第2話 とある兄弟


たどたどしい動きでアレクと名を授かった赤ん坊は立ち上がった。



「あぶー」



周りから称賛の声が上がる。

一歳になったばかりの赤ん坊だが、他より成長が早いらしく立ち上がるだけで歓声が上がった。



隣にいる双子の弟レイは、まだ這うばかりで立ち上がる気配はない。

同年齢で同じ誕生日。されど、顔は似ていない。二卵性双生児だ。



小さな兄は弟を上から見て、幼いながら優越感に浸っていた。



弟はそんな兄を冷めた目で見ると、ふっと明後日の方に目をやった。



兄と、家族がそれに気づくことはなかった。



◇◇◇◇



兄弟が六歳になった。アレクは既に魔物を倒し、レベルはもう8に到達していた。



だが、同じ時期に生まれたはずのレイは魔物討伐を拒み、ただ遊び呆けていた。



昼間は外で走り回り、雨の日や夜になると、本を読んだり、なにやら部屋に閉じこもるという日々を過ごしていた。



変わってはいるが、この世界でもレイは六歳らしいと言えばらしい。

むしろ、六歳にして既にレベル8に到達しているアレクは天才と呼ばれる部類だった。男の子らしい顔つきも、同姓の子供から羨望の眼差しを集める要因になったのかもしれない。



対してレイは、美少年といった顔立ちで、同年代の女の子や近所の未婚女性に大人気だった。

そのため、レイのそばにはいつも女の子達がおり、大きな村ではなかったが、美人どころが揃っていた。

それがまた、兄には癪だった。



いずれ妬みは対抗心となり、剥き出しとなった敵対心にひらりひらりとかわすレイの姿は、兄の目にはどう映っただろうか。



兄は弟を出来損ないと見下し罵った。そして、必ず弟よりも金持ちに、権力者に、なると誓った。



出来る息子が騎士になりたいと言うと、両親は多いに期待し、次第に家族の中で見えない壁ができた。

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