どうして、こんなことにー!?3

 て、どうやって会えばいいの!

 というか、名前を知らないどころか聞いてないんだけど! 探しようにも探せないよ!

 どうしたものかな。このままじゃまた昨日と同じに……。


「あの、マオ様? こんなところでどうしたんですか?」


「あっ! 会えた!」


 と、悩んでいたらそう声をかけられた。

 てか、よかった~。先輩と会えた。


「その、どうしたんですか?」


「その、聞きたいことがあるんだけど、今からいい?」


「えっと、はい。その、別にいいですよ?」


「それじゃ、名前、教えて?」


「そう、ですね。わかりました。私、『ヴァイオレット』といいます。」


 ヴァイオレット。

 普通にいい名前な気がするけど、まあ本人的には恥ずかしかったのかな。

 それとも、探せないようにしようとしたのかな。

 まあ、もうどうでもいいけど。


「それで、もう一つだけ訊きたいんだけど、いい?」


「はい、構いませんよ?」


 それにしても、先輩に敬語を使われているという状況がなんというか、複雑な感じだけども……。


「それじゃ、その、昨日どうやって入ったのか教えて?」


「それはできません。ですが、たぶんこれからは使わなくてもいいと思いますし」


「いや、入れないよ? 普通に、入れないよ?」


「そう言われてしまうと、私は外で夜を越すことになってしまいます」


 いや、どういうこと!


「ど、どうしてそんなことになるの? その、自分の家に帰れば?」


「その、ロノア様からマオ様の身の周りの世話をするようにと言われてまして」


 だから朝ごはんを作ってたのか。

 てか、ロノアはこうなることがわかってたってことでしょ! ロノアの忠義は一体どこにいったのやら。

 まあ、いいけどさ。私もそういうのはなれてないし。

 それに、今までそういう人いなかったし。

 私が魔王だってことは見られただけでみんなわかるから、なんというか壁みたいのがあったからね。

 て、それよりも今はヴァイオレットをどうするかということだ。

 今からロノアのところに行っても間に合わないだろうし……。

 仕方ない。今日は泊めてあげるか。


「わかった。とりあえず、今日だけ。それじゃ、一緒に帰ろう?」


「あ、ありがとうございます。その、帰る途中で、少しだけ寄りたいところがあるのですが、いいですか?」


「いいけど、どこに行くの?」


「食材を買いに。そうしないと、夜ごはんを作ることができませんから」


 そうして、私たちは一緒に食材を買いに行った。

 そして、家に着くとヴァイオレットはすぐに夜ごはんを作り始めたのだった。

 明日、このことは絶対にロノアと話さなくては。私は密かにそう決意した。


「マオ様、そのこれはなんですか?」


 ヴァイオレットは一冊の本のようなものを私に差し出しながらそう聞いてきた。


「えっと、それ、どこにあったの?なくしちゃってて、探してたんだよね」


「そうなんですか? それで、これはなんなんですか?」


「えっと、それは『永久の記録帳エターナルレコード』っていうものだよ」


 そういえば、私が魔王になる前が懐かしいなぁ~。

 確か転生する前に、


『あっ、その、私の記録を残しておけるものとかありますか?』


『ありますよ。その、いりますか?』


『あるならほしいんだけど?』


『それでは、これ持っててください』


『これ、なんですか?』


『永久の記録帳エターナルレコードです。これなら永久に残りますよ? 神具なんですよ』


『そんなものもらっていいの!?』


『いいですよ~。どうせ使う人いませんし。それと、使い方なんですが、記録したいことと『永久の記録帳エターナルレコード』を思い浮かべて使います。それじゃ、今度こそさようなら~』


 こんなことがあったんだよね。

 まあ、学校の近くに来てからちょっとしてなくしちゃったんだけどね。


「その、『永久の記録帳エターナルレコード』ってなんですか?」


「日記みたいなもんだよ?」


「そうなんですか。それでは、私も風呂に入って来ますね」


「あー、どうぞ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る