか!」


「神なんて知らないな…だけど…おまえは僕の手で葬るよ…」


『…一つ助言をしよう。…あいつは救える』


『え!?ほんと!?』


『あぁ。だが…その方法がわからなくてな…でもできそうな方法が一つあるが…あくまでも仮説だし…まだ完璧には考えられてないんだが…いいか?しっかり聞け?まずは戦って弱らせろ。そしてあいつの力の源はもしかしなくとも絶対サンドスター・ロウだ。…正直ここまでしか考えられてない。…だが俺も考えておく。とにかく…弱らせろ!話はそこからだ!』


『おっけー!』


「この僕の身をおまえが葬れるはずがない…」


「ふふ…じゃあこれならどうかな?」ガキィン!


「…僕と戦おうっていうのか…哀れだよ…」


「哀れでもなんでもいい…僕は君を助けたい!」


『フェン!やろう!』


『あぁ!ここは広い!存分に暴れまわってやれ!』


「…フェネクスくん…隠れてて?危なくなると思うから…」


「…はい…」


「さぁ!僕の神の力を見せてやる!変身!」


「変身…ぷぷっ…どこぞの仮面ライダーか?」


いやいや!あんなのに変身できるのはすごいって…まあこれも相当すごい部類だと思うけどさ…!


「そんなわけあるか…偽りの神の君に本物の神というものを見せてあげるよ…」


早くフェンリルにならないと攻撃を受けそうだからね!早くしないと!



…!よし!変身完了!


「…ウォォォォォォォン!」


「…フェンリル…親はロキとグルヴェイグ…兄弟はヨルムンガンドとヘル、子が…スコルとハティ。…そうだな?」


…なんでそんなに知ってるんですかー?僕は全く知らないよー?


『やつ、知識は豊富なんだな…』


『ほんとだね…僕は知らないけどさ!』


『じゃあこれを機に俺のことを知ってくれ!』


『うん、そうさせてもらうね?』


「グルルル…」


「…返答は無し、か…」


油断?してるね!ならさっさと攻撃しようか!


「ガァァウ!」シュバッ


「おっと…危ないな…」


「グルゥゥゥアァァ!」


「くっ!?尻尾でくるとはな…」


…?おかしいな…攻撃を防ぎはするけど全く攻撃はしてこない。…どういうことだ?


「フー…フー…」


「…警戒に戻ったな…」


…怪しいから止めておこうか!


「グルル…」ギロッ


「…!?ほう…止めるか…!」


「ガゥアアア!」


「くそ…!何も抵抗ができない…!」


…ダメだわ。これフェンリル状態だと攻略できんわ。あー、だりー…わけではないから!


「…ダメだ、フェンリルはやめだ!」


「…どういうことだ」


『フェン!あれやるよ!』


『あれか?…あぁ!任せておけ!』


「さぁ!命は永遠に可能な限りの輝きを持つが体は凍える程度に冷たいぜ!氷結界結露!」


…これが新しくフェンと一緒に考えた技!

ちなみに簡単に説明すると体の中は熱くなるけどそのかわり体の周りが凍えるほど寒い氷が体の周りに生成される!

…この効果が発動しているときに相手が攻撃してくると熱い感覚と寒い感覚が同時に伝わって混乱を巻き起こし、体の細胞は変化し、全てが変わる!

…ちなみになぜこんなことを思いついたかというと…フェンが属性で言うと?って言うことの話し合いが3人でしてたんだけどたまたまフェンが入ってきて本人が氷ったら言ってくれたからそれをなんとか有効活用できないかっていう話題に変わってこの技が編み出された!

…あ、もっと技はあるから!


「…どうしたの?来ないの?」


「なら遠慮なくいかせてもらおう!」


触手を飛ばしてきた…!よし!行けるね!多分これ決着早めにつくわ!


「…!?」


「ふふ…触ったね?」


…戦いながら救い方を探ってたんだけど…一つある!物理変換の能力を利用してサンドスター・ロウをサンドスターにする!それだけ!でもそれをやるには触れなきゃいけないから…この技を使って触れた!

さて…加工、開始!ハイッ!


「…今から君は…改心してもらおうか!」


「…なんだ…暖かい…それに…心が満たされる…」


「…いい?カカオはね?力の使い道っていうものを間違ってる」


「…!違くない!僕は正しいことをしてるんだ!」


「違う!じゃあ聞くけど…人間を滅ぼして神として降臨したとする…その後には何をするつもり?」


「…それは…!」


「何もないでしょ?神と自称していても完全な神でもない君は物とか生き物の創造なんてできない。…そうだろう?」


「…」


「その様子だと…図星かな?だったら…自分が暇で何もすることがなくなる未来より何かをして幸せになる方がいいでしょ…?」


「でも僕たちは…過去に…」


「過去とかそういうのは関係ない!水に流すんだ!それか…過去の出来事を糧にして生きるんだ!それに君より4年長生きしている僕から言わせてもらうよ?…成長すると…嫌な思い出も「あんなことがあったなぁ…」って笑って思い出せるんだよ?」


「…」


「…笑って…暮らそ?」


「…オレンジ…僕は…間違ってたのか…?」


「…それをじっくり考えていこう…時間はたっぷりあるんだ…」


「…すまない…」


…カカオの腕とか足、頭の黒い部分が無くなっていく…作戦、成功であります!


「…ふぅ…迷惑をかけたな!すまないな!」


「…元気だねぇ…」


「今なら一回だけなんでも出来そうだぜ!」


え!?サンドスターで満たされただけでぇ?まあ頼るか!改心してくれたわけだし…?


「そう!?じゃあフェネクスくんを治療してほしいな…?」


「フェネクスの治療か!任された!」


「おーい!フェネクスくーん?」


「…はい…つつつ」


あら…結構痛そうにしてる。過去のカカオ!頼むよ!


「…さっきはすまなかったな…?ほら、治してやるから…」


「…話を聞かせてほしいんです…」


「え?」


「…なぜ女王の力を得てしまったのか…聞いてみたいんです」


「そうだな…まず、僕たちは人間としているのにうんざりして、船から飛び降りて自殺を図った。…そこで本来なら僕たちはそのまま死ぬはずだった…でも僕たちは死なずに僕は…女王のところに行った…というよりかは強制的にそこにいた。…あの姿はまさに神と錯覚してた…そこで聞いた話だが…女王が発した一文。…それは…「我が救済を与えてやる」…この一言を聞いた瞬間、目の前が真っ暗になった。…そこから気づいたら明るくなった…そこで僕がいた場所は…地球の日本、渋谷のスクランブル交差点のど真ん中だった。服装は自殺した時と全く同じだが…手と足を見れば…黒かった。そこでわかった。僕はあの女王と同じ力を得た…って。救済は人間を滅ぼす程度の力を与える…そういうことだと理解した僕は…大人や老人は殺し…子供は取り込んだ」


「ん…なんで子供だけ取り込んだの?」


「そうだな…なぜだろうな?ははっ!」


おい…本人が知らなきゃダメでしょ!


「そして…人間を滅ぼし始めたその日の夜、眠りにつくと女王がいた。そこで話をしたが…気になる言葉が3つあった。…我の手足となり動く…それと、我の指示通りに動くことしかできない…最後に、もし命令を完遂できたならば、女王ではなく…王の権利をくれる…それだった。そこからは本当に記憶がないんだ…ただ、オレンジたちと対峙をするとき、気づけば右手にこのリボルバー、そして頭の中で言葉が響いていた。…フェネクスを殺し、オレンジを取り込め…と」


…この話で一つ疑問が生まれた。…女王はなぜカカオに王になる権利を与えた…?女王より王の方が普通は権力が大きい…何がしたいんだ?


「…そうして今さっきの現状が出た…ということ」


「…なるほど…全部言え、とは言ってないんですけどね…?」


「あ、すまんな!…よし!終わったぞ!」


「ありがとうございます…」


「さて、四神を助けに行こうか!」


…また登るのか…



頂上キター!しっかしさみぃ!


「…!いた!」


「意識は…ないですね…」


「そりゃそうだ…僕が致命傷になるまで痛めつけたんだからな…」


「…なんとかできないの…?」


「…僕、回復の術が使えます!」


「ほんと!?」


「…」


「だけど…四神は…」


「え?何かあるの?」


「…誰か1人を生贄にしなければ…」


生贄ェ!?おいおい…嘘でしょ?


「…マジか…」


「僕がなろう」


「「え?」」


「その四神ってやつは…回復できるんだろ?だったら…迷惑をかけた僕が生贄になる。それに…」


「「…」」


「封印した本人を倒さなきゃ…この封印は解かれないしな…」


「…いいんですね?」


「あぁ。この覚悟には偽りはない!しかも…オレンジ、お前にとって僕は…偽物だろう?また別の僕がいるんだろう?」


「…そう…だね」


「だったらなおさら生贄になったほうがいいじゃないか!同一人物なんてややこしくなるだけだぜ?…そうだ、そっちのカカオにこう伝えてくれないか?…僕の分まで幸せに生きて…ってな!」


「…わかった…」


「じゃあ始めるよ!言い残すことは…」


「無い!…いやまて!オレンジ!これを!」


「…?」


なんか…箱を渡された。…何これ?


「それは…僕とオレンジの友情の証として…死ぬ前に持ったやつだ!おまえの記憶を辿るにそっちの僕はそれを持ってない!だから…その中には同じものが2つ入ってるから…2人で一緒に身につけてくれ!」


「…うん!ありがと!」


「さぁ!僕を生贄にして四神とやらを助けろ!」


「…はい!」


フェネクス君が祈り始めるとカカオの周りに魔法陣が現れ、次第に…カカオの体が薄れていく…


「…カカオ…」


「オレンジ…僕の残りの人生…お前に託す。だから…寿命が尽きるまで生きろよ!もし殺されたりとかしたら冥界で永遠に怒ってやるから覚悟しとけ!」


…いや、もう僕殺されたんだけどねぇ…でも冥界には行ってないし…大丈夫だね!

…もう二度と殺されないようにしないと。たとえ今目を合わせているカカオが偽りのカカオであっても…意思はカカオそのものなんだから…


「じゃあな、オレンジ!今度会うときは冥界でな!会ったら色々な場所に案内してやるからなー?そして…いつまでも友達でいような…?」パチンッ


「…うん!」パチンッ


…死ぬ前に…友情の証として何かあったらこれをしようって決めてたこと…お互いに指を差し合うように鳴らすことができた…

こっちのカカオは転生のときの衝撃で忘れたみたいだけど…僕は出来てよかった!


「…もうすぐだな…さっきじゃあなって言ったのが恥ずかしいな…///…オレンジ、やっぱやめた!僕は魂だけでもオレンジの中に居続けるぞ!いいな?」


「…僕の中は騒がしいけど…大歓迎だよ?」


「そりゃよかった!じゃあ…体はお別れだな!また会う時まで、じゃあなー!」ス-…


カカオの体が消え、魂が残る。その魂はふらつきつつも、僕の中に入り込む…


「…カカオ…」


『ちーっす!さっきぶりだな!』

「うぉぁ!?」


…まあそうなるとは思ってたよ!


『これからはオレンジの援護をさせてもらうぜ!よろしくな!』


「…うん!よろしく!」


『…また騒がしくなるな…』


『でも騒がしい方がいいじゃん!面白いし!』


『あ、あなたってオレンジのお姉さんですね?』


『お、よくわかったね!』


「…む、ここは…?」


「おっ!起きた!」


体の中がうるさい時に…まあいいや!


「…そなたらは…」


「僕はオレンジ!」


「…フェネクスです」


「…わしはゲンブ…助けてくれたのか…?」


「まあ苦労したけどね?他の3人も助けに行ってるから安心して?」


「…そうか…すまなかったな…」


「…とりあえず…戻るか!さ、図書館でみんな集まる予定なので…行きましょう?」


「…わかった」


バベルの塔・北、攻略完了です!みんなはどうかな…?

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