編集 学生だった頃の私のうつ体験記
霧
第1話 心療内科のイケメン先生
今日、私は心療内科に来た。
小さいころからずっと、断続的に不安に襲われて、なんだかわからないうちに治って、それがずっと続いている。人前で話をするとあがってしまい上手く話せなくて、呼吸が苦しくなって倒れることもあった。
うつ症状もひどい。時々何もやる気が起こらなくなって、立つことも億劫になってしまう。でもしばらく寝て、休めば回復するので今までは病院に行かずに過ごしてきた。
でも保健の先生とか学校の先生が一度精神科か心療内科に行ってみたら、と勧めるのでちょうど十七歳の誕生日の今日、来てみることにした。名前の響きが柔らかいので精神科ではなく心療内科を選んだ。
「ではこちらの紙にお悩みを書いて、お待ちください」
アンケートみたいな紙を持ってきた看護師さんは、優しそうで親切な感じだった。
待合室で待っている周りの人を見たけど、普通の人とそんなに変わらない感じがする。急に叫んだりとかぶつぶつ呟いたりとか、そんなこともなく大人しく待っている。
少し女性の割合が多い他は、内科とか歯医者とかと変わらない。老若男女みんなが来ていた。
「高田響さん、診察室へどうぞ」
やがて私の名前が呼ばれて、診察室に通された。
診察室は白くて花も生けてある清潔感のある部屋だった。
椅子に座ったお医者さんは若くて結構イケメンだった。迂闊にも一瞬見惚れてしまうほどだ。
「症状はいつごろからですか?」
「夜眠れなくなったりすることはありますか?」
「悩みが常に頭から離れないという感じですか?」
お医者さんは一つ一つ丁寧に話しながら、側のパソコンに何かを打ちこんでいく。
悩みを聞いてもらえるのが嬉しくて、私は色々なことを喋った。
「じゃあお薬を出しておきます。うつのお薬と、よく眠れて、気分が明るくなる薬です。本日はお疲れさまでした」
え? これだけ?
話も途中なのにこれで打ち切られたような感じで、診察室から退室した。
「本日は四千円です」
初診料込みでこの値段、歯医者に行った時とそんなに変わらない。
高くもなく安くもない。
心療内科っていうからもっと身構えていたけど、正直拍子抜けした。
その晩、誕生日のお祝いをしてもらった。家族と、友達数人と。
友達は少ないけどその分とっても親しい。本の趣味も、服の趣味も合う。中学卒業で別の高校に行った子も今日は誕生パーティーに来てもらった。
楽しかった。
パーティーの後に貰った薬を飲んだ。カプセルに入った薬と、白い錠剤だ。これで病気が良くなると良いな。
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