大道具班は出会う
少し休んでからオレ達は今後どこに行くかを地図を広げて話しあっていた。流石にこの国にはもういられないからな。
「まず今私達がいるのはこのアカリスって国」
そう言ってナッキーは地図にのっている国の中でもひときわ大きい国をさした。ちなみにこの地図は逃げる時に城からかっぱらってきたものだ。
「かなりデカいな、この国から出るのにどのくらいかかる?」
オレがナッキーに聞くと彼女は国の真ん中辺りをさして言った。
「だいたい今この辺だから、歩いて1ヶ月、早馬で半月位かなぁ」
そう言ってきたナッキーにオレはニヤリと笑いながら言った。
「ちょうどいい、ずっと創りたかったものがあったんだ。それがあれば移動も早くすむ」
「えっ?なに、なに!何創るの?」
「それはできてからのお楽しみだ!」
・ ・ ・
一時間後
流石にパーツが多過ぎて一括で創りだすことができなかったためこんなに時間がかかってしまったがそれでも一時間で創り終えたのはかなり早いだろう。
「なにこれ?」
ナッキーがオレの目の前にあるものを指さし聞いてくる。ナッキーの指の先には二人乗ってもまだ余裕のあるかなり大きめのバイクがあった。
「これはバイク。オレ達の世界の乗り物だ、これがあればかなり早くこの国を出られるぞ」
「へ~これがさとはるの世界の乗り物かぁ~かっこいいね」
「そうだろう、そうだろう。よし!じゃあこの国から出るか!」
そう言ってオレが元の世界に続く出口をあけようとするとナッキーが呼び止めてきた。
「まって、まだどこに行くか決まってないでしょう?」
「あ、確かに」
バイクを創るのに夢中ですっかり忘れていた……
・ ・ ・
再度オレ達は地図を広げて話し合っていた。
「まずアステリオス国の北側は魔物がせめて来てるから逃げるのはまずむり。西側は人間差別が激しい獣人の国があるからあまりおすすめはしないかな。南側と東側は人間が治めてるから南か東に逃げるのを私はすすめるよ」
「ふーん」
ナッキーの話を聞いてオレは考えた。そしてふと地図を見ると北側に黒い部分があることに気づいた。
「なぁ、この黒い場所はなんだ?」
オレが聞くナッキーが教えてくれた。
「そこは魔人が治めてるって言われてる場所だよ。ただそこにいった人達は一人も帰ってきてないから分からないんだよね」
「ふーん、魔王とかいんのかな」
「うわさだといるらしいよ、ただこの国の国教だと神の敵って言われてるからあんまり話題に出来なくてそんなに知らないんだよねぇ~」
「この国、国教とかあんの?面白そうだな。どんな宗教なんだ?」
「勇者教って宗教だよ、異世界からやってきた勇者を神様って考えだよ。ちなみにネビロスは勇者教の司祭様だよ」
「ふ~んあの顎門が神様あつかいされてんのか、気に入らないな」
「まぁまぁ落ち着いて、ちなみに神の天敵って呼ばれてる職業があってその職業の子供が生まれると処刑されてるんだ、かわいそうだよねぇ」
そう言われてオレはピンときた
「その神の天敵って創造者だろ?」
するとおどろいたようにナッキーが答えた。
「よくわかったね、そうだよ勇者教で神の天敵って言われてるのは創造者のこと」
「やっぱりな、流石に使えない職だからってやり過ぎだと思ったらそういうことか」
「ていうか、また脱線してる!話戻そう!」
「おぉそうだな」
しばらく悩んでからオレはどこに向かうかきめて言った。
「よし!北側に向かうぞ!」
「おぉ~、ってえぇぇぇぇぇぇぇ!」
オレの創った空間にナッキーの叫び声がこだました気がした。
・ ・ ・
[なんで!私危ないっていったよね!?」
混乱した様子でナッキーが聞いてくる。
「あぁ危ないだからだ、危険なほうにわざわざ行くと思わないだろ?」
「まぁ確かに……いやっ!やっぱり危ない!だめ!」
「だけど、おいつかれる訳にもいかないだろ!」
「そうだけど…」
その後話し合った結果ナッキーが先に折れて北側に向かうことになった。
・ ・ ・
行き先を決めたオレ達はバイクに乗って移動を始めた。後ろに乗っているナッキーが文句を言ってくる。
「う~、やっぱりやだよ~」
「文句言うなよ…だいたいお前だって了承しただろ…」
「だけどさぁ~」
そんな感じで北に2、3日進んでいるとどこからか悲鳴が聞こえてきた。
「なんだ?」
「わかんないけど進行方向から聞こえてきたよ?」
「まっ、進行方向だし行ってみるか」
「そうだね」
悲鳴の聞こえたほうにいくと馬車が盗賊に襲われていた。
が、襲ったのであろう盗賊が三割ほどすでに重傷だった。どうやらさっきの悲鳴はたおされた盗賊のものだったらしい。まぁ装備が全身皮の鎧だからそんなに強くはないんだろうが
「いらなそうだけど一応助太刀する…?」
困惑した様子でナッキーが聞いてきた。
「そうだな、宝物庫オープン」
オレがそう言うと手元にビヨンがでてくる。ビヨンをつかむとオレは急いで飛び出した。
「なんだお前、ぐぁ」
とりあえず襲ってきた盗賊をビヨンで殴った。次にかかってきた奴はドリルを腕の鎧部分にあてトリガーを引く。するとすぐに腕の鎧の皮が摩擦熱で燃えはじめた。
「ぎゃあぁぁぁ熱いぃぃぃ」
次は二人がかりできた。一人はさっきと同じ要領で鎧を燃やしてもう一人は宝物庫から剣を射出してたおした。そんな感じで敵をたおしていくと周りの盗賊はみんなたおれていた。何があったのか聞こうとすると冷たい女の声がオレにかけられた。
「お前はだれだ」
声が聞こえたほうを見ると長身で金髪のスラッとした女がいた。
「人の名前を聞くときはそちらから名乗るべきだろ」
オレはそんなテンプレなことを言った。
「それは失礼した、私の名はリリィ。さぁ私は名乗ったぞ、お前達の名前を教えろ」
お前達ってことはナッキーのことのバレてるのか、はぁ、しょうがない。
「オレは佐藤 春木、そこに隠れてんのはサタナキアだ。ナッキー、出てきて大丈夫だぞ」
言うとナッキーが出てきた。
「で、なんでお前は私達を助けたんだ?お前達にはなんのメリットもないだろう?」
リリィが凍てつくような冷たい声で聞いてきた。
「なんで、か」
オレはそうつぶやいた。正直なんでこの人たちを助けたのか解らない。そう考えてからオレは思ったことをそのままリリィにむかって言った。
「しいて言うならなんとなく、だな!」
「はぁ?」
リリィが気の抜けたような返事をしてきた。
「ま、まぁ嘘ついてる訳ではなさそうだからもう素の私でいいか…」
「「素?」」
オレとナッキーが気になって聞くとリリィが
「いや、私はキチンとしなくちゃいけない立場なんだ。だからさっきもあんな冷たい態度になっちゃたんだ」
「なるほどな、ところでお前たちはどこに向かってるんだ?オレたちが言うのもなんだが北のほうは魔物が多くいてとても進めないだろ?」
オレがそう聞くと、リリィが答えてくれた。
「私達は魔物がいる場所をこえたさきからきたんだ」
「魔物がいる場所のさき!?ってあの魔人が治めてるっていう!?」
ナッキーが驚いていった。オレだって驚いた。魔物がいるさきからきたなんてかなりの実力がないとできないことだからだ。
「へぇ魔人の存在を知ってるんだ。私達がその魔人だよ」
「「ふ~ん、ってはあ!?」」
リリィがあまりにも何でもないように言ってきたので一瞬普通に飲み込んでしまいそうになってしまった。
「ま、まてそれオレたちに言っていいのか?」
あせってオレが聞くと
「別に、あんた達は信用できると思ったから教えただけだよ」
「そ、そうか。ところでお前達も北にいくんだろ?一緒にいかないか?オレたちも色々あって北に向かってるんだ」
「いいよ、あんた達と私ももう少し話したいし、よろしくね。えっとさとうにサタナキア」
そんなリリィの発言に笑ってしまった。
「一緒に旅するんだ、さとはるでいい。オレもリリィって呼ぶからさ」
オレがそう言うとリリィが嬉しそうにしながら言った。
「そ、そうか」
「私のこともナッキーってよんでね!」
ナッキーの言葉を聞くとリリィがさらに嬉しそうにしながら言った。
「これから、よろしく!さとはる、ナッキー!」
「あぁ」
「こっちこそよろしくね!リリィ!」
こうしてリリィとオレ達は出会ったのだった。
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